訂正仕訳は、どこをどう直すかを頭の中だけで考えると迷います。やることは3つだけです。①誤った仕訳の逆仕訳で取り消す、②正しい仕訳を書く、③2つを合わせて同じ勘定科目を相殺する。この順に進めれば、どんな誤りでも同じ手順で解けます。
この記事では、科目の誤り・金額の誤り・貸借逆・記帳漏れ・二重計上の5パターンを検算つきの例題で確認します。相殺しない答えの扱いや、決算で見つかった誤りの直し方まで整理します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記3級 #33・10:01)
10:01【簿記3級 #33】訂正仕訳|誤った仕訳を直す3ステップ①誤った仕訳を書く ②正しい仕訳を書く ③差額を求める / 逆仕訳でいったん取り消す考え方▶ YouTubeで見る訂正仕訳とは?消さずに「差」を記入する仕訳
訂正仕訳とは、すでに記帳した誤った仕訳を、正しい状態に直すために追加で書く仕訳です。誤った仕訳は総勘定元帳(勘定科目ごとの帳簿)にも転記済みなので、消しゴムで消すのではなく、別の仕訳を足して結果を正しくします。記録の履歴を残して、あとから確かめられるようにするためです。
考え方は、「いまの帳簿」と「あるべき帳簿」の差を埋めることです。たとえば、事務用の机といす120,000円を月末払いで買ったときに、次のように記帳していたとします。
誤って記帳した仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 備品 | 120,000 | 買掛金 | 120,000 |
商品以外のものを買った代金の未払いは、買掛金ではなく未払金です。いまの帳簿とあるべき帳簿を比べると、差は次のとおりです。
| 勘定科目 | いまの帳簿 | あるべき帳簿 | 差を埋めるには |
|---|---|---|---|
| 備品 | 借方120,000 | 借方120,000 | 動かさない |
| 買掛金 | 貸方120,000 | 0 | 借方に120,000 |
| 未払金 | 0 | 貸方120,000 | 貸方に120,000 |
差を埋める仕訳は「買掛金120,000/未払金120,000」です。これが訂正仕訳です。次の3ステップを使うと、この差を表を作らずに機械的に出せます。
訂正仕訳の3ステップ|逆仕訳・正しい仕訳・相殺
同じ机といすの例で、3ステップを順に進めます。
ステップ1:誤った仕訳の逆仕訳を書く
誤った仕訳の左右を、そのまま入れ替えます。これで誤りの影響がゼロに戻ります。
ステップ1 逆仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 120,000 | 備品 | 120,000 |
ステップ2:正しい仕訳を書く
最初にするべきだった仕訳を、何もなかったつもりで書きます。
ステップ2 正しい仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 備品 | 120,000 | 未払金 | 120,000 |
ステップ3:2つを合わせて相殺する
ステップ1と2を合わせると、備品が借方と貸方に120,000円ずつ出てきて消えます。残ったものが訂正仕訳です。
ステップ3 訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 120,000 | 未払金 | 120,000 |
訂正仕訳 = 誤った仕訳の逆仕訳 + 正しい仕訳(同じ科目は相殺)
検算は、訂正後の各勘定が、あるべき帳簿と同じになるかで確かめます。買掛金は貸方120,000−借方120,000=0、未払金は貸方120,000で、前の表のあるべき帳簿と一致します。
講義#33では、同じ考え方を「誤った仕訳」「正しい仕訳」「差額」の順に整理しています。差額を直接考えるか、逆仕訳を経由するかの違いで、答えは同じです。
5つの誤りパターンを同じ手順で解く
誤りの型が変わっても、3ステップは同じです。型ごとに、訂正仕訳の形と金額の決まり方を先に知っておくと、答えの見当がつきます。
| 誤りの型 | 訂正仕訳の形 | 金額 |
|---|---|---|
| 勘定科目の誤り | 誤った科目を取り消し、正しい科目に付け替える | 記帳した金額 |
| 金額の誤り | 同じ科目で、差額だけ増やすか減らす | 正しい金額と記帳した金額の差 |
| 貸借逆 | 正しい仕訳と同じ形 | 正しい金額の2倍 |
| 記帳漏れ | 正しい仕訳そのもの | 正しい金額 |
| 二重計上 | 重なった仕訳の逆仕訳 | 重なった分の金額 |
パターン1:勘定科目の誤り
従業員に出張旅費の概算額40,000円を現金で渡したとき、「旅費交通費40,000/現金40,000」と記帳していた。概算額を渡した時点では、仮払金で処理するのが正しい。
| ステップ | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| ①逆仕訳 | 現金 40,000 | 旅費交通費 40,000 |
| ②正しい仕訳 | 仮払金 40,000 | 現金 40,000 |
パターン1の訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仮払金 | 40,000 | 旅費交通費 | 40,000 |
現金は①の借方と②の貸方で相殺されて動きません。旅費交通費は誤って計上した40,000円が取り消されて0になり、仮払金は40,000円になります。正しく記帳した場合と同じ状態です。
パターン2:金額の誤り
