退職給付引当金の仕訳は、決算で「退職給付費用/退職給付引当金」、退職一時金を払ったときに「退職給付引当金/普通預金など」の2本が基本です。費用の科目は、退職給付引当金繰入ではなく退職給付費用です。
賞与・修繕・商品保証の引当金も、同じ型で解けます。決算で繰り入れ、支払うときはまず引当金を取り崩し、足りない分だけその期の費用にする型です。4要件から表示区分まで、設例と練習問題で確認します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記2級 #20・10:20)
10:20【簿記2級】引当金の仕訳|賞与・退職給付・修繕・商品保証は1つの形で解ける引当金とは何か──4要件 / つまずき──どうせ払うなら来期の費用では?▶ YouTubeで見る退職給付引当金の仕訳|費用の科目は退職給付費用
退職給付引当金は、従業員が将来退職したときに支払う退職金(退職一時金や退職年金)に備える引当金です。働いた期間に応じて増えていく将来の支払いを、毎期の費用として少しずつ計上していきます。
2級の問題では、当期に計上する退職給付費用の金額は問題文で与えられます。ほかの引当金と違い、費用の科目は「退職給付引当金繰入」ではなく「退職給付費用」です。
設例
決算で、当期の退職給付費用1,500,000円を計上する。翌期、従業員の退職に伴い、退職一時金3,200,000円を普通預金から支払った(退職給付引当金の残高は十分にある)。
決算:退職給付費用の計上(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 退職給付費用 | 1,500,000 | 退職給付引当金 | 1,500,000 |
退職一時金の支払い(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 退職給付引当金 | 3,200,000 | 普通預金 | 3,200,000 |
退職一時金の支払いでは、費用は出てきません。退職金の費用は、その従業員が働いていた各期の決算で、退職給付費用として計上済みだからです。支払時は、積み上げた引当金を取り崩すだけです。
企業年金なら、会社の仕訳が要るのはどこか
| 場面 | 会社の仕訳 |
|---|---|
| 決算で当期の退職給付費用を計上する | 退職給付費用/退職給付引当金 |
| 会社が退職一時金を支払う | 退職給付引当金/普通預金など |
| 会社が年金基金に掛金を拠出する | 退職給付引当金/普通預金など |
| 年金基金が退職者に年金を支払う | 仕訳なし |
年金を退職者に支払うのは年金基金なので、会社のお金は動きません。会社の帳簿では、掛金を拠出した時点で引当金を減らしてあるため、基金からの支払いでは仕訳をしません。
▶ 動画で確認する(4:46〜 退職給付引当金──会社の仕訳が要るのはどこか)
引当金とは?4要件と「繰入→取崩し」の1つの型
引当金とは、将来の費用や損失のうち、原因が当期までにあるものを見積もって当期の費用にし、同じ額を負債として残しておくものです。お金を払う期ではなく、原因のある期に費用を計上するための仕組みです。
| 4要件 | 賞与引当金に当てはめると |
|---|---|
| ① 将来の特定の費用または損失である | 翌期に支給する賞与という、中身の決まった支出 |
| ② その発生が当期以前の事象に起因する | 支給対象期間のうち、当期に働いた分が原因 |
| ③ 発生の可能性が高い | 支給規程などにより、支給が見込まれる |
| ④ 金額を合理的に見積もれる | 支給見込額と支給対象期間の月数から計算できる |
4つをすべて満たすときに引当金を計上します。1つでも欠けていれば、引当金にはしません。
決算で繰り入れる → 支払時はまず引当金を取り崩す → 足りない分だけその期の費用
退職給付も含め、2級で学ぶ引当金はこの型で解けます。違うのは、費用の科目名と、足りない分を処理する科目だけです。
賞与・修繕・商品保証を同じ型で解く
賞与引当金|支給対象期間で按分し、支給時に前期分を取り崩す
設例
決算日は3月31日。6月10日に支給する賞与の支給対象期間は12月1日〜5月31日で、支給見込額は1,800,000円である。6月10日に賞与1,800,000円を普通預金から支給した(源泉所得税などは考えない)。
支給対象期間6か月のうち、当期に属するのは12月〜3月の4か月です。1,800,000×4/6=1,200,000円を、決算で繰り入れます。
決算:賞与引当金の繰入(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 賞与引当金繰入 | 1,200,000 | 賞与引当金 | 1,200,000 |
6月10日:賞与の支給(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 賞与引当金 | 1,200,000 | 普通預金 | 1,800,000 |
| 賞与 | 600,000 | ||
支給時は、まず前期分の引当金を取り崩します。賞与600,000円は、支給した期に属する4月と5月の2か月分です。全額を賞与にすると、前期に費用にした1,200,000円が二重に計上されてしまいます。
▶ 動画で確認する(3:38〜 例題──賞与引当金は支給対象期間で按分)
