決算整理の「仕入/繰越商品」「繰越商品/仕入」、いわゆる「しーくりくりしー」を形だけで覚えていると、精算表や財務諸表で手が止まります。この2行は、仕入勘定の中で「期首の在庫+当期の仕入−期末の在庫」を計算し、仕入勘定の残高を売上原価に変えるための仕訳です。
この記事では、箱の図で式の意味をつかんでから、2行の仕訳の理由を説明します。売上原価勘定で計算する方法との違いや、精算表と財務諸表での表示も、検算つきの設例と練習問題で確認します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記3級 #38・9:21)
9:21【簿記3級 #38】決算の全体像と売上原価|しーくりくりしー決算整理 → 精算表 → 財務諸表 → 帳簿の締切、という流れ / 売上原価=期首商品+当期仕入 −期末商品▶ YouTubeで見る売上原価とは?「期首+仕入−期末」になる理由
売上原価とは、当期に売れた商品の原価です。三分法では販売のつど原価を記録しないので(三分法の仕訳)、決算で在庫の金額から逆算します。
考え方は、商品を入れる箱をイメージすると分かります。箱に入ってきたのは、期首の在庫と当期に仕入れた商品です。箱から出ていったのが売れた商品で、箱に残ったのが期末の在庫です。入ってきた合計と「出ていった分+残った分」は、必ず同じ金額になります。
設例
期首商品棚卸高48,000円、当期商品仕入高365,000円、期末商品棚卸高53,000円、売上高540,000円。数字はすべて編集部が作成したものです。
| 箱に入ってきた商品 | 金額(円) | 箱から出た・残った商品 | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 期首商品棚卸高 | 48,000 | 売上原価(売れた分) | 360,000 |
| 当期商品仕入高 | 365,000 | 期末商品棚卸高(残った分) | 53,000 |
| 合計 | 413,000 | 合計 | 413,000 |
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 − 期末商品棚卸高
設例では48,000+365,000−53,000=360,000円です。売上高が540,000円なので、売上総利益は540,000−360,000=180,000円になります。棚卸高とは、在庫の金額のことです。
式の3つの数字の拾い方
| 式の数字 | 第3問での拾い方 |
|---|---|
| 期首商品棚卸高 | 決算整理前残高試算表の「繰越商品」(三分法では期中に動かないため) |
| 当期商品仕入高 | 決算整理前残高試算表の「仕入」(返品を差し引いた純額) |
| 期末商品棚卸高 | 決算整理事項の「期末商品棚卸高」 |
ポイント
決算整理前の繰越商品は期首の在庫、仕入は当期の仕入高です。期末の在庫だけは、問題文の決算整理事項から拾います。
しーくりくりしーの2行は何をしている?
仕入勘定で売上原価を計算する方法の決算整理仕訳は、次の2行です。借方・貸方の科目の頭文字を順に読むと「し・くり・くり・し」になります。
決算整理仕訳(仕入勘定で売上原価を計算する方法/単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仕入 | 48,000 | 繰越商品 | 48,000 |
| 繰越商品 | 53,000 | 仕入 | 53,000 |
1行目:期首の在庫を仕入勘定に集める
期首の在庫48,000円は、前期から繰り越された商品で、当期に売るためのものです。そこで繰越商品(資産)から仕入(費用)へ移し、当期の仕入と合わせます。これで仕入勘定は48,000+365,000=413,000円になり、当期に売ることができた商品の原価の合計を表します。
2行目:売れ残った期末の在庫を仕入勘定から引く
期末の在庫53,000円は、まだ売れていない商品です。売れていない分まで費用にすると、利益が小さくなりすぎます。そこで仕入勘定から差し引き、繰越商品(資産)として次期へ繰り越します。仕入勘定は413,000−53,000=360,000円になり、これが売上原価です。
| 仕入勘定の借方 | 金額(円) | 仕入勘定の貸方 | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 当期の仕入(期中の合計) | 365,000 | 繰越商品(期末の在庫) | 53,000 |
| 繰越商品(期首の在庫) | 48,000 | 残高=売上原価 | 360,000 |
| 合計 | 413,000 | 合計 | 413,000 |
繰越商品勘定のほうは、期首の48,000円が出ていき、期末の53,000円が入るので、残高は期末の在庫53,000円です。決算整理が終わると「仕入=売上原価」「繰越商品=期末の在庫」にそろいます。仕入勘定を使うのは、当期の仕入がすでにこの勘定に集まっていて、期首と期末の2つを出し入れするだけで売上原価になるからです。
売上原価勘定で計算する方法との違い
売上原価を「売上原価」という別の勘定で計算する方法もあります。期首の在庫と当期の仕入を売上原価勘定に集め、期末の在庫を差し引く3行の仕訳です。
決算整理仕訳(売上原価勘定で計算する方法/単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 48,000 | 繰越商品 | 48,000 |
| 売上原価 | 365,000 | 仕入 | 365,000 |
