有価証券の仕訳は、分類ごとに科目も期末評価も違うので、どこから手をつければいいか迷いやすい論点です。解き方の順番は決まっていて、まず保有目的で4つに分類し、次に「取得・売却・期末評価」の型に当てはめます。この記事では、4分類の判定手順と期末評価の一覧表、付随費用・平均単価・端数利息の計算を整理します。さらに償却原価法(定額法)と、その他有価証券の全部純資産直入法・翌期首の振り戻しまで、検算つきの設例で確認します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記2級 #10・9:48)
9:48【簿記2級】有価証券の4分類と端数利息の解き方|3つを確定、残りは全部その他保有目的で4つに分ける / 「その他」は消去法で決まる▶ YouTubeで見る有価証券の4分類はどう判定する?
有価証券は、株式や社債・国債などの債券のことです。2級では、同じ株式でも「何のために持っているか」で4つに分け、分類ごとに処理を変えます。判定は、特徴のはっきりした3つを先に確定し、どれにも当たらないものをその他有価証券にします。
| 分類(判定の順) | 問題文の手がかり | 貸借対照表の表示 |
|---|---|---|
| ① 売買目的有価証券 | 「売買目的で」「時価の変動で利益を得るため」 | 有価証券(流動資産) |
| ② 満期保有目的債券 | 「満期まで保有する目的で」。社債・国債などの債券だけで、株式は当たらない | 投資有価証券(固定資産)。満期まで1年以内なら有価証券(流動資産) |
| ③ 子会社株式・関連会社株式 | 持株割合。原則として議決権の過半数なら子会社、20%以上なら関連会社 | 関係会社株式(固定資産) |
| ④ その他有価証券 | ①〜③のどれにも当たらないもの(「長期保有目的」「取引先との関係維持のため」など) | 投資有価証券(固定資産) |
その他有価証券には、決まった手がかりの言葉がありません。そのため「長期保有だからその他」と覚えるより、①〜③に当てはまらないことを確かめて決めるほうが迷いません。
▶ 動画で確認する(2:14〜 「その他」は消去法で決まる)
分類ごとの期末評価の一覧表
| 分類 | 期末の評価額 | 評価差額の行き先 | 翌期首の振り戻し |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 時価 | 有価証券評価損益(損益計算書) | 切放法ではしない・洗替法ではする(問題文の指示に従う) |
| 満期保有目的債券 | 取得原価。差額が金利の調整と認められれば償却原価 | 償却額は有価証券利息 | しない(毎期積み上げる) |
| 子会社株式・関連会社株式 | 取得原価 | なし | なし |
| その他有価証券 | 時価 | その他有価証券評価差額金(純資産) | 必ずする |
ポイント
評価差額の行き先は3つだけです。売買目的は損益、満期保有の償却額は有価証券利息、その他有価証券は純資産。子会社株式・関連会社株式は評価替えしません。
取得と売却|付随費用を含め、平均単価で売る
有価証券の取得原価は、購入代価に買入手数料などの付随費用を足した金額です。同じ銘柄を何回かに分けて買ったときは、平均原価法で1株あたりの帳簿価額を出し直し、売却時はその単価で帳簿価額を計算します。
| 取引(売買目的のA社株式) | 計算 | 帳簿価額(円) |
|---|---|---|
| 1回目:1,000株を1株820円で購入、手数料12,000円 | 820,000+12,000 | 832,000(1株832円) |
| 2回目:600株を1株850円で購入、手数料2,000円 | 510,000+2,000 | 512,000 |
| 合計1,600株の平均単価 | 1,344,000÷1,600株 | 1株840円 |
| 900株を1株870円で売却 | 帳簿価額 840円×900株 | 756,000 |
例1:A社株式900株を1株870円で売却し、代金は普通預金に入金(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 783,000 | 売買目的有価証券 | 756,000 |
| 有価証券売却益 | 27,000 | ||
残りは700株×840円=588,000円です。期末の時価が1株830円なら、時価581,000円との差額7,000円を「有価証券評価損/売買目的有価証券」で計上します。有価証券評価損は損益計算書の営業外費用です。売却の帳簿価額に1回目の単価832円を使うと、売却益が7,200円ずれるので注意してください。
端数利息の仕訳|なぜ買い手は借方に利息を書くのか
社債の利息は、利払日にその時点の持ち主へ半年分まとめて支払われます。利払日の間に売買すると、前の利払日から売買日までは売り手が持っていたのに、次の利払日の利息は全額が買い手に入ります。そこで売買のときに、その期間の利息(端数利息)を買い手が売り手に払って調整します。
設例
8月12日、売買目的で額面2,000,000円の社債(年利率1.825%、利払日は6月末と12月末)を額面100円につき98.50円で購入し、端数利息とともに普通預金で支払った。端数利息は、前の利払日の翌日(7月1日)から購入日までの43日分(両端を含む)を、1年365日の日割りで計算する。
取得原価は2,000,000×98.50÷100=1,970,000円、端数利息は2,000,000×1.825%×43÷365=4,300円です。端数利息は取得原価に含めず、有価証券利息の借方に書きます。
