連結会計の問題で、見慣れない科目が次々に出てきて手が止まっていませんか。連結会計は、親会社と子会社の決算書を合算し、グループの内側で重複する金額を消して、グループ全体の決算書を作る手続きです。2級の資本連結は3段で解けます。支配獲得日の相殺、翌期からの開始仕訳、そして毎期の3つの修正(のれん償却・利益の按分・配当の修正)です。
この記事では、1つの設例を支配獲得日から2年目の開始仕訳まで通して解き、タイムテーブルで非支配株主持分とのれんを検算します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記2級 #35・8:36)
8:36【簿記2級】連結会計の開始仕訳とのれん償却|利益の按分と配当の修正を一本道で連結第1年度の開始仕訳 / のれんの償却▶ YouTubeで見る連結会計とは?合算してグループ内の重複を消す手続き
連結会計とは、親会社と子会社を1つの企業集団とみなし、集団全体の財務諸表(連結財務諸表)を作る手続きです。親会社が議決権の過半数を持つなどして、意思決定を支配している会社を子会社といいます。
個別の決算書を足すだけでは、同じ財産を二重に数えてしまいます。親会社の子会社株式と、子会社の資本金などは、同じお金の表と裏だからです。そこで合算したあと、重複する金額を連結修正仕訳で消します。
| 区分 | 何を消すか | 代表的な修正 |
|---|---|---|
| 資本連結 | 親会社の投資(子会社株式)と子会社の資本 | 投資と資本の相殺消去、のれんの償却、利益の按分、配当金の修正 |
| 成果連結 | グループ内の取引と、そこから生じた利益 | 内部取引高・債権債務の相殺、未実現利益の消去 |
この記事では資本連結を扱い、成果連結は同じ設例の続きとして未実現利益の消去と連結精算表の記事で解説します。試験では、連結修正仕訳のほか、連結精算表や連結財務諸表の空欄を埋める形で問われます。上場会社などが公表する決算の数字の多くも、連結財務諸表のものです。
ポイント
連結修正仕訳は、親会社・子会社どちらの帳簿にも記帳しません。連結財務諸表は毎期、個別の決算書の合算から作り直すので、前期までの修正は当期の最初に「開始仕訳」でまとめて再現します。
▶ 動画で確認する(2:30〜 連結修正仕訳は帳簿に残らない)
支配獲得日の仕訳|のれんと非支配株主持分の出し方
ここからは、次の設例を最後まで使います。数字はすべて編集部が作成したものです。
設例(この記事を通して使います)
会計期間は4月1日〜3月31日。P社は×1年3月31日に、S社の発行済株式の60%を3,600,000円で取得し、支配を獲得した。同日のS社の資本は、資本金3,000,000円、資本剰余金600,000円、利益剰余金1,400,000円。S社の資産・負債の時価は帳簿価額と同じで、のれんは10年間で定額法により償却する。
1年目(×1年度):S社の当期純利益500,000円・配当金200,000円、P社の当期純利益900,000円(受取配当金を含む)・配当金300,000円
2年目(×2年度):S社の当期純利益700,000円・配当金300,000円
※資本連結だけを扱い、親子間の取引の修正(成果連結)は次の記事で扱います。
支配獲得日の連結修正仕訳は、投資と資本の相殺消去です。S社株式(子会社株式)とS社の資本を消します。親会社以外の株主の取り分は非支配株主持分、投資額と親会社の持分との差額はのれんとします。
非支配株主持分 = 子会社の資本合計 × 非支配株主の持分割合
のれん = 子会社株式の取得原価 − 子会社の資本合計 × 親会社の持分割合
設例のS社の資本合計は、3,000,000+600,000+1,400,000=5,000,000円です。非支配株主持分は5,000,000×40%=2,000,000円、のれんは3,600,000−5,000,000×60%=600,000円になります。
支配獲得日(×1年3月31日)の連結修正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 資本金 | 3,000,000 | S社株式 | 3,600,000 |
| 資本剰余金 | 600,000 | 非支配株主持分 | 2,000,000 |
| 利益剰余金 | 1,400,000 | ||
| のれん | 600,000 | ||
非支配株主持分は「親会社以外の株主の取り分」
連結では、S社の資産・負債を持分割合に関係なく全額取り込みます。そのため、S社の資本のうち親会社のものではない40%を、純資産の部に非支配株主持分として区別して載せます。のれんは、S社の収益力など目に見えない価値への対価です。差額が貸方に出たときは、負ののれん発生益(利益)とします。
支配獲得日の連結貸借対照表で確かめる
2社の貸借対照表を合算し、上の仕訳を反映すると次のとおりです(合算額だけを示します)。支配獲得日はまだS社の利益を取り込まないので、作るのは連結貸借対照表だけです。
| 科目 | P社+S社 | 修正・消去 | 連結(円) |
|---|---|---|---|
| 諸資産 | 20,400,000 | ― | 20,400,000 |
