外貨建取引の問題で、どの日の為替レートを使うのか、決算で何を換算し直すのかに迷っていませんか。使うレートは、取引日・決算日・決済日の3つの時点で決まります。決算で換算し直すのは、売掛金・買掛金のように将来お金で決済される貨幣項目だけです。
為替予約を付けたら予約レートで円の金額が固まり、決算では仕訳をしません。この記事では、前払金つきの輸入を1つの設例で最後まで追い、判定表と練習問題で確認します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記2級 #24・9:40)
9:40【簿記2級】外貨建取引の仕訳と為替差損益|換算替えは貨幣項目だけ換算する時点は3つ、レートは3種類 / 取引発生時──その日の直物相場で換算▶ YouTubeで見る外貨建取引とは?使うレートは3つの時点で決まる
外貨建取引とは、売買の代金などがドルやユーロといった外国の通貨で決められている取引です。帳簿はすべて円で記録するので、外貨の金額を円に換算してから仕訳を書きます。
換算に使うのは、原則としてその日の直物為替相場(その時点の実際の交換レート)です。問題文では「1ドル=150円」のように、日付ごとのレートが示されます。どの日付にどのレートを使うかは、次の3つの時点で整理できます。
| 時点 | 使うレート | 仕訳のポイント |
|---|---|---|
| 取引日(取引発生時) | 取引日の直物為替相場(HR) | 取引の金額をそのレートで円に換算する |
| 決算日 | 決算日の直物為替相場(CR) | 貨幣項目だけ換算し直し、差額は為替差損益 |
| 決済日 | 決済日の直物為替相場 | 帳簿の円の金額との差額が為替差損益 |
HRは取引発生時のレート(ヒストリカル・レート)、CRは決算時のレート(カレント・レート)の略です。問題文の日付の横に使うレートを書き込んでから仕訳に入ると、取り違えを防げます。
▶ 動画で確認する(1:23〜 換算する時点は3つ、レートは3種類)
円安と円高、損をするのはどっち?
円安とは、1ドルと交換するのに必要な円が増えることです(例:1ドル146円→150円)。外貨を受け取る側と支払う側で、損益の向きが逆になります。
| 外貨建の項目 | 円安になったとき | 円高になったとき |
|---|---|---|
| 資産(売掛金など) | 受け取る円が増える→為替差益 | 受け取る円が減る→為替差損 |
| 負債(買掛金など) | 支払う円が増える→為替差損 | 支払う円が減る→為替差益 |
円安のときは「ドルの値打ちが上がった」と言い換えると判断しやすくなります。ドルを受け取る権利を持つ側は得をし、ドルを支払う義務を負う側は損をします。
設例で追う|前払金→仕入→決算→決済の4つの仕訳
ここからは、1つの輸入取引を最後まで追います。数字はすべて編集部が作成したもので、会計期間は4月1日から3月31日までとします。
設例
(1) 2月1日 米国の仕入先と商品10,000ドルの輸入契約を結び、手付金2,000ドルを普通預金から支払った。直物為替相場は1ドル=148円。
(2) 2月20日 商品を受け取り、残額8,000ドルは掛けとした。直物為替相場は1ドル=150円。
(3) 3月31日 決算日。直物為替相場は1ドル=146円。
(4) 5月10日 買掛金8,000ドルを普通預金から支払った。直物為替相場は1ドル=149円。
(1)(2) 前払金の分は、支払った日のレートのまま
(1) 手付金の支払い(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 前払金 | 296,000 | 普通預金 | 296,000 |
(2) 商品の受取り(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仕入 | 1,496,000 | 前払金 | 296,000 |
| 買掛金 | 1,200,000 | ||
手付金2,000ドルは、支払った2月1日の148円で296,000円と確定しています。残額は8,000ドル×150円=1,200,000円です。仕入の金額は、前払金と合わせた1,496,000円になります。
10,000ドル全体を受取日の150円で換算すると1,500,000円になり、4,000円ずれます。ずれの正体は、前払金2,000ドル×(150円-148円)です。支払い済みの部分と、これから支払う部分でレートが違うと考えてください。