例2:端数利息つきで社債を購入(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 1,970,000 | 普通預金 | 1,974,300 |
| 有価証券利息 | 4,300 | ||
有価証券利息は収益の科目なのに借方に来るのは、これが「次の利払日に受け取る利息のうち、売り手の分を先に払った」ものだからです。12月末の利払日には半年分の18,250円(2,000,000×1.825%×6÷12)を受け取り、貸方に計上します。差し引き13,950円が、当社の利息収入として残ります。売り手の側は逆に、端数利息4,300円を有価証券利息の貸方に書きます。
▶ 動画で確認する(4:42〜 例題──端数利息つきで社債を買う)
償却原価法(定額法)|差額を毎期同じ額ずつ利息にする
満期保有目的債券を額面より安く(または高く)買ったとき、その差額が金利の調整と認められるなら、償却原価法で満期までの各期に配分します。2級で出るのは、毎期同じ額を配分する定額法です。
当期の償却額 =(額面金額 - 取得価額)× 当期の保有月数 ÷ 取得日から満期日までの月数
期首(4月1日)に、額面3,000,000円・満期まで5年の社債を額面100円につき97円(2,910,000円)で取得した場合で確認します。差額は90,000円なので、1年分の償却額は90,000×12÷60=18,000円です。
例3:決算時の償却原価法(毎期同じ仕訳/単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 満期保有目的債券 | 18,000 | 有価証券利息 | 18,000 |
| 年度 | 期首の帳簿価額(円) | 償却額(円) | 期末の帳簿価額(円) |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 2,910,000 | 18,000 | 2,928,000 |
| 2年目 | 2,928,000 | 18,000 | 2,946,000 |
| 3年目 | 2,946,000 | 18,000 | 2,964,000 |
| 4年目 | 2,964,000 | 18,000 | 2,982,000 |
| 5年目 | 2,982,000 | 18,000 | 3,000,000 |
5年目の期末に帳簿価額がちょうど額面3,000,000円に着くことが検算になります。償還日には「当座預金3,000,000/満期保有目的債券3,000,000」で差額は出ません。償却額の相手が有価証券利息になるのは、安く買えた分が実質的に利息の上乗せだからです。なお、利払日と決算日がずれるときは、決算日までの利息を見越し計上します(経過勘定の覚え方参照)。
▶ 動画で確認する(2:24〜 償却原価法の一巡:取得→償却→償還)
その他有価証券|全部純資産直入法と翌期首の振り戻し
その他有価証券は期末に時価で評価します。ただし、すぐに売るつもりはないので、評価差額は損益計算書を通さず、純資産の「その他有価証券評価差額金」に直接計上します。これが全部純資産直入法です。翌期首には必ず逆仕訳で取得原価に戻します。
| 時点(C社株式・取得原価600,000円) | 時価(円) | 仕訳(単位:円) |
|---|---|---|
| 1年目の期末 | 650,000 | その他有価証券50,000/その他有価証券評価差額金50,000 |
| 2年目の期首 | - | その他有価証券評価差額金50,000/その他有価証券50,000(振り戻し) |
| 2年目の期末 | 580,000 | その他有価証券評価差額金20,000/その他有価証券20,000 |
2年目の期末は、前期末の時価650,000円ではなく、振り戻したあとの取得原価600,000円と比べます。貸借対照表には投資有価証券580,000円、純資産の部の評価・換算差額等にその他有価証券評価差額金−20,000円が載ります。
税効果会計を適用する指示がある場合は、評価差額に問題文の実効税率を掛けた額を繰延税金負債(評価差損なら繰延税金資産)とします。残りが評価差額金です。詳しくは税効果会計の仕訳の記事で解説しています。
よくある間違いと、なぜ間違えるか
- 端数利息を取得原価に含める:支払った総額がそのまま取得原価に見えるためです。端数利息は利息の精算なので、有価証券利息として分けます。
- 売却の帳簿価額に最初の購入単価を使う:購入の記録を1回目から読むためです。追加購入があれば平均単価を出し直してから売却を処理します。
- 償却額の相手を有価証券評価益にする:帳簿価額が増えるので評価益に見えるためです。差額は金利の調整なので有価証券利息にします。
- その他有価証券の2年目を前期末の時価と比べる:振り戻しを忘れて考えるためです。C社株式なら、2年目の期末の差額は650,000円と比べた−70,000円ではなく、取得原価600,000円と比べた−20,000円です。
- 子会社株式を時価で評価替えする:ほかの株式と同じ扱いだと思い込むためです。子会社株式・関連会社株式は取得原価のまま据え置きます。
練習問題で確認する
練習問題1