修繕引当金|足りない分は修繕費、改良分は資産
修繕引当金は、当期の使用によって必要になった修繕のうち、実施が翌期以降になるものに備える引当金です。修繕を実施したら、まず引当金を取り崩し、足りない分だけ修繕費にします。支出に改良(資本的支出)が含まれていれば、その部分は資産に加えます。
設例
前期末に修繕引当金500,000円を設定していた。当期に建物の修繕を行い、740,000円を普通預金から支払った。このうち200,000円は、建物の価値を高める改良と判断された。
修繕の実施(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 修繕引当金 | 500,000 | 普通預金 | 740,000 |
| 修繕費 | 40,000 | ||
| 建物 | 200,000 | ||
修繕部分は740,000−200,000=540,000円です。引当金500,000円を取り崩し、不足の40,000円を修繕費にします。改良と修繕の分け方は、圧縮記帳と火災未決算・改良と修繕の按分で詳しく扱っています。
商品保証引当金|洗替法か差額補充法かで仕訳の本数が変わる
設例
前期末の商品保証引当金は30,000円。当期中に前期販売分の無料修理を行い、18,000円を普通預金から支払った。決算で、当期に販売した商品の保証費用を25,000円と見積もった。
無料修理の支払い(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 商品保証引当金 | 18,000 | 普通預金 | 18,000 |
決算日には、前期に設定した引当金の残り12,000円(30,000−18,000)が残っています。決算の仕訳は、問題文が指示する方法によって変わります。
| 方法 | 決算の仕訳(単位:円) | 期末残高(円) |
|---|---|---|
| 洗替法 | 商品保証引当金12,000/商品保証引当金戻入12,000 商品保証引当金繰入25,000/商品保証引当金25,000 | 25,000 |
| 差額補充法 | 商品保証引当金繰入13,000/商品保証引当金13,000 | 25,000 |
どちらも期末残高は25,000円で、損益への影響も差し引き13,000円の費用で同じです。ただし、洗替法の指示があるのに差額の1本にまとめると、仕訳としては誤りです。戻入と繰入は相殺せず、指示どおりに書き分けます。
▶ 動画で確認する(6:47〜 例題──商品保証引当金の一巡)
表示区分の早見表|貸借対照表と損益計算書のどこに載るか
| 引当金 | 費用の科目 | 貸借対照表の区分 |
|---|---|---|
| 賞与引当金 | 賞与引当金繰入 | 流動負債 |
| 修繕引当金 | 修繕引当金繰入 | 流動負債 |
| 商品保証引当金 | 商品保証引当金繰入 | 流動負債 |
| 退職給付引当金 | 退職給付費用 | 固定負債 |
| 貸倒引当金(参考) | 貸倒引当金繰入 | 資産の部で債権から控除 |
負債の引当金のうち、固定負債になるのは退職給付引当金です。退職金の支払いは長い期間にわたって続くため、全体を固定負債に表示します。賞与・修繕・商品保証は、1年以内に取り崩される見込みの引当金として流動負債に並べます。
損益計算書では、これらの繰入額と退職給付費用は、販売費及び一般管理費に表示するのが基本です。貸倒引当金繰入のうち、貸付金など営業外の債権に対するものは営業外費用になります。貸倒引当金を復習したい人は、貸倒引当金の仕訳(差額補充法と貸倒れ)を確認してください。
▶ 動画で確認する(2:54〜 引当金の分類と貸借対照表での位置)
引当金で失点する5つのパターンと原因
- 賞与の支給時に、全額を賞与にする:「払ったら費用」という感覚が残っているためです。前期分は引当金を取り崩し、費用にするのは支給した期に属する分だけです。
- 退職給付の費用を「退職給付引当金繰入」と書く:ほかの引当金と同じ形だと思い込むためです。退職給付だけは、費用の科目が退職給付費用です。
- 洗替法の指示なのに、差額の1本で書く:結果の数字が同じなので、まとめたくなるためです。戻入と繰入は相殺せず、2本書きます。
- 引当金の残高を超える修繕まで、引当金で処理する:修繕のための引当金だから全額使えると考えるためです。残高を超えた分は修繕費、改良分は資産です。
- 年金基金からの支給に仕訳を書く:退職者にお金が支払われたので、会社の帳簿も動くと考えるためです。支払うのは基金で、会社の仕訳はありません。
2級で扱う税効果会計は、引当金・減価償却・その他有価証券に係るものに限られ、引当金はその題材の1つです。つながりは税効果会計の仕訳(2級)で確認できます。
練習問題3問|賞与・退職給付・商品保証
練習問題1
決算日は3月31日。賞与の支給対象期間は11月1日〜4月30日、支給見込額は2,100,000円である。決算で必要な仕訳と、5月25日に賞与2,100,000円を普通預金から支給したときの仕訳を答えなさい(源泉所得税などは考えない)。
練習問題1の解答と解説を見る
練習問題1 決算(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 賞与引当金繰入 | 1,750,000 | 賞与引当金 | 1,750,000 |
