退職給付引当金の仕訳|賞与・修繕・商品保証も同じ型で(2級)

退職給付引当金の仕訳、賞与・修繕・商品保証も1つの型で解くと書かれた「簿記2級」の記事のアイキャッチ画像(動画解説つき)

本サイトの記事には、広告(アフィリエイトプログラム)が含まれる場合があります。広告を含む記事では、記事の冒頭にその旨を明記しています。Amazonのアソシエイトとして、ぼきの森学校は適格販売により収入を得ています。

退職給付引当金の仕訳は、決算で「退職給付費用/退職給付引当金」、退職一時金を払ったときに「退職給付引当金/普通預金など」の2本が基本です。費用の科目は、退職給付引当金繰入ではなく退職給付費用です。

賞与・修繕・商品保証の引当金も、同じ型で解けます。決算で繰り入れ、支払うときはまず引当金を取り崩し、足りない分だけその期の費用にする型です。4要件から表示区分まで、設例と練習問題で確認します。

目次

退職給付引当金の仕訳|費用の科目は退職給付費用

退職給付引当金は、従業員が将来退職したときに支払う退職金(退職一時金や退職年金)に備える引当金です。働いた期間に応じて増えていく将来の支払いを、毎期の費用として少しずつ計上していきます。

2級の問題では、当期に計上する退職給付費用の金額は問題文で与えられます。ほかの引当金と違い、費用の科目は「退職給付引当金繰入」ではなく「退職給付費用」です。

設例

決算で、当期の退職給付費用1,500,000円を計上する。翌期、従業員の退職に伴い、退職一時金3,200,000円を普通預金から支払った(退職給付引当金の残高は十分にある)。

決算:退職給付費用の計上(単位:円)

借方貸方
退職給付費用1,500,000退職給付引当金1,500,000

退職一時金の支払い(単位:円)

借方貸方
退職給付引当金3,200,000普通預金3,200,000

退職一時金の支払いでは、費用は出てきません。退職金の費用は、その従業員が働いていた各期の決算で、退職給付費用として計上済みだからです。支払時は、積み上げた引当金を取り崩すだけです。

企業年金なら、会社の仕訳が要るのはどこか

場面会社の仕訳
決算で当期の退職給付費用を計上する退職給付費用/退職給付引当金
会社が退職一時金を支払う退職給付引当金/普通預金など
会社が年金基金に掛金を拠出する退職給付引当金/普通預金など
年金基金が退職者に年金を支払う仕訳なし

年金を退職者に支払うのは年金基金なので、会社のお金は動きません。会社の帳簿では、掛金を拠出した時点で引当金を減らしてあるため、基金からの支払いでは仕訳をしません。

▶ 動画で確認する(4:46〜 退職給付引当金──会社の仕訳が要るのはどこか)

引当金とは?4要件と「繰入→取崩し」の1つの型

引当金とは、将来の費用や損失のうち、原因が当期までにあるものを見積もって当期の費用にし、同じ額を負債として残しておくものです。お金を払う期ではなく、原因のある期に費用を計上するための仕組みです。

4要件賞与引当金に当てはめると
① 将来の特定の費用または損失である翌期に支給する賞与という、中身の決まった支出
② その発生が当期以前の事象に起因する支給対象期間のうち、当期に働いた分が原因
③ 発生の可能性が高い支給規程などにより、支給が見込まれる
④ 金額を合理的に見積もれる支給見込額と支給対象期間の月数から計算できる

4つをすべて満たすときに引当金を計上します。1つでも欠けていれば、引当金にはしません。

決算で繰り入れる → 支払時はまず引当金を取り崩す → 足りない分だけその期の費用

退職給付も含め、2級で学ぶ引当金はこの型で解けます。違うのは、費用の科目名と、足りない分を処理する科目だけです。

▶ 動画で確認する(1:23〜 引当金とは何か──4要件)

賞与・修繕・商品保証を同じ型で解く

賞与引当金|支給対象期間で按分し、支給時に前期分を取り崩す

設例

決算日は3月31日。6月10日に支給する賞与の支給対象期間は12月1日〜5月31日で、支給見込額は1,800,000円である。6月10日に賞与1,800,000円を普通預金から支給した(源泉所得税などは考えない)。

支給対象期間6か月のうち、当期に属するのは12月〜3月の4か月です。1,800,000×4/6=1,200,000円を、決算で繰り入れます。

決算:賞与引当金の繰入(単位:円)

借方貸方
賞与引当金繰入1,200,000賞与引当金1,200,000

6月10日:賞与の支給(単位:円)

借方貸方
賞与引当金1,200,000普通預金1,800,000
賞与600,000

支給時は、まず前期分の引当金を取り崩します。賞与600,000円は、支給した期に属する4月と5月の2か月分です。全額を賞与にすると、前期に費用にした1,200,000円が二重に計上されてしまいます。