| S社株式 | 3,600,000 | △3,600,000 | ― |
| のれん | ― | +600,000 | 600,000 |
| 諸負債 | 9,000,000 | ― | 9,000,000 |
| 資本金 | 9,000,000 | △3,000,000 | 6,000,000 |
| 資本剰余金 | 2,100,000 | △600,000 | 1,500,000 |
| 利益剰余金 | 3,900,000 | △1,400,000 | 2,500,000 |
| 非支配株主持分 | ― | +2,000,000 | 2,000,000 |
貸借はともに21,000,000円で一致します。連結後の資本金・資本剰余金・利益剰余金は、P社の金額と同じです。S社の資本は、親会社の投資か非支配株主持分に置き換わったからです。
1年目の連結修正仕訳|開始仕訳と3つの修正
1年目(×1年度)の連結修正仕訳は、開始仕訳を書いたあとに、その年度の3つの修正を加えます。
開始仕訳:支配獲得日の仕訳を「当期首残高」で書き直す
1年目の開始仕訳は、支配獲得日の仕訳の純資産の科目に「当期首残高」を付けたものです。
1年目の開始仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 資本金当期首残高 | 3,000,000 | S社株式 | 3,600,000 |
| 資本剰余金当期首残高 | 600,000 | 非支配株主持分当期首残高 | 2,000,000 |
| 利益剰余金当期首残高 | 1,400,000 | ||
| のれん | 600,000 | ||
当期首残高と書くのは、連結の純資産を「当期首残高+当期変動額=当期末残高」の形で動かすためです。株主資本等変動計算書と同じ考え方です。連結精算表では、資本金・資本剰余金・利益剰余金・非支配株主持分の行に記入します。
修正1:のれんの償却
のれん600,000円を10年で償却するので、1年分は60,000円です。のれん償却は、連結損益計算書の販売費及び一般管理費に表示します。
修正1:のれんの償却(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| のれん償却 | 60,000 | のれん | 60,000 |
修正2:子会社の当期純利益の按分
S社の当期純利益500,000円は、合算で全額が連結の利益に入っています。うち40%の200,000円は非支配株主の取り分です。非支配株主に帰属する当期純利益に振り分け、同額だけ非支配株主持分を増やします。
修正2:当期純利益の按分(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 200,000 | 非支配株主持分当期変動額 | 200,000 |
修正3:配当金の修正
S社の配当金200,000円のうち、60%の120,000円はP社の受取配当金です。グループの内側でお金が動いただけなので、受取配当金とS社の剰余金の配当を消します。残る40%の80,000円は非支配株主に支払った分なので、非支配株主持分を減らします。3つの修正の流れは、文字で読んだあと講義動画で通して見ると定着しやすくなります。
修正3:配当金の修正(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 受取配当金 | 120,000 | 剰余金の配当 | 200,000 |
| 非支配株主持分当期変動額 | 80,000 | ||
連結損益計算書では当期純利益を2つに分ける
1年目の連結上の当期純利益は、合算1,400,000円(P社900,000円+S社500,000円)から、のれん償却60,000円と受取配当金120,000円を引いた1,220,000円です。連結損益計算書では、これを2つに分けて表示します。
| 連結損益計算書の表示 | 金額(円) |
|---|---|
| 当期純利益 | 1,220,000 |
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 200,000 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,020,000 |
親会社株主の取り分は、P社の利益(受取配当金を除く)780,000円+S社の利益500,000円×60%−のれん償却60,000円=1,020,000円としても求められ、検算に使えます。
タイムテーブルの書き方|資本・持分・のれんを1枚にまとめる
タイムテーブルは、子会社の資本・非支配株主持分・のれんの各時点の金額を、1枚にまとめたメモです。開始仕訳の金額はここから読めるので、連結の問題では最初に書くと手戻りが減ります。
- 左から支配獲得日・前期末・当期末を並べ、支配獲得日の資本を書いて合計する
- 資本合計×40%で非支配株主持分、取得原価との差額でのれんを出す
- 各年度の当期純利益と配当で利益剰余金を動かし、非支配株主持分を出し直す
- のれんは1年分ずつ償却して残高を書く