| 繰越商品 | 53,000 | 売上原価 | 53,000 |
| 項目 | 仕入勘定で計算 | 売上原価勘定で計算 |
|---|---|---|
| 仕訳の行数 | 2行 | 3行 |
| 期首の在庫 | 仕入/繰越商品 | 売上原価/繰越商品 |
| 当期の仕入 | 仕入勘定に残したまま | 売上原価/仕入で振り替える |
| 期末の在庫 | 繰越商品/仕入 | 繰越商品/売上原価 |
| 売上原価が表れる勘定 | 仕入(残高360,000円) | 売上原価(残高360,000円) |
| 決算整理後の仕入勘定 | 360,000円 | 0円 |
売上原価勘定の残高は48,000+365,000−53,000=360,000円で、どちらの方法でも売上原価と繰越商品の金額は変わりません。試験では、精算表に「売上原価」の行があれば売上原価勘定で計算し、なければ仕入勘定で計算する、と答案用紙の形から判断します。問題文に「売上原価は仕入の行で計算する」などの指示があれば、それに従います。講義#38でも、この2つの計算方法を順に扱っています。
精算表と財務諸表での表示|繰越商品は「商品」になる
8桁精算表では、しーくりくりしーの2行を修正記入欄に書き、横に計算して損益計算書欄と貸借対照表欄に移します。設例の該当行だけを抜き出すと次のとおりです。
| 勘定科目 | 残高試算表 | 修正記入 | 移す先と金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越商品 | 借方 48,000 | 借方 53,000/貸方 48,000 | 貸借対照表の借方 53,000 |
| 仕入 | 借方 365,000 | 借方 48,000/貸方 53,000 | 損益計算書の借方 360,000 |
横の計算は「同じ側なら足す、反対側なら引く」です。繰越商品は48,000+53,000−48,000=53,000円、仕入は365,000+48,000−53,000=360,000円になります。精算表全体の埋め方と部分点の取り方は精算表の書き方で扱っています。
損益計算書と貸借対照表では、勘定科目名をそのまま使わず、表示科目に言い換えます。
| 決算整理後の勘定 | 財務諸表での表示 | 金額(円) |
|---|---|---|
| 売上 | 損益計算書の「売上高」 | 540,000 |
| 仕入(残高) | 損益計算書の「売上原価」 | 360,000 |
| 繰越商品 | 貸借対照表の「商品」 | 53,000 |
損益計算書に「仕入」、貸借対照表に「繰越商品」と書くと、表示科目の誤りになります。ほかの言い換えは財務諸表の作り方でまとめています。
しーくりくりしーで間違えやすい5つの点と理由
- 期首と期末の金額を逆に入れる:2行とも繰越商品と仕入の組み合わせなので、数字の置き場所を取り違えるためです。1行目(仕入/繰越商品)は期首、2行目(繰越商品/仕入)は期末と、行と金額をセットで覚えます。
- 決算整理前の繰越商品を期末の在庫だと思う:「残高試算表=今の残高」と考えるためです。三分法では期中に繰越商品が動かないので、決算整理前の金額は期首の在庫です。
- 精算表で、繰越商品の貸借対照表欄に期首の金額を書く:試算表欄の数字をそのまま横に写してしまうためです。修正記入を足し引きした後の、期末の在庫を書きます。
- 損益計算書に「仕入」、貸借対照表に「繰越商品」と書く:勘定科目名と表示科目名を区別していないためです。売上原価・商品に言い換えます。
- 売上原価勘定で計算するのに、仕入の振替を忘れる:2行の型に慣れているためです。売上原価勘定の方法は3行で、「売上原価/仕入」の行が必要です。
売上原価対立法では決算整理が要らない理由
売上原価対立法(販売のつど売上原価勘定に振り替える方法)では、商品を売るたびに「売上原価/商品」を書きます。売上原価は期中に積み上がり、商品勘定には売れ残った分の原価だけが残ります。決算の時点で売上原価も期末の在庫もすでに帳簿に出ているので、しーくりくりしーのような計算の仕訳は要りません。
| 時点 | 三分法 | 売上原価対立法 |
|---|---|---|
| 仕入れたとき | 仕入/買掛金など | 商品/買掛金など |
| 売ったとき | 売掛金など/売上 | 売掛金など/売上 売上原価/商品 |
| 決算 | しーくりくりしー(2行) | 売上原価の計算は不要 |
| 決算整理前の残高試算表 | 繰越商品=期首の在庫 仕入=当期の仕入高 | 商品=期末の在庫 売上原価=当期の売上原価 |
設例を売上原価対立法で記録していたなら、商品勘定は48,000+365,000−360,000=53,000円です。決算整理前から期末の在庫と一致しています。
売上原価対立法は、2026年度(2027年3月31日まで)の試験では2級の範囲で、2027年4月1日以降の試験から3級の範囲に入ります。2027年度に3級を受ける人は、決算整理前残高試算表の科目で方法を見分けましょう。「繰越商品・仕入」なら三分法、「商品・売上原価」なら売上原価対立法です。改定の全体像は2027年度の出題区分表改定のまとめにまとめています。
練習問題|決算整理仕訳と精算表の数字
練習問題1
決算整理前残高試算表の繰越商品は35,000円、仕入は412,000円だった。期末商品棚卸高は41,000円である。仕入勘定で売上原価を計算する決算整理仕訳を示し、売上原価の金額を答えなさい。
練習問題1の解答と解説を見る
練習問題1の決算整理仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仕入 | 35,000 | 繰越商品 | 35,000 |
