簿記3級の第3問(決算整理後残高試算表・精算表・財務諸表)で点が伸びないとき、原因はたいてい決算整理仕訳の「型」が整理できていないことにあります。決算で出てくる論点は無限にあるように見えて、3級の範囲では8つに収まります。この記事では、その8つの型と仕訳の形、解く順番、そして点を落としやすい理由までをまとめます。型で覚えると、初めて見る問題文でも「これはどの型か」で判断できるようになります。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記3級 #39・7:50)
7:50【簿記3級 #39】決算整理①|貯蔵品・現金過不足・当座借越未使用の切手・収入印紙は 貯蔵品(資産)へ振替 / 現金過不足の残高は 雑損・雑益 で締める▶ YouTubeで見る決算整理仕訳とは?なぜ期末に必要なのか
決算整理仕訳とは、期中の記録を「その期の正しい成績と財産の状態」に直すための仕訳です。
期中の仕訳は、現金の出入りや請求のタイミングで記録します。ところが、その記録のままでは当期の利益が正しく出ません。たとえば12月に1年分の保険料を払った場合、支払った金額の全部が当期の費用になるわけではありません。期末時点でまだ提供を受けていない分は、翌期の費用だからです。こうしたズレを期末にまとめて直す作業が決算整理です。
ポイント
決算整理は「期中の記録を当期のものだけに切り分ける作業」です。切り分ける対象は、収益・費用(損益計算書)と、資産・負債の評価(貸借対照表)の2方向にあります。
3級の決算整理は8つの型に収まる
2026年度の試験が準拠する出題区分表(2022年度適用)の3級の範囲では、決算整理として問われる論点は次の8つです。問題文の言い回しは毎回変わりますが、行き着く型はこの8つのどれかです。
| 型 | 問題文の合図 | 直す方向 |
|---|---|---|
| 1 売上原価の算定 | 期首商品棚卸高・期末商品棚卸高 | 費用(仕入)を当期分に |
| 2 貸倒引当金の設定 | 売掛金・受取手形の期末残高に〇% | 資産の評価を下げる |
| 3 減価償却費の計上 | 建物・備品、耐用年数、残存価額 | 資産を使った分だけ費用に |
| 4 現金過不足の整理 | 原因不明のまま決算をむかえた | 雑損・雑益へ振り替える |
| 5 当座借越の振替 | 当座預金が貸方残高 | 負債に振り替える |
| 6 貯蔵品への振替 | 未使用の収入印紙・切手 | 費用から資産に戻す |
| 7 経過勘定(前払・前受・未払・未収) | 〇か月分を前払い、〇か月分が未払い | 収益・費用を当期分に |
| 8 消費税の整理(税抜方式) | 仮払消費税・仮受消費税 | 差額を未払消費税に |
以下、それぞれの仕訳の形を自作の数値例で確認します。金額はすべて検算済みで、借方合計と貸方合計は一致しています。
型1 売上原価の算定(しーくりくりしー)
期首商品棚卸高160,000円、当期仕入高940,000円、期末商品棚卸高210,000円のとき、売上原価は160,000+940,000−210,000=890,000円です。仕入勘定で売上原価を出す方法では、次の2本を切ります。
型1:売上原価の算定(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仕入 | 160,000 | 繰越商品 | 160,000 |
| 繰越商品 | 210,000 | 仕入 | 210,000 |
1本目で期首の在庫を仕入に足し、2本目で期末の在庫を仕入から引きます。結果として仕入勘定の残高が売上原価890,000円になり、繰越商品が期末の210,000円になります。
型2 貸倒引当金の設定(差額補充法)
期末の売掛金600,000円と受取手形200,000円の合計800,000円に対して2%を見積もる場合、必要額は16,000円です。貸倒引当金の残高がすでに6,000円あるなら、差額の10,000円だけを追加します。
型2:貸倒引当金の設定(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 10,000 | 貸倒引当金 | 10,000 |
見積額の16,000円をそのまま繰り入れるのが、もっとも多い間違いです。差額補充法では「必要額−現在の残高」だけを計上します。
型3 減価償却費の計上(定額法・間接法)
取得原価1,200,000円、残存価額ゼロ、耐用年数8年の備品なら、1年分は1,200,000÷8=150,000円です。期中に取得した場合は月割りにします。たとえば10月1日に取得して決算が3月31日なら、6か月分の75,000円です。
型3:減価償却費の計上(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 150,000 | 備品減価償却累計額 | 150,000 |
直接法と間接法の違い、月割りの数え方は、減価償却の仕訳を直接法と間接法で整理した記事でくわしく扱っています。
型4〜6 現金過不足・当座借越・貯蔵品
この3つは「期末に残っていたら振り替える」型です。仕訳そのものは短く、覚える負担は軽い一方で、決算整理の存在を忘れて手つかずのまま答案を作ってしまう人が多い論点でもあります。
| 型 | 状況 | 仕訳の形 |
|---|---|---|
| 4 現金過不足 | 借方に3,000円残ったまま原因不明 | (借)雑損 3,000/(貸)現金過不足 3,000 |
| 5 当座借越 | 当座預金が貸方に80,000円 | (借)当座預金 80,000/(貸)当座借越 80,000 |
| 6 貯蔵品 | 未使用の収入印紙が4,000円 | (借)貯蔵品 4,000/(貸)租税公課 4,000 |
現金過不足が貸方に残っていれば雑益、切手の未使用分なら通信費から振り替えます。当座借越は「銀行に借りている状態」なので、資産のマイナスではなく負債として表示するための振替です。
型7 経過勘定は4つの組み合わせで考える
経過勘定は、収益か費用か、前払い・前受けか未払い・未収かの組み合わせで4種類です。「すでにお金が動いたか」と「当期のものか」を分けて考えると迷いません。
