株主資本等変動計算書の問題で、配当の行が埋まらない、列の合計が合わないと手が止まっていませんか。解き方の軸は、表を直接埋めようとせず、純資産が動いた取引をいったん仕訳にしてから列に移すことです。
配当のときの準備金の積立額は「配当額の10分の1」と「資本金の4分の1から準備金の合計を引いた額」の小さいほうです。この記事では1つの設例で仕訳から表の完成まで通し、縦と横の検算、合併の行の書き方まで確認します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記2級 #27・10:03)
10:03【簿記2級】株主資本等変動計算書の解き方|迷ったら仕訳に戻る・合併ののれん任意積立金と剰余金の処分 / 損失の処理──繰越利益剰余金が借方残に▶ YouTubeで見る株主資本等変動計算書とは?縦と横で読む表
株主資本等変動計算書とは、貸借対照表の純資産の部の各項目が、1年間でどんな理由でいくら増減したかを示す財務諸表です。
横(列)には資本金や繰越利益剰余金などの純資産の科目が並び、縦(行)には当期首残高・当期変動額・当期末残高が並びます。どの列も「当期首残高+当期変動額合計=当期末残高」になります。
| 行 | 書く内容 | 金額の出どころ |
|---|---|---|
| 当期首残高 | 前期末の純資産の各科目の残高 | 前期の貸借対照表 |
| 当期変動額 | 新株の発行、剰余金の配当、当期純利益など、事由ごとの増減 | 期中の仕訳 |
| 当期末残高 | 当期首残高+当期変動額合計 | 当期の貸借対照表と一致 |
出題区分表では、2級の株主資本等変動計算書は、株主資本とその他有価証券評価差額金の増減に限られています(日本商工会議所の簿記 出題区分表)。この範囲は、2026年度までの現行版と2027年度版で同じです。
ポイント
表に出てくるのは、純資産が動いた取引だけです。たとえば配当金を支払う取引(未払配当金/当座預金)は、負債と資産が減るだけなので表には出てきません。
▶ 動画で確認する(3:28〜 株主資本等変動計算書の構造)
準備金の積立額は「小さいほう」|計算の手順と3つのケース
剰余金を配当するときは、会社法のルールで準備金を積み立てます。積立額は、次の2つの金額を比べて小さいほうです。
積立額 = ①配当額×1/10 と
②資本金×1/4 -(資本準備金+利益準備金)の小さいほう
①は配当のたびに積み立てる基本の額、②は準備金の合計が資本金の4分の1に届くまでの残り枠です。準備金の合計がすでに資本金の4分の1に達していれば、積立額はゼロです。3つのケースで比べてみます。
| 項目(円) | ケースA | ケースB | ケースC |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 16,000,000 | 20,000,000 | 12,000,000 |
| 資本準備金+利益準備金 | 2,500,000 | 4,800,000 | 3,000,000 |
| ②残り枠 | 1,500,000 | 200,000 | 0 |
| 配当額 | 2,400,000 | 3,000,000 | 1,000,000 |
| ①配当額×1/10 | 240,000 | 300,000 | 100,000 |
| 積立額(小さいほう) | 240,000 | 200,000 | 0 |
ケースAの②は16,000,000×1/4-2,500,000=1,500,000円です。①の240,000円のほうが小さいので、積立額は240,000円です。ケースBは枠が200,000円しか残っていないので、①の300,000円ではなく200,000円です。
積み立てる準備金は、配当の財源で決まる
繰越利益剰余金から配当するときは利益準備金を、その他資本剰余金から配当するときは資本準備金を積み立てます。ただし、②の枠を計算するときは、どちらの場合も資本準備金と利益準備金の合計を使います。
例:その他資本剰余金を財源に800,000円の配当を決議(準備金の枠は十分にある/単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| その他資本剰余金 | 880,000 | 未払配当金 | 800,000 |
| 資本準備金 | 80,000 | ||
計算に使う資本金と準備金は、配当を決議した時点の残高です。配当より後に増資があっても、その分は含めません。
▶ 動画で確認する(7:28〜 積立額の計算実演──2パターン)
設例で解く|仕訳にしてから表に移す4ステップ
1つの設例で、表を最後まで埋めます。数字はすべて編集部が作成したものです。
設例(当期は×1年4月1日〜×2年3月31日)
当期首残高:資本金20,000,000円、資本準備金3,200,000円、その他資本剰余金500,000円、利益準備金1,600,000円、別途積立金900,000円、繰越利益剰余金4,200,000円
