「簿記を始めたいけれど、いきなり3級で大丈夫だろうか」。そう考えて検索すると、簿記初級という級が出てきます。結論を先に書きます。簿記初級は日商簿記の入口にある級で、試験時間は40分、受験料は2,200円(税込)、ネット試験のみで随時受けられます。日本商工会議所が公表した2025年4月から2026年3月の合格率は54.8%でした。ただし「初級を受けたほうがよい人」と「飛ばして3級から始めてよい人」ははっきり分かれます。公表データと公式の出題範囲をもとに、その線引きを判断表で示します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記初級 #00・6:29)
5:58【簿記初級 #00】簿記初級は受けるべき?3級との違い・試験内容・合格率結論:初級は3級の受験条件ではない。でも中身は3級の土台 / 試験のかたち:ネット試験・40分・選択式・70点以上で合格(受験料2,200円税込)▶ YouTubeで見る簿記初級とは:ネット試験だけで受けられる入門の級
簿記初級は、日商簿記の級のなかで3級よりも前に置かれている級です。統一試験(年3回のペーパー試験)では実施されず、ネット試験のみで行われます。ネット試験は各会場が独自に日程を決める随時試験なので、思い立った週に受けることもできます。
| 項目 | 簿記初級 |
|---|---|
| 実施方式 | ネット試験のみ(随時) |
| 試験時間 | 40分 |
| 出題形式 | 選択式 |
| 受験料 | 2,200円(税込) |
| 合格率 | 54.8%(2025年4月〜2026年3月) |
出題範囲は日本商工会議所が「簿記初級 出題範囲・内容」として公表しており、大きく3つの柱でできています。
- 簿記の基本原理:資産・負債・純資産・収益・費用という基礎概念、取引の8要素、勘定記入の法則、仕訳、主要簿と補助簿、証ひょうと伝票
- 期中取引の処理:現金預金、売掛金と買掛金、貸付金・借入金などの債権債務、商品(三分法)、固定資産、純資産、収益と費用、税金
- 月次の集計:試算表(合計・残高・合計残高)による月次の集計と、その数値の読み取り
注目したいのは3つ目です。簿記初級は、決算そのものではなく「毎月の集計と、その数字を読むこと」に重心があります。経理担当者になるための級というより、日々の記録と月次の数字を理解するための級だと考えると、位置づけがはっきりします。
ポイント
簿記初級は「決算」を扱いません。決算整理・精算表・財務諸表の作成は3級からです。この違いが、初級を受けるべきかどうかの判断に直結します。
難易度と合格率:54.8%という数字の読み方
日本商工会議所が公表している受験者データを並べます。すべてネット試験の数字です。
| 試験 | 期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 簿記初級 | 2025年4月〜2026年3月 | 3,978名 | 2,179名 | 54.8% |
| 簿記初級 | 2026年4月〜6月 | 741名 | 454名 | 61.3% |
| 簿記3級 | 2025年4月〜2026年3月 | 276,477名 | 112,797名 | 40.8% |
| 原価計算初級 | 2025年4月〜2026年3月 | 1,424名 | 1,205名 | 84.6% |
3級の40.8%に対して初級は54.8%。数字だけを見れば「初級は易しい」と読めます。ただし、この差をそのまま難易度の差と受け取るのは正確ではありません。理由は2つあります。
ひとつは、受験者数の規模がまったく違うことです。3級の27万人に対して、初級は4千人弱。母集団が小さいぶん、団体受験や学校単位での受験など、特定の層の影響を受けやすくなります。
もうひとつは、扱う内容が違うことです。初級は決算を扱わず、月次の集計までが範囲です。範囲が狭いから合格率が高い、というのは自然な結果であって、「初級に受かる力があれば3級も近い」という意味にはなりません。3級では決算整理という新しい山がひとつ増えます。

簿記初級と3級の違いを表で整理する
| 比較項目 | 簿記初級 | 簿記3級 |
|---|---|---|
| 実施方式 | ネット試験のみ | 統一試験(年3回)とネット試験 |
| 試験時間 | 40分 | 60分 |
| 出題形式 | 選択式 | 選択式と入力式(商業簿記3題以内) |
| 受験料(税込) | 2,200円 | 3,300円 |
| 決算の扱い | 扱わない(月次の集計まで) | 決算整理・精算表・財務諸表まで |
| 直近の合格率 | 54.8% | 40.8%(ネット)/33.8%(第173回) |
| 履歴書での認知度 | まだ高くない | 広く知られている |
就職・転職で評価されるのは、実務上ほぼ3級以上です。初級は「評価を得るための級」ではなく、「3級の学習を軌道に乗せるための級」と位置づけると判断しやすくなります。
想定ケース(解説のための設定です。実在の人物ではありません)
Dさんは3級のテキストを買いましたが、最初の10ページで「借方」「貸方」という言葉に引っかかり、そのまま1か月本を開かなくなりました。ここで簿記初級に切り替え、2週間で受験。合格したことで「自分にもできる」という手応えを得て、3級の学習に戻りました。初級の価値は知識そのものより、この「戻ってこられる区切り」にあります。一方、Eさんは同じ状況でも3級のテキストを1回転させることを優先し、そのまま3級に合格しました。どちらが正しいかではなく、途中でやめてしまう可能性が高いかどうかで選ぶのが実用的です。
受けるべき人と、飛ばしてよい人(判断表)
| あなたの状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 簿記の本を開いて3日以内に閉じた経験がある | 初級から | 短い期間で1つ合格すると、学習が続きやすくなる |