▶ 動画で確認する(6:03〜 前払金があるとき──2つのレートの合成)
(3) 決算では買掛金だけを換算し直す
(3) 決算時の換算替え(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 32,000 | 為替差損益 | 32,000 |
買掛金8,000ドルを決算日の146円で換算し直すと1,168,000円です。帳簿の1,200,000円より32,000円少ないので、買掛金を減らし、同じ額を為替差損益の貸方(差益)に記入します。円高になって支払う円が減ったので、得をした形です。
一方、2月20日に仕入れた商品が期末に残っていても、商品は換算し直しません。仕入れた時点で円の金額が確定しているからです。
(4) 決済では帳簿の金額との差額を出す
(4) 買掛金の支払い(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 1,168,000 | 普通預金 | 1,192,000 |
| 為替差損益 | 24,000 | ||
支払額は8,000ドル×149円=1,192,000円です。帳簿の買掛金は決算で1,168,000円に換算し直してあるので、差額24,000円が為替差損益の借方(差損)になります。
検算
為替差損益は決算で+32,000円、決済で-24,000円、合計で+8,000円です。これは8,000ドル×(取引日150円-決済日149円)と一致します。年度をまたいでも、取引日から決済日までの差の合計は合うので、検算に使えます。
決算で換算替えするのは貨幣項目だけ|判定表
決算日のレートで換算し直すこと(換算替え)の対象は、貨幣項目だけです。貨幣項目とは、将来お金で受け払いされる資産・負債のことです。
| 項目 | 分類 | 決算時の扱い |
|---|---|---|
| 外国通貨・外貨預金 | 貨幣項目 | 決算日のレートで換算替え |
| 売掛金・買掛金 | 貨幣項目 | 決算日のレートで換算替え |
| 未収入金・未払金 | 貨幣項目 | 決算日のレートで換算替え |
| 前払金・前受金 | 非貨幣項目 | 支払日・受取日のレートのまま |
| 商品・備品など | 非貨幣項目 | 取得したときのレートのまま |
なぜ前払金や前受金は換算替えしないのか?
前払金は、将来お金ではなく商品を受け取る権利です。レートが動いても、受け取る商品の量は変わりません。前受金も同じで、将来お金を返すのではなく、商品を渡す義務です。お金で決済されない項目は、為替の変動で受け払いの円の金額が変わらないので、換算替えの対象外になります。
判定表を使うには、前払金と前払費用、売掛金と未収入金の区別が前提になります。あいまいな人は、前払金と前払費用の違いと売掛金と未収入金の違いを先に確認してください。
▶ 動画で確認する(7:07〜 なぜ非貨幣項目は換算替えしないのか)
為替差損益は差し引きして営業外に表示する
期中に出た差益と差損は、すべて為替差損益という1つの勘定に記録します。期末に貸方残高なら「為替差益」として営業外収益に表示します。借方残高なら「為替差損」として営業外費用に表示します。差益と差損を両方並べるのではなく、差し引きした純額で1行です。
為替予約の振当処理|予約したら予約レートで固定
為替予約とは、将来の決済に使うレートを、銀行とあらかじめ約束しておく契約です。予約したレートを先物為替相場(予約レート)といいます。予約すれば、その後に相場がどう動いても、支払う円や受け取る円の金額が決まります。
振当処理は、予約レートを外貨建の売掛金・買掛金に振り当てて換算する方法です。出題区分表では、2級の為替予約は振当処理に限られ、独立処理は1級の範囲です。2級では、為替予約で生じた差額を期間配分しません(日本商工会議所の簿記 出題区分表)。この扱いは、2026年度までの現行版と2027年度版で同じです。
取引の前か同時に予約した場合
取引全体を予約レートで換算します。決算日も決済日も予約レートのままなので、為替差損益は出ません。
例:商品5,000ドルを掛けで輸出。取引日の直物は1ドル=152円、同時に予約レート1ドル=150円の為替予約を付けた(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 750,000 | 売上 | 750,000 |