▶ 動画で確認する(3:38〜 例題──賞与引当金は支給対象期間で按分)

修繕引当金|足りない分は修繕費、改良分は資産

修繕引当金は、当期の使用によって必要になった修繕のうち、実施が翌期以降になるものに備える引当金です。修繕を実施したら、まず引当金を取り崩し、足りない分だけ修繕費にします。支出に改良(資本的支出)が含まれていれば、その部分は資産に加えます。

設例

前期末に修繕引当金500,000円を設定していた。当期に建物の修繕を行い、740,000円を普通預金から支払った。このうち200,000円は、建物の価値を高める改良と判断された。

修繕の実施(単位:円)

借方貸方
修繕引当金500,000普通預金740,000
修繕費40,000
建物200,000

修繕部分は740,000−200,000=540,000円です。引当金500,000円を取り崩し、不足の40,000円を修繕費にします。改良と修繕の分け方は、圧縮記帳と火災未決算・改良と修繕の按分で詳しく扱っています。

商品保証引当金|洗替法か差額補充法かで仕訳の本数が変わる

設例

前期末の商品保証引当金は30,000円。当期中に前期販売分の無料修理を行い、18,000円を普通預金から支払った。決算で、当期に販売した商品の保証費用を25,000円と見積もった。

無料修理の支払い(単位:円)

借方貸方
商品保証引当金18,000普通預金18,000

決算日には、前期に設定した引当金の残り12,000円(30,000−18,000)が残っています。決算の仕訳は、問題文が指示する方法によって変わります。

方法決算の仕訳(単位:円)期末残高(円)
洗替法商品保証引当金12,000/商品保証引当金戻入12,000
商品保証引当金繰入25,000/商品保証引当金25,000
25,000
差額補充法商品保証引当金繰入13,000/商品保証引当金13,00025,000

どちらも期末残高は25,000円で、損益への影響も差し引き13,000円の費用で同じです。ただし、洗替法の指示があるのに差額の1本にまとめると、仕訳としては誤りです。戻入と繰入は相殺せず、指示どおりに書き分けます。

▶ 動画で確認する(6:47〜 例題──商品保証引当金の一巡)

表示区分の早見表|貸借対照表と損益計算書のどこに載るか

引当金費用の科目貸借対照表の区分
賞与引当金賞与引当金繰入流動負債
修繕引当金修繕引当金繰入流動負債
商品保証引当金商品保証引当金繰入流動負債
退職給付引当金退職給付費用固定負債
貸倒引当金(参考)貸倒引当金繰入資産の部で債権から控除

負債の引当金のうち、固定負債になるのは退職給付引当金です。退職金の支払いは長い期間にわたって続くため、全体を固定負債に表示します。賞与・修繕・商品保証は、1年以内に取り崩される見込みの引当金として流動負債に並べます。

損益計算書では、これらの繰入額と退職給付費用は、販売費及び一般管理費に表示するのが基本です。貸倒引当金繰入のうち、貸付金など営業外の債権に対するものは営業外費用になります。貸倒引当金を復習したい人は、貸倒引当金の仕訳(差額補充法と貸倒れ)を確認してください。

▶ 動画で確認する(2:54〜 引当金の分類と貸借対照表での位置)

引当金で失点する5つのパターンと原因

  1. 賞与の支給時に、全額を賞与にする:「払ったら費用」という感覚が残っているためです。前期分は引当金を取り崩し、費用にするのは支給した期に属する分だけです。
  2. 退職給付の費用を「退職給付引当金繰入」と書く:ほかの引当金と同じ形だと思い込むためです。退職給付だけは、費用の科目が退職給付費用です。
  3. 洗替法の指示なのに、差額の1本で書く:結果の数字が同じなので、まとめたくなるためです。戻入と繰入は相殺せず、2本書きます。
  4. 引当金の残高を超える修繕まで、引当金で処理する:修繕のための引当金だから全額使えると考えるためです。残高を超えた分は修繕費、改良分は資産です。
  5. 年金基金からの支給に仕訳を書く:退職者にお金が支払われたので、会社の帳簿も動くと考えるためです。支払うのは基金で、会社の仕訳はありません。

2級で扱う税効果会計は、引当金・減価償却・その他有価証券に係るものに限られ、引当金はその題材の1つです。つながりは税効果会計の仕訳(2級)で確認できます。

練習問題3問|賞与・退職給付・商品保証

練習問題1

決算日は3月31日。賞与の支給対象期間は11月1日〜4月30日、支給見込額は2,100,000円である。決算で必要な仕訳と、5月25日に賞与2,100,000円を普通預金から支給したときの仕訳を答えなさい(源泉所得税などは考えない)。

