決算整理後残高試算表までは作れるのに、貸借対照表と損益計算書にすると科目名や合計が合わない。そんなときの原因は、たいてい表示科目の言い換えか、繰越利益剰余金の金額です。財務諸表は、整理後の残高を「表示の名前」に直して並べ、繰越利益剰余金に当期純利益を足せば完成します。
この記事では、言い換えの一覧を理由つきで整理し、決算整理7つの設例を試算表から財務諸表まで1問通しで解きます。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記3級 #43・10:06)
10:06【簿記3級 #43】財務諸表の作成|表示科目の名前が変わる論点損益計算書と貸借対照表の様式 / 仕入→売上原価、売上→売上高 と表示が変わる▶ YouTubeで見る財務諸表の作り方は3ステップ|精算表との違いも
簿記3級の第3問で作る財務諸表は、損益計算書と貸借対照表の2つです。損益計算書は1会計期間の収益・費用と当期純利益を、貸借対照表は決算日の資産・負債・純資産を示します。3級では、左右に分けて並べる勘定式の様式が一般的です。
| ステップ | やること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 1 | 決算整理前の残高に決算整理仕訳を反映し、整理後の残高を出す | 新しい科目の追加、残高がゼロになる科目 |
| 2 | 収益・費用は損益計算書、資産・負債・純資産は貸借対照表へ、表示の名前で並べる | 表示科目の言い換え、控除形式 |
| 3 | 当期純利益を計算し、繰越利益剰余金に加える | 繰越利益剰余金の足し忘れ |
ステップ1の整理後の残高を一覧にしたものが、決算整理後残高試算表です。第3問で決算整理後残高試算表の作成を問われたら、ステップ1で完成です。表示の名前には直さず、勘定科目のまま書きます。
ポイント
精算表との違いは当期純利益の置き場所です。精算表の貸借対照表欄では当期純利益を独立した行に書きますが、財務諸表の貸借対照表では繰越利益剰余金に含めて表示します。
同じ決算整理を精算表の形で問われたときの解き方は、精算表の書き方で完成表つきで解説しています。
表示科目の言い換え一覧|なぜ名前が変わるのか
帳簿で使う勘定科目の名前と、財務諸表に載せる名前(表示科目)が違うものがあります。丸暗記より、理由とセットで覚えるほうが本番で思い出せます。
| 勘定科目 | 財務諸表の表示 | 理由 |
|---|---|---|
| 売上 | 売上高(損益計算書) | 1年間の売上の金額(高)として示すため |
| 仕入 | 売上原価(損益計算書) | 決算整理後の仕入の残高は、売れた商品の原価になっているため |
| 繰越商品 | 商品(貸借対照表) | 決算整理後の残高は、期末に残っている商品そのものだから |
| 前払保険料・前払家賃など | 前払費用 | 経過勘定は、個別の名前ではなく種類でまとめて示すため |
| 未払利息・未払家賃など | 未払費用 | 同上 |
| 前受地代・前受家賃など | 前受収益 | 同上 |
| 未収利息・未収手数料など | 未収収益 | 同上 |
| 貸倒引当金 | 売掛金などから差し引いて表示 | 回収できると見込まれる金額を示すため |
| 備品減価償却累計額 | 備品から差し引き「減価償却累計額」と表示 | 取得原価と、費用にした累計額の両方を示すため |
| 現金過不足・仮払法人税等 | 表示しない | 決算整理で残高がゼロになるため |
法人税等は、損益計算書では「法人税、住民税及び事業税」と表示する様式が一般的です。答案用紙には表示科目の多くが印刷されていますが、一部の科目名を空欄にして書かせる形もあるので、言い換えは名前と場所の両方で使えるようにしておきます。
2026年度・2027年度で変わる表示
2026年度(2027年3月まで)の試験では、受取手形・支払手形が貸借対照表に並び、受取手形からも貸倒引当金を差し引くことがあります。2027年度からは3級の出題区分表で手形が削除されます。
また、2027年度から3級に移る売上原価対立法で記帳している問題では、勘定科目の段階で「商品」「売上原価」になっているので、この2つの言い換えは不要です(売上は売上高と表示します)。改定の全体像は2027年度の出題区分表改定のまとめで確認できます。
1問通しで解く|決算整理前の試算表から貸借対照表まで
ここからは1問を最初から最後まで解きます。会計期間は4月1日〜3月31日で、数字はすべて解説用に作成したものです。決算整理前残高試算表の金額は、手順2の表の「整理前の残高」欄のとおりです。
設例(決算整理事項)
(1) 期末商品棚卸高は150,000円である。
(2) 売掛金の期末残高に対して3%の貸倒引当金を差額補充法で設定する。
(3) 備品について、定額法(耐用年数8年・残存価額ゼロ)で減価償却を行う。
(4) 保険料60,000円は、当期の7月1日に契約して1年分を支払ったものである。
(5) 受取地代72,000円は、当期の12月1日に1年分を受け取ったものである。