(1) 6月の株主総会で、繰越利益剰余金を財源とする配当3,000,000円と、別途積立金150,000円の積立てを決議した。利益準備金は会社法の規定どおり積み立てる。
(2) 9月に新株100株を1株50,000円で発行し、払込金は当座預金とした。資本金は会社法が認める最低額とする。
(3) 決算で当期純利益2,600,000円を計上した。
ステップ1・2:期首残高を写し、取引を仕訳にする
当期首残高は、そのまま表の1行目に写します。次に(1)〜(3)を仕訳にします。(1)の利益準備金は、①が3,000,000×1/10=300,000円です。②は20,000,000×1/4-(3,200,000+1,600,000)=200,000円です。小さいほうの200,000円を積み立てます。
(1) 配当と積立ての決議(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 3,350,000 | 未払配当金 | 3,000,000 |
| 利益準備金 | 200,000 | ||
| 別途積立金 | 150,000 | ||
(2) 新株の発行(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 5,000,000 | 資本金 | 2,500,000 |
| 資本準備金 | 2,500,000 | ||
(3) 当期純利益の振替(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 損益 | 2,600,000 | 繰越利益剰余金 | 2,600,000 |
(2)は、払込金額5,000,000円の2分の1までを資本金にしないことができます。最低額は2,500,000円で、残りの2,500,000円は資本準備金です。
ステップ3:純資産の科目だけを列に移す
仕訳のうち、純資産の科目の金額だけを該当する列に移します。スマートフォンで見やすいように、表を「資本金・資本剰余金」と「利益剰余金」の2つに分けています(単位:円、△は減少)。
| 事由 | 資本金 | 資本準備金 | その他資本剰余金 |
|---|---|---|---|
| 当期首残高 | 20,000,000 | 3,200,000 | 500,000 |
| 剰余金の配当 | ― | ― | ― |
| 別途積立金の積立て | ― | ― | ― |
| 新株の発行 | 2,500,000 | 2,500,000 | ― |
| 当期純利益 | ― | ― | ― |
| 当期変動額合計 | 2,500,000 | 2,500,000 | 0 |
| 当期末残高 | 22,500,000 | 5,700,000 | 500,000 |
| 事由 | 利益準備金 | 別途積立金 | 繰越利益剰余金 |
|---|---|---|---|
| 当期首残高 | 1,600,000 | 900,000 | 4,200,000 |
| 剰余金の配当 | 200,000 | ― | △3,200,000 |
| 別途積立金の積立て | ― | 150,000 | △150,000 |
| 新株の発行 | ― | ― | ― |
| 当期純利益 | ― | ― | 2,600,000 |
| 当期変動額合計 | 200,000 | 150,000 | △750,000 |
| 当期末残高 | 1,800,000 | 1,050,000 | 3,450,000 |
剰余金の配当の行で、繰越利益剰余金は配当額3,000,000円ではなく3,200,000円減っています。配当と一緒に積み立てた利益準備金200,000円も、繰越利益剰余金から移るからです。表の数字が腑に落ちないときは、仕訳(1)の借方に戻ると理由がわかります。答案用紙に「利益準備金の積立て」などの行が別にあるときは、行の名前に合わせて分けて書きます。
▶ 動画で確認する(5:27〜 配当200万なのに、表では220万減る?)
ステップ4:縦と横で検算する
縦の検算は、各列で「当期首残高+当期変動額合計=当期末残高」を確かめます。横の検算は、各行の合計(株主資本合計の列)が取引の実態と合うかを見ます。
| 行 | 株主資本合計の増減 | 実態との照合 |
|---|---|---|
| 剰余金の配当 | △3,000,000 | 会社の外に出ていくのは配当額だけ |
| 別途積立金の積立て | 0 | 純資産の中で科目を移すだけ |
| 新株の発行 | 5,000,000 | 払込金額と一致 |
| 当期純利益 | 2,600,000 | 利益の分だけ増える |
株主資本合計は、当期首30,400,000円+当期変動額4,600,000円=当期末35,000,000円です。当期末の6つの列を足しても35,000,000円になり、縦と横が一致しました。
株式の発行と吸収合併はどの列に入る?