| 数字や表を見るのが苦手だと感じている | 初級から | 40分・選択式で負荷が小さく、用語に慣れる時間が取れる |
| 会社で経費精算や請求書の処理をしている | 初級から | 月次の集計と数字の読み取りが、そのまま日常業務に重なる |
| 就職・転職で履歴書に書きたい | 3級から | 評価されるのは3級以上。初級に時間を使うと遠回りになる |
| 簿記の授業を受けたことがある | 3級から | 基礎概念はすでに入っており、初級の範囲で新しく学ぶことが少ない |
| 受験日まで3か月以上ある | 3級から | 期間があるなら、初級を挟まず3級を回転させるほうが早い |

3級から始めると決めた場合の進め方は、簿記3級の独学 勉強時間と3か月スケジュールの記事で3パターンに分けて示しています。
費用と時間から見た初級の位置
初級を挟むと、受験料が2,200円と、学習時間が2〜4週間分だけ上乗せになります。3級を先に受ける場合と比べた総額は次のとおりです。
| ルート | 受験料の合計(税込) | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 3級だけ受ける | 3,300円 | 2〜4か月 |
| 初級 → 3級 | 5,500円 | 3〜5か月 |
差は2,200円と1か月程度です。この上乗せを「無駄」と見るか「途中でやめないための保険」と見るかが判断の分かれ目になります。過去に独学が続かなかった経験があるなら、保険として合理的な金額だと考えられます。なお、ネット試験をインターネット申込方式で申し込む場合は事務手数料550円(税込)が別途かかります。
2027年度からは簿記初級の範囲も変わる
日本商工会議所は2026年7月31日付で、2027年度適用の出題区分表(確定版)を公表しています。適用は2027年4月1日から2028年3月31日までに施行される試験からで、2026年度は現行(2022年度適用)の内容です。
簿記初級についての改定内容は、公表されている改定項目の説明によれば次の2点です。
- 小切手・手形に関連する項目をすべて削除
- 株式会社の資本金取引(発行のみ)を新たに追加
背景には、政府方針により紙媒体の手形・小切手が2026年度末に廃止されることがあります。2026年度中に初級を受けるなら現行のテキストで問題ありませんが、2027年4月以降に受ける可能性がある場合は、教材が改定版に対応しているかを確認してください。全体像は2027年度の出題区分表改定をまとめた記事で整理しています。
まとめ
- 簿記初級はネット試験のみ・40分・選択式・受験料2,200円(税込)
- 合格率は54.8%(2025年4月〜2026年3月)。3級のネット試験は40.8%
- 初級は決算を扱わず、月次の集計と数字の読み取りまでが範囲
- 履歴書で評価されるのは3級以上。初級は「学習を続けるための区切り」
- 2027年度からは小切手・手形が削除され、株式会社の資本金取引(発行のみ)が加わる
次の一歩は、3級のテキストを開いて最初の10ページを読んでみることです。手が止まらなければ3級から、止まったら初級から。実際に開いてみるのが、いちばん確かな判断材料になります。
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よくある質問
簿記初級は履歴書に書けますか?
書くこと自体は可能です。ただし採用の場面で広く認知されているのは3級以上で、初級の知名度はまだ高くありません。履歴書に書くことが主な目的であれば、初級に時間を使わず3級を目指すほうが効率的です。
簿記初級はどのくらいの勉強時間で合格できますか?
日本商工会議所は標準学習時間を公表していません。範囲が「簿記の基本原理・期中取引の処理・月次の集計」の3本に限られ、試験時間が40分の選択式であることから、1日30分から1時間で2〜4週間が現実的な目安になります。実際に必要な時間は、簿記に触れた経験があるかどうかで大きく変わります。
簿記初級と原価計算初級はどちらを先に受けるべきですか?
簿記初級が先です。原価計算初級は、原価の考え方やCVP分析など製造業・サービス業の管理会計を扱う別系統の級で、簿記初級の続きではありません。ただし合格率は84.6%(2025年4月〜2026年3月)と高く、内容も独立しているため、興味があれば並行して受けることもできます。範囲は原価計算初級の出題範囲をまとめた記事で確認できます。
簿記初級に合格すると3級はどのくらい楽になりますか?
用語と仕訳の基本、試算表の読み方はそのまま使えます。一方で3級には決算整理・精算表・財務諸表という新しい山があり、ここは初級では扱いません。「前半が楽になる」と考えるのが実態に近く、「3級の半分が終わった」と考えると後半で息切れします。
簿記初級は統一試験でも受けられますか?
受けられません。簿記初級はネット試験のみで実施されます。ネット試験は各会場が独自に試験日を設定する随時試験なので、会場のカレンダーに空きがあれば近い日程で受験できます。ただし年4回(4月1日〜13日、6月8日〜17日、11月9日〜18日、2月22日〜3月3日)の休止期間があります。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月6日(受験料・合格率・出題範囲は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
「日商簿記」は日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定試験の名称です。本サイトは同会議所が認定・公認する教材ではありません。
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