税効果会計がなぜ必要なのか、繰延税金資産の仕訳をいくらで書けばいいのかで迷っていませんか。税効果会計は、会計上の利益と税金の計算がずれるときに、そのずれのうち「いずれ解消する時期のずれ」を調整する手続きです。
税金を先に多く払った分は繰延税金資産、後で払う分は繰延税金負債になります。2級で出るのは3パターンで、仕訳は期末と期首の残高の差額で書きます。この記事では3パターンを並べて比べ、財務諸表での表示まで練習問題つきで確認します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記2級 #29・10:31)
10:31【簿記2級】税効果会計の仕訳と考え方|繰延税金資産は差額補充で解く税効果会計はなぜ必要か / 一時差異と永久差異──適用は一時差異だけ▶ YouTubeで見る税効果会計とは?会計の利益と税金の計算がずれる理由
税効果会計とは、会計上の資産・負債の金額と、税金の計算上の金額との差について、法人税等を適切な期間に配分する手続きです。目的は、損益計算書の税引前当期純利益と法人税等を対応させることです。
ずれが生じるのは、会計の「費用」と、税金の計算で差し引ける「損金」の範囲が違うからです。たとえば会計で貸倒引当金を500,000円繰り入れても、税金の計算では一部しか損金と認められないことがあります。認められなかった分は課税所得に加算され、その年の税金が増えます。
課税所得 = 税引前当期純利益 + 損金不算入額など(加算)
- 益金不算入額など(減算)
▶ 動画で確認する(8:18〜 課税所得はどう計算されるか)
認められなかった分も、将来、実際に貸倒れが起きた年などに損金として認められ、その年の税金が減ります。当期に多く払った税金が将来戻ってくるので、当期は税金を前払いした状態です。この前払い分を資産として計上したものが繰延税金資産です。
ポイント
当期に多く払った税金は「前払い」なので繰延税金資産、将来に多く払う税金は「後払い」なので繰延税金負債です。
法人税等の中間納付と決算の流れがあいまいな人は、先に税金の仕訳(租税公課・法人税等・消費税)を確認しておくと読みやすくなります。
一時差異と永久差異|税効果会計を使うのは一時差異だけ
| 差異の種類 | 例 | 税効果会計 |
|---|---|---|
| 一時差異(将来解消する) | 貸倒引当金の繰入限度超過額、減価償却費の償却限度超過額、その他有価証券の評価差額 | 適用する |
| 永久差異(解消しない) | 交際費等の損金不算入額、受取配当金の益金不算入額、罰金 | 適用しない |
永久差異は、何年たっても損金や益金に算入されることがありません。税金の前払いでも後払いでもないので、税効果会計の対象外です。課税所得の計算で加算する項目でも、将来解消するかどうかで区別します。
▶ 動画で確認する(2:23〜 一時差異と永久差異──適用は一時差異だけ)
2級で出る3パターンを並べて比べる
出題区分表では、2級の税効果会計は、引当金・減価償却・その他有価証券に係る一時差異に限られます。繰延税金資産の回収可能性の検討も、2級では範囲外です(日本商工会議所の簿記 出題区分表)。この範囲は、2026年度までの現行版と2027年度版で同じです。代表的な形は次のとおりです。
| パターン | 一時差異の種類 | 計上する科目 | 相手科目 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金の繰入限度超過額 | 将来減算一時差異 | 繰延税金資産 | 法人税等調整額 |
| 減価償却費の償却限度超過額 | 将来減算一時差異 | 繰延税金資産 | 法人税等調整額 |
| その他有価証券の評価差益 | 将来加算一時差異 | 繰延税金負債 | その他有価証券評価差額金 |
| その他有価証券の評価差損 | 将来減算一時差異 | 繰延税金資産 | その他有価証券評価差額金 |
将来減算一時差異は、将来の課税所得を減らす差異です。将来加算一時差異は、将来の課税所得を増やす差異です。2級の3パターンでは、繰延税金負債が出てくるのは、その他有価証券の評価差益のときです。
繰延税金資産(負債)の金額 = 一時差異 × 実効税率
実効税率は、法人税・住民税・事業税をまとめた率で、本試験では問題文で与えられます。この記事では特定の率を示さず、一時差異に実効税率を掛けた結果を「税効果額」として設例に書いておきます。数字はすべて編集部が作成したものです。
例1:×1年度の決算。貸倒引当金の繰入額500,000円のうち120,000円が損金不算入(税効果額36,000円/単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 36,000 | 法人税等調整額 | 36,000 |
例2:×1年度の決算。備品の減価償却費400,000円のうち、税法上の償却限度額を超える100,000円が損金不算入(税効果額30,000円/単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 30,000 | 法人税等調整額 | 30,000 |
例3:×1年度の決算。その他有価証券(取得原価800,000円)の時価が950,000円(評価差額150,000円、税効果額45,000円/単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| その他有価証券 | 150,000 | 繰延税金負債 | 45,000 |
| その他有価証券評価差額金 | 105,000 | ||