(6) 借入金480,000円は当期の11月1日に借り入れたもので、年利率2.5%の利息は1年後の返済時に支払う。利息を月割で計上する。
(7) 法人税等が60,000円と計算された。仮払法人税等25,000円は中間納付額である。
手順1:決算整理仕訳を7つ書く
(1) 売上原価:期首130,000・期末150,000(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仕入 | 130,000 | 繰越商品 | 130,000 |
| 繰越商品 | 150,000 | 仕入 | 150,000 |
(2) 貸倒引当金:400,000×3%−5,000=7,000(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 7,000 | 貸倒引当金 | 7,000 |
(3) 減価償却:640,000÷8年=80,000(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 80,000 | 備品減価償却累計額 | 80,000 |
(4) 保険料の前払い:翌期分3か月=60,000×3/12(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 前払保険料 | 15,000 | 保険料 | 15,000 |
(5) 地代の前受け:翌期分8か月=72,000×8/12(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 受取地代 | 48,000 | 前受地代 | 48,000 |
(6) 利息の未払い:480,000×2.5%×5/12=5,000(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 5,000 | 未払利息 | 5,000 |
(7) 法人税等:60,000−25,000=35,000が未払い(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 法人税等 | 60,000 | 仮払法人税等 | 25,000 |
| 未払法人税等 | 35,000 | ||
手順2:整理前の残高+決算整理=決算整理後残高試算表
整理前の残高に決算整理仕訳を足し引きして、整理後の残高を出します。「決算整理」欄の+は残高が増えること、−は減ることを表します(単位:円)。
| 勘定科目 | 整理前の残高 | 決算整理 | 整理後の残高 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 借 68,000 | 借 68,000 | |
| 普通預金 | 借 914,000 | 借 914,000 | |
| 売掛金 | 借 400,000 | 借 400,000 | |
| 繰越商品 | 借 130,000 | +150,000 −130,000 | 借 150,000 |
| 仮払法人税等 | 借 25,000 | −25,000 | 0(載せない) |
| 備品 | 借 640,000 | 借 640,000 | |
| 買掛金 | 貸 297,000 | 貸 297,000 | |
| 借入金 | 貸 480,000 | 貸 480,000 | |
| 貸倒引当金 | 貸 5,000 | +7,000 | 貸 12,000 |
| 備品減価償却累計額 | 貸 240,000 | +80,000 | 貸 320,000 |
| 資本金 | 貸 700,000 | 貸 700,000 | |
| 繰越利益剰余金 | 貸 150,000 | 貸 150,000 | |
| 売上 | 貸 2,900,000 | 貸 2,900,000 | |
| 受取地代 | 貸 72,000 | −48,000 | 貸 24,000 |
| 仕入 | 借 1,827,000 | +130,000 −150,000 | 借 1,807,000 |
| 給料 | 借 540,000 | 借 540,000 | |
| 支払家賃 | 借 240,000 | 借 240,000 | |
| 保険料 | 借 60,000 | −15,000 | 借 45,000 |
| 貸倒引当金繰入 | +7,000 | 借 7,000 | |
| 減価償却費 | +80,000 | 借 80,000 | |
| 前払保険料 | +15,000 | 借 15,000 | |
| 前受地代 | +48,000 | 貸 48,000 | |
| 支払利息 | +5,000 | 借 5,000 | |
| 未払利息 | +5,000 | 貸 5,000 | |
| 法人税等 | +60,000 | 借 60,000 | |
| 未払法人税等 | +35,000 | 貸 35,000 | |
| 合計 | 借・貸とも4,844,000 | 借・貸とも4,971,000 |