| 種類 | 状況 | 決算整理仕訳 | B/S表示 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 払ったが当期分でない | (借)前払保険料/(貸)保険料 | 資産 |
| 前受収益 | 受け取ったが当期分でない | (借)受取家賃/(貸)前受家賃 | 負債 |
| 未払費用 | 当期分だがまだ払っていない | (借)支払利息/(貸)未払利息 | 負債 |
| 未収収益 | 当期分だがまだ受け取っていない | (借)未収利息/(貸)受取利息 | 資産 |
たとえば12月1日に向こう1年分の保険料120,000円を支払い、決算が3月31日の場合。当期に対応するのは12月から3月までの4か月分40,000円で、残る8か月分80,000円は翌期の費用です。
型7:前払費用への振替(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 前払保険料 | 80,000 | 保険料 | 80,000 |
型8 消費税の整理(税抜方式)
期中に仮払消費税64,000円、仮受消費税100,000円が計上されているなら、差額の36,000円が納める税額です。
型8:消費税の整理(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仮受消費税 | 100,000 | 仮払消費税 | 64,000 |
| 未払消費税 | 36,000 | ||
第3問を解く順番:8つの型を機械的に処理する
本番では、問題文を上から順に処理するより、影響の大きい順に片づけるほうが安全です。おすすめの順番は次のとおりです。
- 未処理事項(期中の仕訳漏れ・誤り)を先に直す。ここを飛ばすと後続の金額がすべてずれます
- 現金過不足・当座借越・貯蔵品の振替(型4〜6)。仕訳が短く、確実に取れます
- 売上原価(型1)。繰越商品と仕入の金額が確定します
- 貸倒引当金(型2)。未処理事項で売掛金が動いた後の残高を使います
- 減価償却費(型3)と消費税(型8)
- 経過勘定(型7)。月割りの計算が必要なので最後に落ち着いて
貸倒引当金を売掛金の未処理事項より先に計算してしまうと、必要額そのものが変わってしまいます。「残高が動く論点を先に、残高を使う論点を後に」が原則です。
よくある間違いと、なぜ間違えるのか
| 間違い | なぜ起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 貸倒引当金を見積額の全額で繰り入れる | 「2%を設定」という文言だけを見て、既存残高の確認を飛ばす | 設定額を書いたら、必ず試算表の貸倒引当金の行を指で押さえて差を取る |
| 減価償却の月割りを忘れる | 期中取得の記述が問題文の別の場所にある | 固定資産が出たら取得日を丸で囲み、月数を余白に書いてから計算する |
| 経過勘定の当期分と翌期分が逆になる | 「支払った月」から数えてしまう | 決算日を起点に「まだ提供を受けていない期間」を数える |
| 売上原価の2本目(期末分)を書き忘れる | 1本目で手が止まり、次の資料に移ってしまう | 繰越商品は必ず2回出てくる、と決めて処理する |
| 当座借越を資産のマイナスのままにする | 貸方残高=マイナスの預金、と読んでしまう | 貸方残高は「銀行からの借入」=負債と読み替える |
まとめ
- 3級の決算整理は8つの型に収まる。問題文の言い回しではなく型で判断する
- 解く順番は「未処理事項 → 振替系 → 売上原価 → 貸倒引当金 → 減価償却・消費税 → 経過勘定」
- 差額補充法・月割り・当期分の切り分けが、落としやすい3大ポイント
- 型ごとに1問ずつ手を動かすと、第3問は安定して得点源になる
次の一歩として、簿記3級の仕訳問題20問で手を動かし、学習全体の進め方は簿記3級の独学 勉強時間の目安と3か月スケジュールで確認してください。動画で通して学びたい方は日商簿記3級 無料動画講義【全50本】からどうぞ。
動画で学ぶ|決算整理の講義
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7:50【簿記3級 #39】決算整理①|貯蔵品・現金過不足・当座借越未使用の切手・収入印紙は 貯蔵品(資産)へ振替 / 現金過不足の残高は 雑損・雑益 で締める / 当座預金のマイナスは 当座借越(負債)へ / 翌期首の再振替仕訳▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
決算整理仕訳は全部で何種類覚えればいいですか?
3級の範囲では8つの型で足ります。売上原価、貸倒引当金、減価償却、現金過不足、当座借越、貯蔵品、経過勘定(4種類)、消費税の整理です。経過勘定を4つに分けて数えても11種類で、出題はこの範囲に収まります。
「しーくりくりしー」は暗記しないと解けませんか?
暗記でも解けますが、意味で覚えたほうが応用が利きます。1本目は期首の在庫を当期の費用に加え、2本目は売れ残りを費用から資産に戻す、という意味です。意味がわかっていれば、期末商品に評価損が出る2級の論点にもつながります。
精算表と財務諸表、どちらの形式で出ますか?
どちらの形式でも出題されます。決算整理仕訳そのものは共通なので、型を身につけたうえで、答案の書き方を両方の形式で1回ずつ練習しておけば対応できます。出題形式は日本商工会議所の公式サイトで確認できます。
ネット試験でも決算整理の出方は同じですか?
問われる論点は同じです。ネット試験は画面上で金額を入力する形式のため、下書き用紙に自分で試算表の形を作る練習をしておくと、転記ミスを減らせます。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月20日(出題範囲・試験形式は 日本商工会議所の公式サイト で最新情報をご確認ください)
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