例1・例2は損益計算書の費用から生じた差なので、相手科目は法人税等調整額です。例3の評価差額は損益計算書を通らずに純資産へ直接入るので、税効果もその他有価証券評価差額金から直接差し引きます。翌期首には、例3の仕訳を逆にして振り戻します。
評価差損のときは向きが逆になり、繰延税金資産を計上して、その他有価証券評価差額金を借方に書きます。その他有価証券の基本の仕訳は有価証券の仕訳(4分類・評価差額金)で確認できます。
▶ 動画で確認する(6:05〜 その他有価証券の税効果は別扱い)
仕訳は差額補充|期首と期末の残高を比べる
2年目以降は、「期末にあるべき繰延税金資産の残高」から「期首の残高」を引いた差額だけを仕訳します。考え方は、貸倒引当金の差額補充法と同じです。
当期の仕訳の金額 = 期末に必要な残高(期末の一時差異×実効税率)
- 期首の残高
設例(×2年度の決算)
・貸倒引当金の繰入限度超過額:前期末120,000円(税効果額36,000円)→当期末180,000円(税効果額54,000円)
・備品の償却限度超過額の累計:前期末100,000円(税効果額30,000円)→当期末200,000円(税効果額60,000円)
期首の繰延税金資産は36,000+30,000=66,000円です。期末に必要な残高は54,000+60,000=114,000円なので、差額の48,000円を計上します。
×2年度の税効果の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 48,000 | 法人税等調整額 | 48,000 |
解消と発生を分けて考えても、結果は同じです。貸倒引当金は、前期分36,000円の取崩しと当期分54,000円の計上で、差し引き18,000円の増加です。備品は累計の増加分30,000円を加えます。18,000+30,000=48,000円で、差額で1本にした仕訳と一致します。
▶ 動画で確認する(4:11〜 つまずき──仕訳は残高?それとも差額?)
一時差異が解消する年は逆向きの仕訳
例2の備品(取得原価1,200,000円)を、会計上は3年で償却するとします。税法上の償却限度額は毎年300,000円(問題文で与えられる)です。超過額の累計は次のように動きます。
| 年度 | 会計上の減価償却費 | 税法上の償却限度額 | 超過額の累計(税効果額) |
|---|---|---|---|
| ×1年度 | 400,000 | 300,000 | 100,000(30,000) |
| ×2年度 | 400,000 | 300,000 | 200,000(60,000) |
| ×3年度 | 400,000 | 300,000 | 300,000(90,000) |
| ×4年度 | 0 | 300,000 | 0(0) |
×4年度は会計上の費用がゼロでも、税金の計算では300,000円が損金になります。前払いしていた税金が戻る年なので、繰延税金資産90,000円を取り崩します。
×4年度の税効果の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 法人税等調整額 | 90,000 | 繰延税金資産 | 90,000 |
4年間の合計で比べてみます。会計上の減価償却費は400,000×3=1,200,000円、税法上の損金は300,000×4=1,200,000円で、同じ金額です。一時差異は、時期がずれているだけだとわかります。
法人税等調整額の向きと、財務諸表での表示
| 状況 | 繰延税金資産 | 法人税等調整額 | 法人税等の合計 |
|---|---|---|---|
| 一時差異が増えた | 増加(借方) | 貸方 | 減る |
| 一時差異が減った・解消した | 減少(貸方) | 借方 | 増える |
法人税等調整額は、法人税等の金額を調整する勘定です。貸方に出れば法人税等から差し引き、借方に出れば法人税等に加えます。繰延税金資産の反対側に書くと決めておくと、向きを間違えません。
×2年度の損益計算書は次のようになります。法人税、住民税及び事業税の金額は、問題文で与えられたものとします。
| 表示科目 | 金額(円) |
|---|---|
| 税引前当期純利益 | 2,000,000 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 648,000 |
| 法人税等調整額 | △48,000 |
| 法人税等合計 | 600,000 |
| 当期純利益 | 1,400,000 |
法人税等調整額は貸方48,000円なので、法人税、住民税及び事業税から差し引きます。当期純利益は2,000,000-600,000=1,400,000円です。この法人税等合計を税引前当期純利益に対応させることが、税効果会計の目的でした。
貸借対照表では相殺して固定項目に表示
繰延税金資産は固定資産の「投資その他の資産」に、繰延税金負債は固定負債に表示します。同じ会社の繰延税金資産と繰延税金負債は、相殺して純額で表示します。
たとえば×2年度末に、繰延税金資産114,000円があるとします。例3のその他有価証券の時価も950,000円なら、繰延税金負債45,000円が生じます。相殺して、繰延税金資産69,000円を投資その他の資産に表示します。評価差額金105,000円は、純資産の部の評価・換算差額等に表示します。
▶ 動画で確認する(7:48〜 財務諸表での表示──仕訳が合っても位置で失点)
よくある間違い|期末残高をそのまま仕訳していませんか?
