契約資産と契約負債の違いは、約束を果たしたのに代金をまだ請求できないのか、代金を先に受け取ったのに約束をまだ果たしていないのか、です。前者が契約資産、後者が契約負債で、今すぐ請求できる代金は売掛金になります。
この記事では3つを判定表で見分け、5ステップと2級の範囲、2つの約束がある契約の仕訳、リベートの返金負債までを検算つきで整理します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記2級 #22・9:59)
9:59【簿記2級】収益認識の5ステップと契約資産・契約負債|請求できるかで決まる収益認識基準で何が変わったか / 収益認識の5つのステップ▶ YouTubeで見る契約資産・契約負債とは?売掛金との違いを判定表で
契約資産とは、商品やサービスを渡して収益を計上したものの、代金を受け取る権利に「時の経過以外の条件」が付いているものです。たとえば「2つの商品を両方渡したら請求できる」契約で、1つ目だけを渡した段階がこれに当たります。
売掛金は、あとは支払期日を待つだけの無条件の権利です。契約負債はその逆向きで、代金を先に受け取ったのに、まだ商品やサービスを渡していない義務を表す負債です。
| 状況 | 約束 | 代金 | 使う科目 |
|---|---|---|---|
| 商品を渡し、すぐに請求できる | 果たした | 期日を待つだけ | 売掛金 |
| 商品を渡したが、残りの約束を果たすまで請求できない | 一部を果たした | 請求に条件がある | 契約資産 |
| 代金を先に受け取り、商品はまだ渡していない | まだ果たしていない | 受け取り済み | 契約負債 |
迷ったら「いま請求書を出せるか」を考えます。出せるなら売掛金、出せないなら契約資産です。代金を受け取っているのに渡していなければ、契約負債です。
ポイント
契約資産と売掛金を分けるのは、「入金されたか」ではなく「請求できるか」です。どちらも入金前の権利なので、入金の有無では区別できません。
▶ 動画で確認する(6:29〜 契約資産・売掛金・契約負債の使い分け)
3級で学んだ前受金との関係は、前払金と前払費用の違い(前受金・前受収益も)で整理しています。顧客との契約で先に受け取った代金を契約負債とするか前受金とするかは、問題文で指定された科目に合わせてください。
収益認識の5ステップ|2級で手を動かすのは配分と充足
収益認識とは、売上などの収益を「いつ」「いくらで」計上するかを決めるルールです。収益認識に関する会計基準では、次の5つのステップで収益を決めます。
| ステップ | やること | 2級の問題での作業 |
|---|---|---|
| 1 契約を識別する | 顧客との契約があるかを確かめる | 問題文の取引を読む |
| 2 履行義務を識別する | 契約の中の約束(商品・サービス)を数える | 「商品と保守」など、約束の数を数える |
| 3 取引価格を算定する | 受け取る対価の額を決める | 契約金額から、返金が見込まれる分を除く |
| 4 取引価格を配分する | 約束ごとに対価を割り振る | 独立販売価格の比で按分する |
| 5 収益を認識する | 約束を果たしたときに収益にする | 渡した分・経過した分だけ収益にする |
収益が計上されるのはステップ5だけです。商品の引渡しのように一時点で果たす約束は、その日に収益にします。保守サービスのように一定の期間にわたって果たす約束は、経過した期間などの進み具合に応じて収益にします。
2級で出る範囲と、1級に回る論点
出題区分表で、収益認識の項目は次のように級が分かれています。この割当ては、2026年度(現行の区分表)と2027年度で同じです。
| 級 | 出題区分表に載っている収益認識の項目 |
|---|---|
| 2級 | 契約資産・契約負債/一時点で充足される履行義務・一定の期間にわたり充足される履行義務/出荷基準・着荷基準・検収基準/役務収益・役務原価/複数の履行義務を含む契約/変動対価 |
| 1級 | 本人と代理人の区分/割賦販売/工事契約/重要な金融要素/契約変更 |
2級の学習では、ステップ4の配分と、ステップ5の「果たした分だけ収益」を確実にするのが近道です。一時点の約束をいつ果たしたとみなすか(出荷した日・届いた日・顧客が検収した日)は、問題文の指示に従います。
設例|2つの約束がある契約を最後まで仕訳する
ここからは、契約資産と契約負債が出てくる2つの設例を、日付の順に仕訳します。数字はすべて編集部が作成したものです。
設例1:先に渡した商品は契約資産になる
設例1
当社(決算日3月31日)は3月1日、顧客と商品Pと商品Qを合計720,000円で販売する契約を結んだ。独立販売価格は商品P 480,000円、商品Q 320,000円である。商品Pは3月10日、商品Qは4月20日に引き渡した。代金は両方の商品を引き渡したあとに請求する契約で、5月31日に普通預金に入金された。
配分額 = 取引価格 × その商品の独立販売価格 ÷ 独立販売価格の合計
