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模擬試験で「あと5分あれば解けたのに」が続くとき、原因は知識ではなく電卓であることがよくあります。3級は60分、2級は90分。同じ計算でも、キーを押す回数が2倍違えば、それだけで数分の差が生まれます。この記事では、まず試験で使える電卓の条件を公式の記載で確認し、そのうえでGT(グランドトータル)とメモリーの使い方を、簿記の問題に即した手順として示します。あわせて、左手打ちを4週間で身につける練習メニューも用意しました。読み終えたら、手元の電卓でそのまま試せる内容です。
まず確認:試験で使える電卓の条件
日本商工会議所のネット試験の案内には、次のように記載されています。
電卓の機能については、計算機能(四則演算)のみのものに限ります
日本商工会議所「ネット試験の受験方法」
つまり、関数電卓やプログラム機能のついた電卓は使えません。手元の電卓に見慣れない記号のキーが並んでいる場合は、買い替えを検討してください。なお、この記載はネット試験に関するものです。統一試験(ペーパー試験)を受ける場合の取扱いは、受験地の商工会議所の案内と受験票の記載に従ってください。
ポイント
練習で使う電卓と本番で使う電卓は同じものにしてください。キーの配置が違うだけで、本番の打鍵は目に見えて遅くなります。
電卓を選ぶときに見る4つの点
| 見る点 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 表示桁数 | 12桁 | 2級では億単位の金額が出る。8桁だと桁あふれで計算が止まる |
| 本体の大きさ | 手のひらより少し大きい程度 | 小さすぎると隣のキーに触れる。大きすぎると机上が狭くなる |
| キーの配置 | 0キーが大きく、GT・メモリーキーが独立している | よく使うキーを見ずに押せることが速さに直結する |
| 連続入力への強さ | キーを押し切る前に次を押しても入力が拾われるもの | 速く打つほど押下が重なる。取りこぼすと打ち直しになる |
価格帯としては、事務用として売られている実務向けのものであれば十分です。高価な機種にする必要はありませんが、極端に小型・薄型のものは本番でミスの原因になります。
条件に合う機種を探すときは、「12桁・早打ち対応・事務用」で絞り込むと外しません。楽天市場で簿記用電卓を探す/Yahoo!ショッピングで探す/Amazonで探す
GT(グランドトータル):掛け算の答えを自動で合計する
GTは、イコールを押すたびにその答えを裏側で積み上げてくれる機能です。簿記では「単価×数量」を何行も足す場面が頻繁に出てくるため、ここが最も効きます。
手順
- 電卓のスイッチを「GT」側にする(機種によっては常時有効)
- GTキーを2回押して、前の合計を消す
- 1行目を計算してイコールを押す
- 2行目、3行目も同じように計算してイコールを押す
- 最後にGTキーを1回押すと合計が表示される
やってみる
次の3行の売上合計を求めます。
| 商品 | 単価 | 数量 | 金額 |
|---|---|---|---|
| A | 200円 | 15個 | 3,000円 |
| B | 350円 | 8個 | 2,800円 |
| C | 120円 | 25個 | 3,000円 |
| 合計 | — | — | 8,800円 |
打つのは「200×15=」「350×8=」「120×25=」、そして「GT」。これだけです。GTを使わない場合は、3,000を紙に書き、2,800を紙に書き、3,000を紙に書いてから、あらためて3つを足すことになります。書き写す回数が減ると、転記ミスも同時に減ります。

注意点は1つ。次の問題に移る前に、必ずGTキーを2回押してリセットしてください。前の問題の合計が残っていると、次の合計が狂います。
メモリー(M+/M−/MR/MC):足し引きを1画面で完結させる
メモリーは、電卓のなかにもう1つの計算欄を用意する機能です。キーの役割は次の4つだけです。
| キー | 働き |
|---|---|
| M+ | いま表示している数をメモリーに足す |
| M− | いま表示している数をメモリーから引く |
| MR(RM) | メモリーの中身を表示する |
| MC(CM) | メモリーを空にする |
やってみる:利益の計算
売上高1,250,000円から、仕入700,000円・給料250,000円・支払家賃96,000円を引いた金額を求めます。
- MCを押してメモリーを空にする
- 1250000 → M+
- 700000 → M−
- 250000 → M−
- 96000 → M−
- MR → 204,000 が表示される
検算すると、700,000+250,000+96,000=1,046,000、1,250,000-1,046,000=204,000で一致します。メモリーを使わない場合は、費用の合計を先に出して紙に書き、あらためて売上から引く手順になります。行数が増えるほど差が開きます。
GTとメモリーの使い分け
| 場面 | 使う機能 |
|---|---|
| 単価×数量を何行も足す | GT |
| 足す項目と引く項目が混ざる | メモリー |
| 合計を出したあと、その合計をさらに使う | メモリー(M+で保存しておく) |
| 試算表の借方合計・貸方合計を出す | GT(借方でGT、リセット、貸方でGT) |

想定ケース(解説のための設定です。実在の人物ではありません)
Hさんは知識に不安がないのに、模擬試験でいつも最後の総合問題を残していました。解いている様子を振り返ると、電卓の答えをそのつど問題用紙の余白に書き写し、それを見ながらまた打ち直していました。GTとメモリーを使う形に変えたところ、書き写す作業がほぼなくなり、同じ問題を解く時間が短縮されました。知識を1つ増やすより、打鍵の回数を減らすほうが効く時期があります。
簿記の問題での使い所
試算表の貸借一致を確認する
借方の金額を順に「+」で足していき、最後にイコール。次にGTを2回押してリセットし、貸方も同じように合計します。2つの数字が一致すれば、集計は正しく行われています。合わない場合は、どこか1か所の転記か計算が誤っているという情報が得られます。
減価償却の月割計算