- 期末の残高をそのまま仕訳する:「一時差異×実効税率=仕訳の金額」と覚えているためです。これは期末残高の求め方で、仕訳は期首残高との差額です。前期の分と二重に計上しないよう、期首残高を先に書き出します。
- その他有価証券の税効果で法人税等調整額を使う:3パターンを同じ形で覚えているためです。評価差額は損益計算書を通らないので、相手科目はその他有価証券評価差額金です。
- 交際費などの永久差異にも税効果を適用する:課税所得の計算で加算する項目は、全部が対象だと考えてしまうためです。将来解消するかどうかで判定します。
- 法人税等調整額の向きを逆にする:勘定の名前から向きを想像しにくいためです。繰延税金資産が増えたら貸方、減ったら借方です。
- 2年目のその他有価証券を前期末の時価と比べる:前期末の評価替えが残っていると考えるためです。翌期首に振り戻すので、比べる相手は毎期、取得原価です。
練習問題で確認する
練習問題1
次のうち、税効果会計を適用するものをすべて選び、繰延税金資産と繰延税金負債のどちらが生じるかを答えなさい。
ア 貸倒引当金の繰入限度超過額
イ 交際費の損金不算入額
ウ 減価償却費の償却限度超過額
エ その他有価証券の評価差益
オ 罰金の損金不算入額
練習問題1の解答と解説を見る
適用するのはア・ウ・エです。アとウは将来減算一時差異なので繰延税金資産、エは将来加算一時差異なので繰延税金負債が生じます。イとオは永久差異で、将来も損金に算入されないため適用しません。
練習問題2
期首の繰延税金資産は84,000円だった。当期末の将来減算一時差異に実効税率を掛けた額は60,000円である。当期の税効果の仕訳を答えなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 法人税等調整額 | 24,000 | 繰延税金資産 | 24,000 |
期末に必要な残高60,000円-期首残高84,000円=-24,000円なので、繰延税金資産を24,000円減らします。法人税等調整額は借方になり、法人税等の合計が増えます。
練習問題3
その他有価証券(取得原価1,500,000円)の決算日の時価は1,380,000円だった。評価差額に実効税率を掛けた税効果額は36,000円である。全部純資産直入法による決算の仕訳を答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
練習問題3の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 36,000 | その他有価証券 | 120,000 |
| その他有価証券評価差額金 | 84,000 | ||
評価差損は1,500,000-1,380,000=120,000円です。税効果額36,000円は繰延税金資産、残りの84,000円がその他有価証券評価差額金(借方)です。法人税等調整額は使いません。
まとめ
- 税効果会計は、会計と税金の計算の「時期のずれ」(一時差異)を調整する手続き。永久差異は対象外
- 将来の税金を減らす差異は繰延税金資産(税金の前払い)、将来の税金を増やす差異は繰延税金負債
- 2級は引当金・減価償却・その他有価証券の一時差異に限られ、回収可能性の検討は範囲外。その他有価証券の相手科目は評価差額金
- 仕訳は「期末に必要な残高-期首残高」の差額補充。実効税率は問題文で与えられた率を使う
- 法人税等調整額は繰延税金資産の反対側。貸借対照表では相殺して固定項目に表示
次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から法人税等と税効果会計の講義を続けて見ておきましょう。第3問の決算整理で、税金の処理が一続きになります。引当金の仕訳は引当金の仕訳(2級)で整理しています。次の論点は本支店会計の解き方です。
動画で学ぶ|法人税等と税効果会計の講義
この記事の講義(簿記2級 #29・10:31)
10:31【簿記2級】税効果会計の仕訳と考え方|繰延税金資産は差額補充で解く税効果会計はなぜ必要か / 一時差異と永久差異──適用は一時差異だけ / つまずき──仕訳は残高?それとも差額? / その他有価証券の税効果は別扱い▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
繰延税金資産とは何ですか?
将来の税金を減らす効果を、資産として計上したものです。当期に多く払った税金が将来戻ってくるので、「税金の前払い」と考えます。2級では、貸倒引当金や減価償却費の損金不算入額、その他有価証券の評価差損から生じます。
法人税等調整額は借方と貸方のどちらに出ますか?
繰延税金資産が増えるときは貸方、減るときは借方です。貸方なら法人税、住民税及び事業税から差し引き、借方なら加えて、法人税等の合計を求めます。
実効税率は何%で計算すればいいですか?
問題文で与えられた率を使います。税率は税制や会社の状況によって変わるため、この記事では特定の率を示していません。実務で個別の税務判断が必要なときは、税理士などの専門家に確認してください。
繰延税金資産と繰延税金負債は相殺しますか?
同じ会社の分は相殺して、純額で表示します。残った金額が資産なら投資その他の資産に、負債なら固定負債に表示します。
税効果会計は2027年度以降も2級で学びますか?
学びます。2027年度版の出題区分表でも、2級の税効果会計は引当金・減価償却・その他有価証券に係る一時差異に限る形で残っています。2級の勘定科目表にも「繰延税金資産」「繰延税金負債」が含まれています。2027年度の改定の全体は2027年度の出題区分表改定のまとめで整理しています。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
税金に関する記述は簿記の試験学習のための一般的な説明です。実際の税務上の取扱いは個別の事情により異なるため、税務署または税理士にご確認ください。
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