練習問題1の解答と解説を見る

練習問題1 決算(単位:円)

借方貸方
賞与引当金繰入1,750,000賞与引当金1,750,000

練習問題1 5月25日の支給(単位:円)

借方貸方
賞与引当金1,750,000普通預金2,100,000
賞与350,000

当期に属するのは11月〜3月の5か月で、2,100,000×5/6=1,750,000円を繰り入れます。支給時は引当金1,750,000円を取り崩し、4月の1か月分350,000円を賞与にします。

練習問題2

次のア〜ウのうち、会社が仕訳をするものを選び、その仕訳を答えなさい。
ア 従業員の退職に伴い、退職一時金2,600,000円を普通預金から支払った(退職給付引当金の残高は十分にある)。
イ 企業年金の掛金300,000円を、普通預金から年金基金へ拠出した。
ウ 年金基金が、退職者に年金420,000円を支払った。

練習問題2の解答と解説を見る

練習問題2 ア(単位:円)

借方貸方
退職給付引当金2,600,000普通預金2,600,000

練習問題2 イ(単位:円)

借方貸方
退職給付引当金300,000普通預金300,000

会社が仕訳をするのはアとイで、どちらも退職給付引当金を減らします。ウは年金基金が支払うので、会社の仕訳はありません。

練習問題3

前期末の商品保証引当金は40,000円で、当期中に使うことなく保証期間が終了した。当期に販売した商品の保証費用は46,000円と見積もった。(1)洗替法、(2)差額補充法による決算の仕訳をそれぞれ答えなさい。

練習問題3の解答と解説を見る

練習問題3 (1)洗替法:前期分の戻入(単位:円)

借方貸方
商品保証引当金40,000商品保証引当金戻入40,000

練習問題3 (1)洗替法:当期分の繰入(単位:円)

借方貸方
商品保証引当金繰入46,000商品保証引当金46,000

練習問題3 (2)差額補充法(単位:円)

借方貸方
商品保証引当金繰入6,000商品保証引当金6,000

洗替法は、前期分40,000円を戻し入れてから当期分46,000円を繰り入れます。差額補充法は、46,000−40,000=6,000円だけを繰り入れます。期末残高はどちらも46,000円です。

まとめ

  • 退職給付引当金は、決算で「退職給付費用/退職給付引当金」。退職一時金の支払いと年金掛金の拠出で取り崩し、基金からの支給は仕訳なし
  • 引当金は4要件をすべて満たすときに計上し、費用は払う期ではなく原因のある期に計上する
  • 賞与・修繕は、支払時にまず引当金を取り崩し、足りない分だけその期の費用にする
  • 商品保証は、洗替法なら戻入と繰入の2本、差額補充法なら差額の1本
  • 退職給付引当金は固定負債、賞与・修繕・商品保証の引当金は流動負債

次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から、引当金の前後の回(貸倒引当金、経過勘定)を続けて見ておきましょう。第3問の決算整理で引当金がまとめて出ても、手が止まりにくくなります。動画講義の進め方は簿記2級の無料講義66本の使い方にまとめています。

動画で学ぶ|引当金の講義

よくある質問

退職給付引当金と退職給付費用の違いは何ですか?

退職給付引当金は将来の支払いに備えて積み上げた負債の残高、退職給付費用はその期に計上する費用です。決算で退職給付費用を計上すると、同じ額だけ退職給付引当金が増えます。

賞与引当金は流動負債ですか、固定負債ですか?

流動負債です。翌期に支給する賞与に備える引当金なので、1年以内に取り崩されます。

修繕引当金を超える修繕をしたら、どう処理しますか?

引当金を全額取り崩し、超えた分は修繕費にします。支出に改良が含まれていれば、その部分は修繕費ではなく固定資産に加えます。

洗替法と差額補充法は、どちらで答えればいいですか?

問題文の指示に従います。洗替法の指示なら、戻入と繰入を相殺せず、2本の仕訳を書きます。

執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士

情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)

記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。

「日商簿記」は日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定試験の名称です。本サイトは同会議所が認定・公認する教材ではありません。

内容の誤りにお気づきの際は お問い合わせフォーム からお知らせください。運営者情報・監修体制 もあわせてご覧ください。

この記事が役に立ったらシェアしてください
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ぼきの森学校の編集部です。日商簿記(初級・3級・2級)と原価計算初級の講義動画・解説記事・仕訳トレーニングを制作しています。記事は公認会計士・税理士が監修し、日本商工会議所の出題区分表や公表資料などの一次情報を確認したうえで公開しています。内容の誤りはお問い合わせフォームからお知らせください。

目次