取得原価600,000円・耐用年数5年・当期の使用が6か月なら、「600000÷5=」で120,000、続けて「×6÷12=」で60,000。1回の入力で終わります。途中結果を書き写さないことがポイントです。減価償却の考え方そのものは、減価償却の仕訳をまとめた記事で手順化しています。
貸倒引当金の差額補充
売掛金400,000円に2%なら「400000×2%」または「400000×0.02=」で8,000。ここでM+を押し、既存残高3,000を入力してM−、MRを押せば5,000が出ます。引き算を含む計算はメモリーに寄せると、打ち直しがなくなります。
左手打ちを4週間で身につける
右利きの人が左手で電卓を打てるようになると、右手はペンを持ったままで済みます。書きながら計算できるため、問題用紙と電卓を往復する時間がなくなります。ただし、試験直前に切り替えるのは危険です。4週間の余裕があるときに取り組んでください。
| 週 | やること | 1日の時間 |
|---|---|---|
| 1週目 | 4・5・6キーに指を置き、1〜9を見ずに押す練習だけ | 5分 |
| 2週目 | 3桁の数字を見ずに入力。0と00キーの位置を体で覚える | 10分 |
| 3週目 | 実際の練習問題を左手だけで解く。速度は気にしない | 問題演習と同時 |
| 4週目 | GT・メモリーを左手で操作。右手はペンを持ったまま | 問題演習と同時 |
3週目でいったん遅くなります。これは正常な過程なので、そこでやめないでください。4週目に入るころには、右手で打っていたときより速くなっているはずです。
よくあるミスと防ぎ方
| ミス | なぜ起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 前の問題のGT合計が残る | リセットの習慣がない | 問題に入る前にGTを2回押すことを手順に組み込む |
| メモリーの中身が残る | MCを押し忘れる | MRで中身を確認してから使い始める |
| 桁が1つずれる | 0キーと00キーの押し間違い | 00キーを使わず0を2回押す運用に統一する |
| %キーの挙動が想定と違う | 機種によって計算の順番が異なる | %を使わず0.02のように小数で掛ける |
| 答えを写し間違える | 電卓と用紙の往復が多い | GTとメモリーで途中結果を書かずに済ませる |
5つのうち4つは、機能を知らないことではなく手順が固定されていないことが原因です。「問題ごとにGTを2回押す」「メモリーはMRで確認してから使う」の2つを、練習の最初から必ず行うようにしてください。
まとめ
- ネット試験では「計算機能(四則演算)のみ」の電卓に限られる。統一試験は受験地の案内を確認する
- 12桁・キーが押しやすい・GTとメモリーが独立している機種を選び、本番と練習で同じものを使う
- 単価×数量の連続はGT、足し引きが混ざる計算はメモリー
- 試算表の貸借一致確認、減価償却の月割、貸倒引当金の差額補充はすべて1回の入力で終わる
- 左手打ちは4週間の余裕があるときに。3週目の停滞を越えると速くなる
次の一歩は、いま手元にある電卓でGTキーを探すことです。見つかったら、この記事の3行の売上合計をそのまま打ってみてください。8,800と表示されれば、今日から使えます。
次に読む
計算を実際の問題で使う → 簿記3級の仕訳問題20問(解説つき)
学習全体の計画を立てる → 簿記3級の独学 勉強時間とスケジュール
買う前に条件を確認する → 簿記の電卓の選び方
勉強法の記事をまとめて読む → 勉強法カテゴリ
動画で学ぶ|電卓と本番の時間配分
おすすめの講義(簿記3級 #00・5:26)
5:26【簿記3級 #00】試験の概要と最短ルート|60分の配点と解く順番試験は60分。第1問 仕訳15題45点/第2問20点/第3問35点、70点で合格 / 解く順番は 第1問 → 第3問 → 第2問。配点の大きい順に取り切る / 統一試験とネット試験の違い、直近の合格率 / 独学でつまずく典型パターンと、このシリーズの進め方▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
簿記の試験にどんな電卓を持ち込めますか?
日本商工会議所のネット試験の案内では「電卓の機能については、計算機能(四則演算)のみのものに限ります」とされています。関数電卓やプログラム機能つきの電卓は使えません。統一試験の取扱いは受験地の商工会議所の案内および受験票の記載に従ってください。
電卓は何桁のものを選べばよいですか?
12桁をおすすめします。3級だけなら10桁でも足りますが、2級では金額が大きくなる問題があり、桁あふれで計算をやり直すことになります。買い替えの手間を考えると、最初から12桁を選んでおくほうが無駄がありません。
GTキーがない電卓では不利ですか?
不利になります。単価×数量の合計を求める場面が多く、GTがないと途中結果を書き写す作業が発生するためです。メモリー機能(M+)で代用はできますが、キーを押す回数は増えます。これから買うならGT付きを選んでください。
左手打ちは必ず身につけるべきですか?
必須ではありません。右手で十分に速く打てているなら、無理に切り替える必要はありません。切り替える価値があるのは、電卓と問題用紙の往復に時間を取られていると感じる場合です。ただし試験の直前期に始めるのは避けてください。速度が一時的に落ちます。
%キーは使ったほうがよいですか?
機種によって計算の順番が異なるため、使わないほうが安全です。2%なら0.02を掛ける、消費税10%を加えるなら1.1を掛ける、というように小数で統一しておくと、どの電卓でも同じ結果になります。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月6日(受験時の持ち物・計算器具の条件は 日本商工会議所「ネット試験の受験方法」 および受験地の商工会議所の案内で必ずご確認ください)
電卓の機種・仕様に関する記述は一般的な選び方の説明であり、特定の製品を推奨するものではありません。「日商簿記」は日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定試験の名称で、本サイトは同会議所が認定・公認する教材ではありません。
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