5,000ドル×150円=750,000円です。取引日の直物152円は使いません。決算日の直物が何円でも、この売掛金は換算替えしません(仕訳なし)。決済日は「普通預金750,000/売掛金750,000」で終わります。
取引の後で予約した場合
取引日には直物で換算しておき、予約した日に予約レートへ換算し直します。差額は、予約した日の為替差損益です。
例
1月10日 商品4,000ドルを掛けで輸入した(直物1ドル=151円)。
2月1日 買掛金の決済日を期日とする為替予約を付けた(予約レート1ドル=153円、この日の直物1ドル=152円)。
3月31日 決算日(直物1ドル=149円)。4月30日に決済した。
1月10日の仕入(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仕入 | 604,000 | 買掛金 | 604,000 |
2月1日の予約(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 為替差損益 | 8,000 | 買掛金 | 8,000 |
予約日には、買掛金を4,000ドル×153円=612,000円に合わせます。604,000円との差額8,000円は、為替差損益の借方に記入します。予約日の直物152円は使いません。2級では、この8,000円を直物の変動分と予約による分に分けず、予約日に全額を損益にします。
3月31日の決算は仕訳なしです。4月30日は「買掛金612,000/普通預金612,000」で決済し、差額は出ません。
場面ごとに使うレートを1枚にまとめると、次のようになります。
| 場面 | 予約なし | 取引前・同時に予約 | 取引後に予約 |
|---|---|---|---|
| 取引日 | 取引日の直物 | 予約レート | 取引日の直物 |
| 予約日 | ― | ― | 予約レートに換算替え(差額は為替差損益) |
| 決算日 | 貨幣項目を決算日の直物で換算替え | 仕訳なし | 仕訳なし |
| 決済日 | 決済日の直物(差額は為替差損益) | 予約レート(差額なし) | 予約レート(差額なし) |
▶ 動画で確認する(7:13〜 レート早見表──場面ごとに使うレート)
外貨建取引のよくある間違いと、その原因
- 前払金の分まで受取日のレートで換算する:「商品を受け取った日のレートで仕入を計上する」とだけ覚えていると起こります。前払金は支払った日に円の金額が確定しています。仕入は「前払金の帳簿価額+残額×受取日のレート」と2つに分けて計算します。
- 決算で前払金・前受金・商品まで換算替えする:外貨の金額が書いてある項目は全部換算し直すと思い込むためです。基準は外貨かどうかではなく、将来お金で決済されるかどうかです。
- 円安なのに損益の向きを逆にする:「安」という字から損をする印象を受けるためです。先に資産か負債かを決め、ドルの値打ちが上がったか下がったかで判断します。
- 予約後の決算で換算替えをする:相場が動いているのに何もしないことに不安を感じるためです。振当処理では予約した時点で円の金額が確定しているので、決算の仕訳は要りません。
- 取引後に予約したとき、予約日の直物を使う:問題文にレートが2つ並ぶと、見慣れた直物を選びがちです。振り当てるのは予約レートです。
練習問題|使うレートを選んで仕訳する
練習問題1
3月5日、商品5,000ドルを輸出する契約を結び、手付金1,000ドルを受け取って普通預金に入金した(直物1ドル=147円)。3月25日に商品を引き渡し、残額は掛けとした(直物1ドル=149円)。3月25日の仕訳を答えなさい。
練習問題1の解答と解説を見る
練習問題1の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 前受金 | 147,000 | 売上 | 743,000 |
| 売掛金 | 596,000 | ||
前受金は、受け取った3月5日の147円で147,000円と確定しています。残額4,000ドル×149円=596,000円が売掛金です。売上は合計の743,000円で、5,000ドル全体を149円で換算した745,000円ではありません。
練習問題2
決算日の直物為替相場は1ドル=152円である。次の外貨建の項目について、決算で必要な仕訳を答えなさい。
売掛金3,000ドル(帳簿価額447,000円)、前払金1,000ドル(帳簿価額150,000円)、買掛金2,000ドル(帳簿価額296,000円)