2年目(×2年度)を当期とすると、設例のタイムテーブルは次のとおりです。
| 項目(円) | 支配獲得日 ×1年3月31日 | 前期末 ×2年3月31日 | 当期末 ×3年3月31日 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 3,000,000 | 3,000,000 | 3,000,000 |
| 資本剰余金 | 600,000 | 600,000 | 600,000 |
| 利益剰余金 | 1,400,000 | 1,700,000 | 2,100,000 |
| (その年度の当期純利益) | ― | +500,000 | +700,000 |
| (その年度の配当) | ― | △200,000 | △300,000 |
| 資本合計 | 5,000,000 | 5,300,000 | 5,700,000 |
| 非支配株主持分(40%) | 2,000,000 | 2,120,000 | 2,280,000 |
| のれん | 600,000 | 540,000 | 480,000 |
前期末の非支配株主持分は5,300,000×40%=2,120,000円です。1年目の仕訳を積み上げた2,000,000+200,000−80,000=2,120,000円と一致します。
2年目の開始仕訳はどう作る?前期の修正を積み上げる
2年目(当期)の開始仕訳は、1年目の連結修正仕訳をすべて合計したものです。ルールは1つで、前期の損益の科目と剰余金の配当を、すべて利益剰余金当期首残高に置き換えます。
| 1年目の仕訳の科目 | 金額(円) | 2年目の開始仕訳では |
|---|---|---|
| 利益剰余金当期首残高 | 借方1,400,000 | 利益剰余金当期首残高に集める |
| のれん償却 | 借方60,000 | 同上 |
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 借方200,000 | 同上 |
| 受取配当金 | 借方120,000 | 同上 |
| 剰余金の配当 | 貸方200,000 | 同上(差し引く) |
| 非支配株主持分の当期首残高と変動額 | 貸方2,120,000 | 非支配株主持分当期首残高 |
| のれん(償却後) | 借方540,000 | のれん |
利益剰余金当期首残高は、1,400,000+60,000+200,000+120,000−200,000=1,580,000円です。
2年目(×2年度)の開始仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 資本金当期首残高 | 3,000,000 | S社株式 | 3,600,000 |
| 資本剰余金当期首残高 | 600,000 | 非支配株主持分当期首残高 | 2,120,000 |
| 利益剰余金当期首残高 | 1,580,000 | ||
| のれん | 540,000 | ||
利益剰余金当期首残高をタイムテーブルで検算する
利益剰余金当期首残高 = 支配獲得日の利益剰余金
+ その後の増加額 × 非支配株主の持分割合 + のれん償却の累計額
設例では、1,400,000+(1,700,000−1,400,000)×40%+60,000=1,580,000円で、積み上げた金額と一致します。増加額のうち60%は親会社の取り分として連結に残るので、消すのは非支配株主の分だけです。
別の角度からも確かめられます。1年目末の連結上の利益剰余金3,220,000円(P社の支配獲得日の2,500,000+親会社株主に帰属する当期純利益1,020,000−P社の配当300,000)と、個別の合算4,800,000円(P社3,100,000円+S社1,700,000円)の差が、ちょうど1,580,000円です。
よくある間違いと、なぜ間違えるのか
- のれんを「取得原価−子会社の資本合計」で出す:株式を全部買ったつもりで計算してしまうためです。P社が買ったのは資本の60%なので、差し引くのは資本合計×60%です。
- 配当の修正で受取配当金を200,000円消す:S社の支払総額と、P社の受取額を混同しています。消す受取配当金は120,000円で、残りは非支配株主持分を減らします。
- 開始仕訳に「のれん償却」「受取配当金」をそのまま書く:前期の損益を当期にもう一度計上することになります。前期の損益はすでに前期末の利益剰余金に含まれているので、利益剰余金当期首残高で引き継ぎます。
- 開始仕訳ののれんを支配獲得日の金額で書く:前期までの償却が抜けています。タイムテーブルの前期末の残高を使えば防げます。
親子間の商品売買などで出てくる成果連結は、連結の未実現利益の消去で扱います。グループ内の利益を消す考え方は、本支店会計の内部利益とよく似ています。
練習問題で確認する
練習問題1
A社は×1年3月31日に、B社の発行済株式の80%を4,300,000円で取得し、支配を獲得した。同日のB社の資本は、資本金3,000,000円、資本剰余金500,000円、利益剰余金1,500,000円である(資産・負債の時価は帳簿価額と同じ)。支配獲得日の連結修正仕訳を答えなさい。