売買目的で保有している額面1,000,000円の社債(帳簿価額982,000円、年利率2.19%、利払日は3月末と9月末)を、11月20日に額面100円につき98.60円で売却し、端数利息とともに普通預金に入金された。端数利息は10月1日から11月20日までの51日分(1年365日)で計算する。仕訳を答えなさい。
練習問題1の解答と解説を見る
練習問題1の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 989,060 | 売買目的有価証券 | 982,000 |
| 有価証券売却益 | 4,000 | ||
| 有価証券利息 | 3,060 | ||
売却価額は1,000,000×98.60÷100=986,000円で、帳簿価額982,000円との差額4,000円が売却益です。端数利息は1,000,000×2.19%×51÷365=3,060円で、売り手なので有価証券利息の貸方に書きます。入金額は986,000+3,060=989,060円です。
練習問題2
7月1日に、満期保有目的で額面2,000,000円の社債を額面100円につき98.80円で取得した。満期は取得日から4年後で、差額は金利の調整と認められる。決算日(3月31日)の償却原価法(定額法)の仕訳と、期末の帳簿価額を答えなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 満期保有目的債券 | 4,500 | 有価証券利息 | 4,500 |
取得価額は2,000,000×98.80÷100=1,976,000円、差額は24,000円です。満期までは48か月、当期の保有は7月から3月までの9か月なので、償却額は24,000×9÷48=4,500円。期末の帳簿価額は1,976,000+4,500=1,980,500円です。
練習問題3
その他有価証券として保有するD社株式(取得原価450,000円)は、前期末に時価470,000円で評価替えしている。当期首の仕訳と、当期末(時価440,000円)の仕訳を答えなさい。税効果会計は考えない。
練習問題3の解答と解説を見る
当期首の振り戻し(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 20,000 | その他有価証券 | 20,000 |
当期末の評価替え(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 10,000 | その他有価証券 | 10,000 |
期首に前期末の評価差額20,000円(470,000−450,000)を戻し、帳簿価額を取得原価450,000円にそろえます。期末は440,000−450,000=−10,000円なので、評価差額金を借方に10,000円計上します。前期末の時価470,000円と比べて30,000円としないことがポイントです。
まとめ
- 分類は、売買目的・満期保有目的・子会社株式と関連会社株式の3つを先に確定し、残りをその他有価証券にする
- 取得原価は購入代価+付随費用。追加購入したら平均単価を出し直し、売却の帳簿価額はその単価で計算する
- 端数利息は日割りで計算し、取得原価に含めない。買い手は有価証券利息の借方、売り手は貸方
- 償却原価法(定額法)は差額を月数で按分し、毎期「満期保有目的債券/有価証券利息」。満期に額面へ着く
- その他有価証券の評価差額は純資産へ直接計上し、翌期首に必ず振り戻す。比べる相手はいつも取得原価
次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から有価証券の前編・後編を続けて見て、端数利息と償却原価法の計算を1問ずつ解いておきましょう。子会社株式は連結会計で再び登場するので、連結会計の開始仕訳とのれんにつながります。講義を見る順番は簿記2級の無料講義66本の使い方で整理しています。
動画で学ぶ|有価証券の講義
この記事の講義(簿記2級 #10・9:48)
9:48【簿記2級】有価証券の4分類と端数利息の解き方|3つを確定、残りは全部その他保有目的で4つに分ける / 「その他」は消去法で決まる / 端数利息は日割りで計算する / 収益なのに借方に立つ利息▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
その他有価証券と売買目的有価証券の違いは何ですか?
違いは保有目的と、評価差額の行き先です。売買目的有価証券は時価の変動で利益を得るために持つもので、評価差額は損益計算書に計上します。その他有価証券はそれ以外の目的で持つもので、評価差額は純資産に直接計上し、翌期首に振り戻します。
端数利息は取得原価に含めますか?
含めません。端数利息は、前の利払日から売買日までの利息を売り手と買い手で精算するものなので、有価証券利息として処理します。買い手は借方、売り手は貸方に書きます。
償却原価法の償却額はどの勘定科目で処理しますか?
有価証券利息です。額面と取得価額の差額は金利の調整と考えるので、利息として各期に配分します。借方は満期保有目的債券で、帳簿価額が満期に向けて額面に近づいていきます。
その他有価証券評価差額金は翌期首にどうしますか?
前期末の評価替えの逆仕訳をして、帳簿価額を取得原価に戻します。そのため、当期末の評価差額は、前期末の時価ではなく取得原価と比べて計算します。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
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