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 9,000 | 為替差損益 | 9,000 |
| 為替差損益 | 8,000 | 買掛金 | 8,000 |
売掛金は3,000ドル×152円=456,000円で、帳簿より9,000円増えるので差益です。買掛金は2,000ドル×152円=304,000円で、帳簿より8,000円増えるので差損です。前払金は非貨幣項目なので換算替えしません。為替差損益は差し引き1,000円の貸方残高となり、損益計算書には為替差益1,000円を営業外収益に表示します。
練習問題3
12月1日、商品2,500ドルを掛けで輸出した(直物1ドル=154円)。1月15日、この売掛金に為替予約を付けた(予約レート1ドル=151円、この日の直物1ドル=153円)。1月15日と3月31日(決算日の直物1ドル=150円)の仕訳を答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
練習問題3 1月15日の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 為替差損益 | 7,500 | 売掛金 | 7,500 |
売掛金を2,500ドル×154円=385,000円から、2,500ドル×151円=377,500円に換算し直します。差額7,500円は資産が減った分なので差損です。予約日の直物153円は使いません。3月31日は、振当処理で円の金額が確定しているので仕訳なしです。
まとめ
- 換算の時点は取引日・決算日・決済日の3つ。原則はその日の直物為替相場を使う
- 決算で換算替えするのは貨幣項目(外国通貨・売掛金・買掛金など)だけ。前払金・前受金・商品はそのまま
- 前払金がある仕入は「前払金の帳簿価額+残額×受取日のレート」
- 為替予約は、2級では振当処理のみ。予約レートで固定し、取引後の予約は予約日に差額を為替差損益にする。決算は仕訳なし
- 為替差損益は差し引きした純額で、営業外収益か営業外費用に表示する
次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から外貨建取引の前編・後編の講義を続けて見てください。そのあと設例の仕訳を自分の手で書くと定着します。次の論点は株主資本等変動計算書の解き方です。2級全体の進め方は無料講義66本の使い方と簿記2級の独学スケジュールにまとめています。
動画で学ぶ|外貨建取引と為替予約の講義
この記事の講義(簿記2級 #24・9:40)
9:40【簿記2級】外貨建取引の仕訳と為替差損益|換算替えは貨幣項目だけ換算する時点は3つ、レートは3種類 / 取引発生時──その日の直物相場で換算 / 円安と円高、どちらが損か / 決算時──貨幣項目だけを換算替えする▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
為替差益と為替差損は損益計算書のどこに表示しますか?
営業外収益(為替差益)または営業外費用(為替差損)に、差し引きした純額で1行だけ表示します。期中の差益と差損は為替差損益勘定にまとめて記録し、期末の残高が貸方なら為替差益、借方なら為替差損です。
前払金や前受金は決算で換算替えしますか?
しません。前払金・前受金は将来お金ではなく商品で決済される非貨幣項目なので、支払日・受取日のレートのままにします。換算替えするのは、売掛金・買掛金などの貨幣項目だけです。
為替予約をしたあとの決算では何をしますか?
振当処理では何もしません(仕訳なし)。予約した時点で決済のレートが決まり、円の金額が確定しているためです。取引の後で予約した場合も、予約日に予約レートへ換算し直したあとは、決算で換算替えをしません。
外貨建取引は2027年度の出題区分表の改定で変わりますか?
変わりません。2027年度版の出題区分表でも、2級の為替予約は振当処理のみで、予約差額を期間配分しない扱いも同じです。2027年度の改定で示された2級の変更点は、手形関係の勘定科目の削除、売掛債権の譲渡の追加、リースの会計処理の変更です。改定の内容は2027年度の出題区分表改定のまとめで整理しています。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
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