独立販売価格の合計は800,000円です。商品Pへの配分は720,000×480,000/800,000=432,000円です。商品Qは720,000×320,000/800,000=288,000円で、合計は取引価格の720,000円に戻ります。3月1日の契約の時点では、まだ何も渡していないので仕訳はありません。
3月10日:商品Pの引渡し(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 契約資産 | 432,000 | 売上 | 432,000 |
商品Pは渡したので収益にしますが、商品Qを渡すまで代金を請求できません。そのため借方は売掛金ではなく契約資産です。3月31日の貸借対照表には、契約資産432,000円が載ります。
4月20日:商品Qの引渡し(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 720,000 | 売上 | 288,000 |
| 契約資産 | 432,000 | ||
5月31日:代金の入金(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 720,000 | 売掛金 | 720,000 |
商品Qを渡した時点で両方の約束を果たし、720,000円全額を請求できるようになります。契約資産を売掛金に振り替え、商品Qの分の売上を計上します。
▶ 動画で確認する(7:21〜 例題──契約資産から売掛金への振替)
設例2:先に受け取った保守料は契約負債になる
設例2
当社(決算日3月31日)は10月1日、機器の販売と1年間の保守サービス(10月1日〜翌年9月30日)をセットで契約し、代金540,000円を普通預金で受け取った。機器は同日に引き渡した。独立販売価格は機器450,000円、保守150,000円である。
機器への配分は540,000×450,000/600,000=405,000円です。保守は540,000×150,000/600,000=135,000円になります。保守はまだ提供していないので契約負債にし、決算日に経過した6か月分を収益にします。
10月1日:代金の受け取りと機器の引渡し(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 540,000 | 売上 | 405,000 |
| 契約負債 | 135,000 | ||
3月31日:経過した6か月分の保守(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 契約負債 | 67,500 | 売上 | 67,500 |
135,000×6/12=67,500円を収益にし、残りの67,500円は翌期に果たす6か月分の義務として、契約負債のまま残します。保守の収益を役務収益とする問題もあるので、科目は問題文の指定に合わせてください。
▶ 動画で確認する(4:10〜 一時点で充足か、一定の期間にわたり充足か)
売上割戻は返金負債で分ける|変動対価の仕訳
売上割戻(リベート)のように、あとで返金や値引きが起こりうる対価を変動対価といいます。変動対価は、出題区分表で2級に入っている論点です。
一定の条件を満たした顧客に代金の一部を返す売上割戻は、返すと見込まれる分を最初から売上にしません。その分は返金負債という負債にして、売上と分けておきます。
設例
商品800,000円を掛けで販売した。この顧客には、一定の条件を満たすと代金の一部を返す契約があり、返金額は16,000円と見込まれる。
販売時:リベートの見込みがある売上(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 800,000 | 売上 | 784,000 |
| 返金負債 | 16,000 | ||
後日、条件を満たして16,000円を普通預金から支払ったときは、「返金負債16,000/普通預金16,000」です。売掛金と相殺する場合は、貸方が売掛金になります。
▶ 動画で確認する(1:21〜 変動対価と売上割戻──返金負債)
参考:返品が見込まれる販売と返品資産
返品を受け入れる条件での販売(返品権付き販売)は、出題区分表に項目としての明記がありません。ここでは、売上にしない分を別の科目で分ける考え方の参考として紹介します。
返品が見込まれる分は売上にせず、返金負債にします。さらに、返品で戻ってくる商品を受け取る権利を返品資産とし、その原価を売上原価から外します。
設例
商品500,000円(原価300,000円)を掛けで販売した。このうち売価40,000円(原価24,000円)の返品が見込まれる。商品売買は売上原価対立法で記帳している。
販売時:売上の計上(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 500,000 | 売上 | 460,000 |
| 返金負債 | 40,000 | ||
販売時:原価の振替(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 276,000 | 商品 | 300,000 |