整理後の合計は、借方・貸方とも4,971,000円で一致します。仮払法人税等は残高がゼロになるので載りません。当期純利益の行がないことも確認しておきます。
手順3:損益計算書は仕入を売上原価と表示する
収益・費用を表示の名前に直して並べます。仕入1,807,000円は売上原価、売上2,900,000円は売上高です(単位:円)。
| 費用 | 金額 | 収益 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 1,807,000 | 売上高 | 2,900,000 |
| 給料 | 540,000 | 受取地代 | 24,000 |
| 支払家賃 | 240,000 | ||
| 保険料 | 45,000 | ||
| 貸倒引当金繰入 | 7,000 | ||
| 減価償却費 | 80,000 | ||
| 支払利息 | 5,000 | ||
| 法人税、住民税及び事業税 | 60,000 | ||
| 当期純利益 | 140,000 | ||
| 合計 | 2,924,000 | 合計 | 2,924,000 |
収益の合計は2,924,000円、法人税等を含む費用の合計は2,784,000円なので、当期純利益は2,924,000−2,784,000=140,000円です。
手順4:貸借対照表は控除形式で並べる
資産・負債・純資産を表示の名前で並べます。貸倒引当金と減価償却累計額は、それぞれ売掛金と備品から差し引いて表示します(単位:円)。
| 資産 | 金額 | 負債及び純資産 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 68,000 | 買掛金 | 297,000 |
| 普通預金 | 914,000 | 借入金 | 480,000 |
| 売掛金 400,000 貸倒引当金 △12,000 | 388,000 | 未払費用 | 5,000 |
| 商品 | 150,000 | 未払法人税等 | 35,000 |
| 前払費用 | 15,000 | 前受収益 | 48,000 |
| 備品 640,000 減価償却累計額 △320,000 | 320,000 | 資本金 | 700,000 |
| 繰越利益剰余金 | 290,000 | ||
| 合計 | 1,855,000 | 合計 | 1,855,000 |
資産の合計と、負債及び純資産の合計は、どちらも1,855,000円で一致します。繰越利益剰余金が試算表の150,000円ではなく290,000円になっている理由を、次で確認します。
繰越利益剰余金はいくら?当期純利益を足す理由
貸借対照表の繰越利益剰余金 = 整理後試算表の繰越利益剰余金 + 当期純利益
設例では150,000+140,000=290,000円です。整理後の試算表の150,000円には、当期の利益がまだ入っていないからです。
決算では、収益と費用を損益勘定に集めて当期純利益を計算し、その金額を損益勘定から繰越利益剰余金勘定へ振り替えます。この振替は整理後の試算表を作ったあとに行うため、試算表の金額には含まれません。
当期純利益の振替(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 損益 | 140,000 | 繰越利益剰余金 | 140,000 |
当期純損失のときは、損益勘定から繰越利益剰余金の借方へ振り替えるので、試算表の金額から差し引きます。
貸借対照表の貸借が合わず、差額がちょうど当期純利益と同じ金額なら、繰越利益剰余金への加算を忘れています。検算で最初に確認したい点です。損益勘定と繰越利益剰余金勘定の記入(帳簿の締め切り)は、簿記3級の大問別の解き方の第2問の節で扱っています。
財務諸表でよくある間違いと、その原因
- 売上原価の欄に整理前の仕入の金額を書く:損益計算書を作るときに、整理前の試算表を見てしまうのが原因です。設例なら1,827,000円ではなく、整理後の1,807,000円です。
- 商品に期首の繰越商品の金額を書く:同じ理由で、整理前の130,000円を書いてしまいます。貸借対照表の商品は期末の棚卸高150,000円です。
- 貸倒引当金を負債の側に書く:「貸方残高の科目は負債」という覚え方が原因です。貸倒引当金は資産のマイナスなので、売掛金の下で差し引きます。
- 受取地代を72,000円のまま書く:前受分を翌期へ送った決算整理を反映し忘れています。当期の収益は24,000円で、48,000円は前受収益(負債)です。
- 繰越利益剰余金に当期純利益を足し忘れる:整理後の試算表の金額をそのまま写すためです。貸借対照表の差額が当期純利益と同額になるので、そこで気づけます。
個々の決算整理は、経過勘定の覚え方、貸倒引当金の仕訳、減価償却の仕訳(直接法と間接法)で詳しく解説しています。法人税等の仕訳は税金の仕訳にまとめています。
練習問題|表示科目・繰越利益剰余金・控除の表示
練習問題1
次の勘定科目を、財務諸表の表示科目に直しなさい。(a) 未収手数料 (b) 前受家賃 (c) 前払地代 (d) 未払家賃 (e) 仕入(決算整理後)