商品を掛けで仕入れたとき、68,000円を86,000円と記帳していた。
| ステップ | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| ①逆仕訳 | 買掛金 86,000 | 仕入 86,000 |
| ②正しい仕訳 | 仕入 68,000 | 買掛金 68,000 |
パターン2の訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 18,000 | 仕入 | 18,000 |
仕入は借方68,000円と貸方86,000円で、差し引き貸方に18,000円残ります。買掛金は借方86,000円と貸方68,000円で、借方に18,000円残ります。多く記帳した86,000−68,000=18,000円だけを戻す仕訳です。
この誤りは左右とも同じ金額で間違えているので、試算表の合計は一致したままです。試算表で見つからない誤りの種類は、試算表の作り方で整理しています。
パターン3:貸借逆
売掛金25,000円を現金で回収したとき、「売掛金25,000/現金25,000」と左右を逆に記帳していた。
| ステップ | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| ①逆仕訳 | 現金 25,000 | 売掛金 25,000 |
| ②正しい仕訳 | 現金 25,000 | 売掛金 25,000 |
パターン3の訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 50,000 | 売掛金 | 50,000 |
①と②が同じ形なので、合わせると金額が2倍になります。誤った記帳で現金が25,000円減り、売掛金が25,000円増えていました。まず取り消しで元に戻し、さらに正しい処理の分を動かす必要があるので、2回分になります。
パターン4:記帳漏れ(仕訳漏れ)
水道料金9,000円が普通預金口座から引き落とされていたが、記帳していなかった。
誤った仕訳が存在しないので、ステップ1の逆仕訳はありません。ステップ2の正しい仕訳が、そのまま訂正仕訳になります。
パターン4の訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 水道光熱費 | 9,000 | 普通預金 | 9,000 |
パターン5:二重計上
商品45,000円を掛けで売り上げた取引を、同じ仕訳で2回記帳していた。
ステップ1で2回分(90,000円)を取り消し、ステップ2で1回分(45,000円)を書くと、差し引き1回分の逆仕訳が残ります。
パターン5の訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上 | 45,000 | 売掛金 | 45,000 |
売掛金と売上はそれぞれ90,000円計上されていたので、45,000円ずつ戻して正しい45,000円にします。
相殺しない答えは正解になる?問題文の指示に従う
逆仕訳と正しい仕訳を並べただけの答えでも、各勘定の増減の結果は訂正仕訳と同じです。しかし、それが正解になるとは限りません。
相殺前の形では、パターン1の現金のように、同じ勘定科目が借方と貸方の両方に出てきます。「訂正仕訳を示しなさい」という問題が求めているのは、ふつうは相殺したあとの1本の仕訳です。採点で正解になるかは問題文の指示と採点基準しだいなので、相殺した最終形で答えるのが安全です。
もう1つ大切なのが、何を答える問題なのかの読み取りです。言い方によって、答える仕訳が変わります。
| 問題文の言い方 | 答える仕訳 |
|---|---|
| 「誤りを訂正するための仕訳」「訂正仕訳」 | 相殺した最終形(ステップ3) |
| 「本来あるべき正しい仕訳」 | 最初にするべきだった仕訳(ステップ2) |
| 決算整理事項の中で誤りが示される(精算表など) | 訂正仕訳を修正記入欄に反映する |
ポイント
迷ったら、問題文の最後の1文(何を答えるか)を先に読みます。「訂正のための仕訳」か「正しい仕訳」かで、答えが変わります。
決算で見つかった誤りの直し方|精算表では修正記入欄に書く
期中に気づいた誤りは、気づいた日に訂正仕訳を書きます。決算の段階で見つかった誤りも、書く仕訳そのものは同じです。違うのは、答えを書く場所です。
精算表(決算の数字を1枚で整理する表)の問題では、決算整理事項と並んで「〜と記帳していたことが判明した」という誤りや、未記帳の取引が資料に出てくることがあります。その訂正仕訳は、決算整理仕訳と同じく修正記入欄に書き、損益計算書欄と貸借対照表欄に反映させます。
たとえば「決算にあたり、期中に現金で受け取った手数料6,000円を、受取利息として記帳していたことが判明した」なら、訂正仕訳は次のとおりです。
決算で見つかった誤りの訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 受取利息 | 6,000 | 受取手数料 | 6,000 |
| 勘定科目 | 修正記入の借方 | 修正記入の貸方 |
|---|---|---|
| 受取利息 | 6,000 | |
| 受取手数料 | 6,000 |
資料の中の誤りや未記帳の取引を先に片づけてから決算整理に進むと、金額の取り違えを防げます。精算表の埋め方は精算表の書き方、決算整理の型は決算整理仕訳の8つの型で確認できます。
よくある間違いと、なぜ間違えるのか
- 逆仕訳を書かずに、正しい仕訳だけを書く:「直す=正しいものを書く」と考えるためです。誤った仕訳の影響が、帳簿に残ったままになります。