| 繰越商品 | 41,000 | 仕入 | 41,000 |
売上原価は35,000+412,000−41,000=406,000円です。決算整理前の繰越商品35,000円が期首の在庫なので、1行目に使います。2行目は決算整理事項の期末の在庫41,000円です。
練習問題2
期首商品棚卸高22,000円、当期商品仕入高298,000円、期末商品棚卸高27,000円である。売上原価勘定で売上原価を計算する決算整理仕訳を示しなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2の決算整理仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 22,000 | 繰越商品 | 22,000 |
| 売上原価 | 298,000 | 仕入 | 298,000 |
| 繰越商品 | 27,000 | 売上原価 | 27,000 |
売上原価勘定の残高は22,000+298,000−27,000=293,000円になります。仕入勘定は298,000円を振り替えたので0円です。借方合計347,000円=貸方合計347,000円で一致します。
練習問題3
決算整理後の仕入勘定の残高(売上原価)は510,000円、期首商品棚卸高は60,000円、期末商品棚卸高は45,000円だった。当期商品仕入高と、決算整理前残高試算表の繰越商品の金額を答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
当期商品仕入高は495,000円、決算整理前の繰越商品は60,000円です。510,000=60,000+当期商品仕入高−45,000なので、当期商品仕入高=510,000−60,000+45,000=495,000円。決算整理前の繰越商品は、期中に動かないので期首の60,000円です。
練習問題4
精算表で、繰越商品の残高試算表欄は借方30,000円、仕入の残高試算表欄は借方280,000円だった。期末商品棚卸高は34,000円である。繰越商品の貸借対照表欄と、仕入の損益計算書欄の金額を答えなさい(売上原価は仕入の行で計算する)。
練習問題4の解答と解説を見る
繰越商品の貸借対照表欄は借方34,000円、仕入の損益計算書欄は借方276,000円です。修正記入は、繰越商品が借方34,000円・貸方30,000円、仕入が借方30,000円・貸方34,000円。横に計算すると、繰越商品は30,000+34,000−30,000=34,000円です。仕入は280,000+30,000−34,000=276,000円になります。
まとめ
- 売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高−期末商品棚卸高。箱に入った商品=売れた分+残った分で考える
- しーくりくりしーは「仕入/繰越商品(期首)」「繰越商品/仕入(期末)」の2行で、決算整理後の仕入勘定が売上原価になる
- 決算整理前の繰越商品は期首の在庫、仕入は当期の仕入高。期末の在庫は決算整理事項から拾う
- 売上原価勘定で計算する方法は3行。精算表に「売上原価」の行があればこちらで計算する
- 財務諸表では仕入→売上原価、繰越商品→商品と表示する。売上原価対立法なら決算での計算は不要
次の一歩として、決算整理のほかの型は簿記3級の決算整理仕訳(8つの型)、第3問の精算表での流し方は精算表の書き方で続けて確認できます。講義で流れを追う人は、簿記3級の無料講義 全50本の一覧の#38から決算の単元に入ります。
動画で学ぶ|決算と売上原価の講義
この記事の講義(簿記3級 #38・9:21)
9:21【簿記3級 #38】決算の全体像と売上原価|しーくりくりしー決算整理 → 精算表 → 財務諸表 → 帳簿の締切、という流れ / 売上原価=期首商品+当期仕入 −期末商品 / 仕入勘定で計算する方法(しーくりくりしー) / 売上原価勘定で計算する方法▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
しーくりくりしーは、なぜこの順番なのですか?
1行目で期首の在庫を仕入勘定に足し、2行目で期末の在庫を仕入勘定から引くためです。この順番は「期首+仕入−期末」という売上原価の式と同じ流れになっています。
決算整理前残高試算表の繰越商品は、期首と期末のどちらの金額ですか?
三分法では期首の在庫の金額です。繰越商品は期中の取引では動かず、決算整理で初めて期末の金額に入れ替わります。
売上原価の計算に、なぜ仕入勘定を使うのですか?
当期の仕入がすでに仕入勘定に集まっているので、期首と期末の在庫を出し入れするだけで売上原価になるからです。売上原価勘定を使う方法もあり、問題文の指示や精算表の行で判断します。
売上原価対立法でも、しーくりくりしーは必要ですか?
必要ありません。販売のつど「売上原価/商品」を記録しているため、決算の時点で売上原価と期末の在庫がすでに帳簿に出ています。3級では2027年4月1日以降の試験から範囲に入ります。
棚卸減耗損や商品評価損があるときはどうなりますか?
2級で学ぶ論点で、しーくりくりしーで売上原価を計算したあとに、在庫の数量不足や価値の下落を別に計上します。求め方は棚卸減耗損と商品評価損の求め方で解説しています。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
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