練習問題1の解答と解説を見る
(a) 未収収益 (b) 前受収益 (c) 前払費用 (d) 未払費用 (e) 売上原価です。経過勘定は「前払・未払・前受・未収」と「費用・収益」の組み合わせで4つの表示科目にまとめます。(e)の仕入は、決算整理で売上原価の金額になっているので、売上原価と表示します。
練習問題2
決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金は貸方210,000円だった。損益計算書の収益合計は1,950,000円、法人税等を含む費用合計は1,860,000円である。貸借対照表に表示する繰越利益剰余金の金額を答えなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
300,000円です。当期純利益は1,950,000−1,860,000=90,000円で、整理後の試算表の210,000円に足して300,000円になります。試算表の210,000円をそのまま書くと、貸借対照表の貸借が90,000円合わなくなります。
練習問題3
決算整理後の売掛金は500,000円、電子記録債権は300,000円で、いずれも期末残高の2%の貸倒引当金(合計16,000円)を設定している。貸借対照表では、それぞれの債権から貸倒引当金を差し引いて表示する。売掛金と電子記録債権の差し引き後の金額を答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
| 表示 | 債権の金額 | 貸倒引当金 | 差し引き後 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 500,000 | △10,000 | 490,000 |
| 電子記録債権 | 300,000 | △6,000 | 294,000 |
合計16,000円を、それぞれの債権の2%に分けます。500,000×2%=10,000円、300,000×2%=6,000円で、合計16,000円と一致します。
まとめ
- 財務諸表は「整理後の残高を出す→表示の名前で並べる→繰越利益剰余金に当期純利益を足す」の3ステップ
- 言い換えの基本は、売上→売上高、仕入→売上原価、繰越商品→商品、経過勘定→前払費用・未払費用・前受収益・未収収益
- 貸倒引当金と減価償却累計額は、資産から差し引く控除形式で表示する
- 貸借対照表の繰越利益剰余金=整理後試算表の繰越利益剰余金+当期純利益
- 貸借対照表の差額が当期純利益と同額なら、繰越利益剰余金への加算漏れを疑う
講義#43では、損益計算書と貸借対照表の様式と、表示科目の名前が変わる論点を扱っています。文字で読んだあとに動画で流れを見ると定着します。次の一歩として、第3問に使う時間の目安と部分点の取り方を簿記3級の大問別の解き方で確認しておきましょう。決算整理の全体像は簿記3級の決算整理仕訳の8つの型、講義の順番は簿記3級の全50本の講義一覧にまとめています。
動画で学ぶ|財務諸表の作成の講義
この記事の講義(簿記3級 #43・10:06)
10:06【簿記3級 #43】財務諸表の作成|表示科目の名前が変わる論点損益計算書と貸借対照表の様式 / 仕入→売上原価、売上→売上高 と表示が変わる / 繰越商品→商品、貸倒引当金・減価償却累計額は控除形式 / 当期純利益の位置▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
決算整理後残高試算表と財務諸表の違いは何ですか?
決算整理後残高試算表は、勘定科目のまま整理後の残高を並べた一覧です。財務諸表は、それを表示の名前に直して損益計算書と貸借対照表に分け、当期純利益を示したものです。貸借対照表では当期純利益が繰越利益剰余金に含まれる点も違います。
繰越利益剰余金の金額はどう計算しますか?
決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金に、当期純利益を足します。当期純損失のときは差し引きます。整理後の試算表の金額は、当期の損益を振り替える前の金額だからです。
貸倒引当金は負債ですか?
負債ではありません。売掛金などの債権から差し引いて、回収できると見込まれる金額を示すための科目です。貸借対照表では、売掛金の下に△をつけて差し引く形で表示します。
前払保険料は貸借対照表で何と表示しますか?
前払費用と表示します。前払家賃や前払地代なども同じく前払費用にまとめます。未払利息は未払費用、前受地代は前受収益、未収利息は未収収益です。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
税金に関する記述は簿記の試験学習のための一般的な説明です。実際の税務上の取扱いは個別の事情により異なるため、税務署または税理士にご確認ください。
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