- 貸借逆で、1倍の金額しか動かさない:「左右を戻せばいい」と考え、取り消しと正しい処理の2回分が必要なことを見落とすためです。パターン3で「現金25,000/売掛金25,000」とだけ書くと、現金は差し引き0のままで、回収した25,000円が反映されません。
- 金額の誤りで、正しい金額を丸ごと書く:誤った金額がすでに計上されていることを忘れるためです。動かすのは差額だけです。
- 相殺で左右を取り違える:同じ科目の借方と貸方を差し引いたあと、多いほうの側に残すことを確かめないためです。訂正後の残高が、あるべき帳簿と一致するかで検算します。
左右の判定そのものに自信がない場合は、借方・貸方の覚え方で5要素の定位置を確認してから戻ると、逆仕訳が速く書けます。また、原因がわからない現金の不一致は訂正仕訳ではなく、現金過不足の仕訳で処理します。
練習問題で3ステップを確認する
練習問題1
郵便切手2,400円を現金で購入したとき、「消耗品費2,400/現金2,400」と記帳していた。訂正仕訳を答えなさい。
練習問題1の解答と解説を見る
練習問題1の訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 通信費 | 2,400 | 消耗品費 | 2,400 |
①逆仕訳は「現金2,400/消耗品費2,400」、②正しい仕訳は「通信費2,400/現金2,400」です。合わせると現金が相殺され、消耗品費から通信費への付け替えが残ります。
練習問題2
広告宣伝費52,000円を普通預金口座から支払ったとき、25,000円と記帳していた。訂正仕訳を答えなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2の訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 27,000 | 普通預金 | 27,000 |
正しい金額52,000−記帳した金額25,000=27,000円が不足しています。①「普通預金25,000/広告宣伝費25,000」と②「広告宣伝費52,000/普通預金52,000」を合わせます。広告宣伝費は借方に27,000円、普通預金は貸方に27,000円が残ります。
練習問題3
買掛金40,000円を普通預金口座から支払ったとき、「普通預金40,000/売掛金40,000」と記帳していた。訂正仕訳を答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
練習問題3の訂正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 40,000 | 普通預金 | 80,000 |
| 売掛金 | 40,000 | ||
左右が逆なうえに、科目も誤っています。①逆仕訳は「売掛金40,000/普通預金40,000」、②正しい仕訳は「買掛金40,000/普通預金40,000」です。合わせると、普通預金は貸方に80,000円になります。
検算します。誤った記帳で普通預金は40,000円増えていたので、80,000円減らすと、支払った分の40,000円減少になります。売掛金は誤って減らした40,000円が戻り、買掛金は支払った40,000円が減ります。
まとめ
- 訂正仕訳は、誤った仕訳の逆仕訳と正しい仕訳を合わせて、同じ科目を相殺した仕訳
- 科目の誤りは付け替え、金額の誤りは差額、貸借逆は2倍、記帳漏れは正しい仕訳そのもの、二重計上は逆仕訳1回分
- 答えは相殺後の最終形が安全。問題文が「訂正仕訳」か「正しい仕訳」かを先に読む
- 決算で見つかった誤りも仕訳は同じ。精算表では修正記入欄に書く
次の一歩として、簿記3級の無料講義 全50本の一覧から講義#33(訂正仕訳)を見て、3ステップの流れを動画でも確認してください。第1問の仕訳全体を固めるなら、簿記3級の仕訳問題20問に進みましょう。
動画で学ぶ|訂正仕訳の講義
この記事の講義(簿記3級 #33・10:01)
10:01【簿記3級 #33】訂正仕訳|誤った仕訳を直す3ステップ①誤った仕訳を書く ②正しい仕訳を書く ③差額を求める / 逆仕訳でいったん取り消す考え方 / 二重計上・計上漏れのパターン / 期中に気づいたときと決算で気づいたときの違い▶ YouTubeで見るよくある質問
訂正仕訳とは何ですか?
誤って記帳した仕訳を正しい状態に直すため、追加で記入する仕訳です。誤った仕訳の逆仕訳と正しい仕訳を合わせ、同じ勘定科目を相殺して作ります。
逆仕訳と訂正仕訳は何が違いますか?
逆仕訳は、誤った仕訳の左右を入れ替えて取り消す仕訳で、訂正仕訳を作る途中の1ステップです。訂正仕訳は、逆仕訳に正しい仕訳を合わせて相殺した最終形です。
相殺しないで答えても正解になりますか?
正解になるとは限りません。各勘定の増減の結果は同じでも、問題が求める形はふつう相殺後の1本の仕訳なので、相殺した最終形で答えるのが安全です。問題文に答え方の指示があれば、それに従います。
貸借を逆に記帳したときは、なぜ金額が2倍になるのですか?
誤りを取り消す分と、正しく記帳する分の2回分を動かす必要があるからです。逆仕訳と正しい仕訳が同じ形になるので、合わせると金額が2倍になります。
記帳漏れのときの訂正仕訳はどう書きますか?
正しい仕訳をそのまま書きます。誤った仕訳が存在しないので、逆仕訳は必要ありません。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
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