練習問題1 5月25日の支給(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 賞与引当金 | 1,750,000 | 普通預金 | 2,100,000 |
| 賞与 | 350,000 | ||
当期に属するのは11月〜3月の5か月で、2,100,000×5/6=1,750,000円を繰り入れます。支給時は引当金1,750,000円を取り崩し、4月の1か月分350,000円を賞与にします。
練習問題2
次のア〜ウのうち、会社が仕訳をするものを選び、その仕訳を答えなさい。
ア 従業員の退職に伴い、退職一時金2,600,000円を普通預金から支払った(退職給付引当金の残高は十分にある)。
イ 企業年金の掛金300,000円を、普通預金から年金基金へ拠出した。
ウ 年金基金が、退職者に年金420,000円を支払った。
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2 ア(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 退職給付引当金 | 2,600,000 | 普通預金 | 2,600,000 |
練習問題2 イ(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 退職給付引当金 | 300,000 | 普通預金 | 300,000 |
会社が仕訳をするのはアとイで、どちらも退職給付引当金を減らします。ウは年金基金が支払うので、会社の仕訳はありません。
練習問題3
前期末の商品保証引当金は40,000円で、当期中に使うことなく保証期間が終了した。当期に販売した商品の保証費用は46,000円と見積もった。(1)洗替法、(2)差額補充法による決算の仕訳をそれぞれ答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
練習問題3 (1)洗替法:前期分の戻入(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 商品保証引当金 | 40,000 | 商品保証引当金戻入 | 40,000 |
練習問題3 (1)洗替法:当期分の繰入(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 商品保証引当金繰入 | 46,000 | 商品保証引当金 | 46,000 |
練習問題3 (2)差額補充法(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 商品保証引当金繰入 | 6,000 | 商品保証引当金 | 6,000 |
洗替法は、前期分40,000円を戻し入れてから当期分46,000円を繰り入れます。差額補充法は、46,000−40,000=6,000円だけを繰り入れます。期末残高はどちらも46,000円です。
まとめ
- 退職給付引当金は、決算で「退職給付費用/退職給付引当金」。退職一時金の支払いと年金掛金の拠出で取り崩し、基金からの支給は仕訳なし
- 引当金は4要件をすべて満たすときに計上し、費用は払う期ではなく原因のある期に計上する
- 賞与・修繕は、支払時にまず引当金を取り崩し、足りない分だけその期の費用にする
- 商品保証は、洗替法なら戻入と繰入の2本、差額補充法なら差額の1本
- 退職給付引当金は固定負債、賞与・修繕・商品保証の引当金は流動負債
次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から、引当金の前後の回(貸倒引当金、経過勘定)を続けて見ておきましょう。第3問の決算整理で引当金がまとめて出ても、手が止まりにくくなります。動画講義の進め方は簿記2級の無料講義66本の使い方にまとめています。
動画で学ぶ|引当金の講義
この記事の講義(簿記2級 #20・10:20)
10:20【簿記2級】引当金の仕訳|賞与・退職給付・修繕・商品保証は1つの形で解ける引当金とは何か──4要件 / つまずき──どうせ払うなら来期の費用では? / 例題:賞与引当金は支給対象期間で按分 / 例題:修繕引当金と特別修繕引当金▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
退職給付引当金と退職給付費用の違いは何ですか?
退職給付引当金は将来の支払いに備えて積み上げた負債の残高、退職給付費用はその期に計上する費用です。決算で退職給付費用を計上すると、同じ額だけ退職給付引当金が増えます。
賞与引当金は流動負債ですか、固定負債ですか?
流動負債です。翌期に支給する賞与に備える引当金なので、1年以内に取り崩されます。
修繕引当金を超える修繕をしたら、どう処理しますか?
引当金を全額取り崩し、超えた分は修繕費にします。支出に改良が含まれていれば、その部分は修繕費ではなく固定資産に加えます。
洗替法と差額補充法は、どちらで答えればいいですか?
問題文の指示に従います。洗替法の指示なら、戻入と繰入を相殺せず、2本の仕訳を書きます。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
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