練習問題1の解答と解説を見る
練習問題1の連結修正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 資本金 | 3,000,000 | B社株式 | 4,300,000 |
| 資本剰余金 | 500,000 | 非支配株主持分 | 1,000,000 |
| 利益剰余金 | 1,500,000 | ||
| のれん | 300,000 | ||
非支配株主持分は資本合計5,000,000×20%=1,000,000円、のれんは4,300,000−5,000,000×80%=300,000円です。
練習問題2
設例のP社・S社について、2年目(×2年度)の連結修正仕訳のうち、のれんの償却、S社の当期純利益の按分、配当金の修正を答えなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2の連結修正仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| のれん償却 | 60,000 | のれん | 60,000 |
| 非支配株主に帰属する当期純利益 | 280,000 | 非支配株主持分当期変動額 | 280,000 |
| 受取配当金 | 180,000 | 剰余金の配当 | 300,000 |
| 非支配株主持分当期変動額 | 120,000 | ||
按分は700,000×40%=280,000円。配当金300,000円のうちP社の受取分は60%の180,000円、非支配株主分は120,000円です。当期末の非支配株主持分2,120,000+280,000−120,000=2,280,000円は、タイムテーブルと一致します。
練習問題3
設例のP社・S社について、3年目(×3年度)の開始仕訳を答えなさい(資本連結の部分だけでよい)。
練習問題3の解答と解説を見る
練習問題3の開始仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 資本金当期首残高 | 3,000,000 | S社株式 | 3,600,000 |
| 資本剰余金当期首残高 | 600,000 | 非支配株主持分当期首残高 | 2,280,000 |
| 利益剰余金当期首残高 | 1,800,000 | ||
| のれん | 480,000 | ||
利益剰余金当期首残高は、公式で1,400,000+(2,100,000−1,400,000)×40%+60,000×2年分=1,800,000円です。2年目の開始仕訳の1,580,000円に2年目の修正分220,000円(60,000+280,000+180,000−300,000)を足しても同じです。
まとめ
- 連結会計は、個別の決算書を合算し、グループ内の重複を連結修正仕訳で消す手続き
- 支配獲得日は、非支配株主持分=資本合計×非支配割合、のれん=取得原価−資本合計×親会社の持分割合
- 毎期、開始仕訳のあとに、のれん償却・利益の按分・配当の修正の3つを加える
- 開始仕訳では、前期の損益の科目と剰余金の配当を利益剰余金当期首残高に置き換える
- タイムテーブルを先に書くと、非支配株主持分・のれん・利益剰余金当期首残高を検算できる
次の一歩として、同じP社・S社の2年目に成果連結を加えて連結精算表まで仕上げる未実現利益の消去と連結精算表の解き方に進みましょう。講義を順番に見るなら簿記2級の無料講義 全66本の一覧、学習計画は簿記2級の独学スケジュールが参考になります。
動画で学ぶ|連結会計の講義
この記事の講義(簿記2級 #35・8:36)
8:36【簿記2級】連結会計の開始仕訳とのれん償却|利益の按分と配当の修正を一本道で連結第1年度の開始仕訳 / のれんの償却 / 子会社の配当金の修正 / なぜ配当を消すのか▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
連結の開始仕訳はなぜ毎年必要なのですか?
連結修正仕訳は、親会社・子会社どちらの帳簿にも記帳しないためです。毎期、個別の決算書の合算から作り直すので、前期までの修正を当期の最初に再現します。
非支配株主持分はどうやって計算しますか?
子会社の資本合計に、非支配株主の持分割合を掛けて計算します。支配獲得後は、子会社の利益の按分で増え、配当の支払いで減ります。子会社が売り手の未実現利益を消去したときなど、成果連結の修正があればその分も加減します。
子会社の資産・負債の時価評価は簿記2級で出ますか?
日本商工会議所の出題区分表では、支配獲得時の子会社の資産・負債の時価評価は1級の項目として挙げられています。2級では、この記事の設例のように時価評価のない形で、投資と資本の相殺を確実に解けるようにしておきましょう。範囲は日本商工会議所の出題区分表のページで確認できます。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
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