株式の発行は「最低でも2分の1が資本金」
株式を発行したときは、払込金額の全額を資本金にするのが原則です。例外として、払込金額の2分の1を超えない額は資本金にせず、資本準備金にできます。問題文の「会社法が認める最低額を資本金とする」は、この例外を使う指示です。
| 問題文の指示(払込金額5,000,000円) | 資本金 | 資本準備金 |
|---|---|---|
| 原則(全額を資本金とする) | 5,000,000 | 0 |
| 会社法が認める最低額を資本金とする | 2,500,000 | 2,500,000 |
どちらの場合も、株主資本合計の増加は払込金額の5,000,000円で同じです。変わるのは列の内訳だけです。
▶ 動画で確認する(2:08〜 設立時の株式発行──原則と容認)
吸収合併では、のれんは表に出てこない
吸収合併では、消滅する会社の資産と負債を時価で受け入れ、対価として株式を交付します。交付した株式の時価(取得原価)が、受け入れた純資産の時価を上回る分がのれんです。
例:B社を吸収合併。資産の時価9,000,000円、負債の時価4,000,000円。交付した株式の時価6,000,000円のうち、資本金3,000,000円、資本準備金2,000,000円、その他資本剰余金1,000,000円とした(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 諸資産 | 9,000,000 | 諸負債 | 4,000,000 |
| のれん | 1,000,000 | 資本金 | 3,000,000 |
| 資本準備金 | 2,000,000 | ||
| その他資本剰余金 | 1,000,000 | ||
変動計算書では「吸収合併」の行に、資本金・資本準備金・その他資本剰余金の増加額を書きます。株主資本合計の増加は6,000,000円で、交付した株式の時価と一致します。
のれん1,000,000円は資産なので、変動計算書には出てきません。貸借対照表の無形固定資産に表示します。逆に、交付した株式の時価が純資産の時価より小さいときは、差額が負ののれん発生益(特別利益)です。この利益は当期純利益に含まれ、「当期純利益」の行を通して繰越利益剰余金を増やします。
のれんの考え方は連結会計でも使います。連結会計のしくみ(開始仕訳・のれん・非支配株主持分)で続けて確認できます。
▶ 動画で確認する(7:19〜 合併の仕訳と、のれんの符号)
よくある間違いと、その理由
- 積立額を配当額の10分の1だけで答える:3級で「配当額の10分の1を利益準備金に」と覚えたまま、上限を確かめないためです。2級では毎回、②の残り枠と比べます。
- 残り枠の計算で利益準備金だけを引く:積み立てるのが利益準備金なので、引くのも利益準備金だけと考えてしまいます。上限は資本準備金と利益準備金の合計で判定します。
- 配当の行で繰越利益剰余金を配当額だけ減らす:「配当額=減る額」と思い込むためです。積み立てた準備金の分も繰越利益剰余金から移るので、配当額+積立額が減ります。
- 増資後の資本金で残り枠を計算する:表の当期末残高の資本金を使ってしまうためです。配当を決議した時点の資本金で計算します。
- 合併で、消滅会社の帳簿価額や資本金をそのまま引き継ぐ:合併を「2社の帳簿を足すこと」と考えるためです。受け入れる資産・負債は時価、増える株主資本は交付した株式の時価で決まります。
練習問題|積立額・変動計算書・合併の3問
練習問題1
株主総会で、繰越利益剰余金を財源とする配当1,800,000円を決議した。決議時点の資本金は24,000,000円、資本準備金は3,500,000円、利益準備金は2,380,000円である。利益準備金の積立額を計算し、決議時の仕訳を答えなさい。
練習問題1の解答と解説を見る
練習問題1の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 1,920,000 | 未払配当金 | 1,800,000 |
| 利益準備金 | 120,000 | ||
①は1,800,000×1/10=180,000円です。②は24,000,000×1/4=6,000,000円から、準備金の合計5,880,000円を引いた120,000円です。小さいほうの120,000円が積立額です。
練習問題2
繰越利益剰余金の当期首残高は2,500,000円だった。当期中に、配当1,000,000円(利益準備金の積立て100,000円)と別途積立金50,000円の積立てを行った。当期純利益は900,000円だった。変動計算書の繰越利益剰余金の列について、当期変動額合計と当期末残高を答えなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
当期変動額合計は△250,000円、当期末残高は2,250,000円です。配当の行は、配当額と積立額を合わせて△1,100,000円です。別途積立金の積立ての行は△50,000円、当期純利益の行は900,000円です。合計は△250,000円で、当期末残高は2,500,000-250,000=2,250,000円です。
練習問題3
C社を吸収合併し、資産(時価11,000,000円)と負債(時価4,500,000円)を受け入れた。交付した株式の時価は7,200,000円で、資本金4,000,000円、資本準備金3,200,000円とした。合併の仕訳と、変動計算書の「吸収合併」の行の株主資本合計の金額を答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
練習問題3の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 諸資産 | 11,000,000 | 諸負債 | 4,500,000 |
| のれん | 700,000 | 資本金 | 4,000,000 |
| 資本準備金 | 3,200,000 | ||
受け入れた純資産の時価は11,000,000-4,500,000=6,500,000円です。交付した株式の時価7,200,000円との差額700,000円がのれんです。「吸収合併」の行の株主資本合計は7,200,000円(資本金4,000,000円+資本準備金3,200,000円)です。のれんは表には出てきません。
まとめ
- 株主資本等変動計算書は、純資産の増減を事由ごとに集めた表。迷ったら仕訳に戻り、純資産の科目だけを列に移す
- 準備金の積立額は「配当額×1/10」と「資本金×1/4-(資本準備金+利益準備金)」の小さいほう。資本金と準備金は決議時点の残高を使う
- 配当の行では、繰越利益剰余金が配当額+積立額だけ減る。株主資本合計の減少は配当額だけ
- 新株の発行は最低でも2分の1が資本金。合併は交付した株式の時価だけ株主資本が増え、のれんは表に出ない
次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から株式会社会計の前編・後編の講義を続けて見ておきましょう。第2問で変動計算書が出ても手が止まりにくくなります。次の論点は税効果会計のしくみと仕訳です。その他有価証券評価差額金の動きは有価証券の仕訳(4分類と評価差額金)で確認できます。2級全体の進め方は無料講義66本の使い方にまとめています。
動画で学ぶ|株主資本等変動計算書と配当の講義
この記事の講義(簿記2級 #27・10:03)
10:03【簿記2級】株主資本等変動計算書の解き方|迷ったら仕訳に戻る・合併ののれん任意積立金と剰余金の処分 / 損失の処理──繰越利益剰余金が借方残に / 作成例──×1年4月1日から×2年3月31日 / 配当200万なのに、表では220万減る?▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
利益準備金の積立額はどうやって計算しますか?
「配当額の10分の1」と「資本金の4分の1から資本準備金と利益準備金の合計を引いた額」を比べた、小さいほうです。資本金と準備金は、配当を決議した時点の残高を使います。準備金の合計がすでに資本金の4分の1に達していれば、積立額はゼロです。
資本準備金と利益準備金の違いは何ですか?
資本準備金は株主が払い込んだ元手から、利益準備金は会社が稼いだ利益から積み立てる準備金です。配当のときは、その他資本剰余金から配当すれば資本準備金、繰越利益剰余金から配当すれば利益準備金を積み立てます。上限の判定は、両方の合計で行います。
配当金の支払いは株主資本等変動計算書に書きますか?
書きません。支払いは未払配当金(負債)と当座預金(資産)が減る取引で、純資産は動かないためです。表に書くのは、配当を決議したときの「剰余金の配当」の行です。
その他有価証券評価差額金はどの行に書きますか?
「株主資本以外の項目の当期変動額(純額)」の行に、1年間の増減をまとめて純額で書きます。株主資本の列のように事由ごとに分けないのが特徴です。
株主資本等変動計算書は2027年度の出題区分表の改定で変わりますか?
変わりません。2027年度版の出題区分表でも、2級の変動計算書は株主資本とその他有価証券評価差額金の増減に限られます。2027年度の改定で示された2級の変更点は、手形関係の勘定科目の削除、売掛債権の譲渡の追加、リースの会計処理の変更です。詳しくは2027年度の出題区分表改定のまとめで整理しています。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
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