| 返品資産 | 24,000 | ||
試験で返品権付き販売をどこまで扱うかは、受験する年度の出題区分表(日本商工会議所の簿記 出題区分表のページ)と教材で確認してください。
よくある判定ミスと、その理由
- 渡したのに請求できない分を、売掛金にする:「渡した+未入金=売掛金」と覚えているためです。請求に条件が残っていれば契約資産です。
- 全部渡したのに、契約資産を売掛金へ振り替え忘れる:2つ目の引渡しで、その商品の売上だけを書き足してしまうためです。全額を請求できるようになった時点で、契約資産を売掛金に振り替えます。
- 配分の分母を契約金額にする:割り振る金額と、比率の元になる金額を混同するためです。比率は、独立販売価格の合計を分母にして求めます。
- 前受けした保守料を、全額売上にする:入金された日に売上を立てる感覚が残っているためです。まだ提供していない分は契約負債です。
- リベートの見込み分まで売上にする:払ったときに調整すればよいと考えるためです。返すと見込まれる分は、販売時から返金負債です。
売掛金と未収入金の区別があいまいな人は、売掛金と未収入金・買掛金と未払金の違いで先に確認しておきましょう。契約資産との違いも整理しやすくなります。売上原価対立法の記帳は、三分法と売上原価対立法の仕訳で解説しています。
練習問題で判定と配分を確認
練習問題1
次のア〜ウで計上する科目を、売掛金・契約資産・契約負債から1つずつ選びなさい。
ア 商品を引き渡し、代金は翌月末に受け取る約束である(引渡し時の借方)。
イ 2つの商品のうち1つを引き渡したが、代金は2つ目を引き渡したあとに請求する(1つ目の引渡し時の借方)。
ウ 来月引き渡す商品の代金を、先に普通預金で受け取った(受取時の貸方)。
練習問題1の解答と解説を見る
ア 売掛金、イ 契約資産、ウ 契約負債です。アは期日を待つだけの無条件の権利、イは請求に条件が残る権利、ウはまだ果たしていない約束に対して先に受け取った代金です。
練習問題2
商品Xと商品Yを合計450,000円で販売する契約を結んだ。独立販売価格は商品X 300,000円、商品Y 200,000円である。商品Xを先に引き渡したが、代金は商品Yの引渡し後にまとめて請求する。商品Xを引き渡したときの仕訳を答えなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2 商品Xの引渡し(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 契約資産 | 270,000 | 売上 | 270,000 |
独立販売価格の合計は500,000円です。商品Xへの配分は450,000×300,000/500,000=270,000円で、商品Yは180,000円です。まだ請求できないので、借方は契約資産です。
練習問題3
商品600,000円を掛けで販売した。この顧客には代金の一部を返す契約があり、返金額は9,000円と見込まれる。販売時の仕訳を答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
練習問題3 販売時(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 600,000 | 売上 | 591,000 |
| 返金負債 | 9,000 | ||
返すと見込まれる9,000円は売上にせず、返金負債にします。売上は600,000−9,000=591,000円です。
代理人取引は1級の論点(参考)|手数料だけを収益にする
本人と代理人の区分は、出題区分表では1級の論点です(2026年度・2027年度とも)。2級の試験対策としては読み飛ばしてかまいません。ここでは、考え方だけを参考として紹介します。
他社の商品の販売を取り次ぐだけの「代理人」は、顧客から受け取った代金の全額ではなく、受け取る手数料だけを収益にします(純額)。自社が「本人」として販売するなら、売った金額を売上にし、仕入れた金額を費用にします(総額)。
参考の設例
当社は代理人として、他社の商品を顧客に販売し、代金200,000円を普通預金で受け取った。手数料20,000円を差し引いた残額180,000円は、後日、商品の供給元に支払う。
参考:代理人としての販売(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 200,000 | 受取手数料 | 20,000 |
| 未払金 | 180,000 | ||
| 項目 | 本人として販売(総額) | 代理人として販売(純額) |
|---|---|---|
| 損益計算書の収益 | 売上200,000円 | 受取手数料20,000円 |
| 対応する費用 | 売上原価180,000円 | なし |
| 利益 | 20,000円 | 20,000円 |
利益はどちらも20,000円で、変わるのは収益の大きさです。供給元に渡す180,000円は当社の費用ではなく、支払う義務なので未払金になります。
まとめ
- 契約資産は「果たしたが、まだ請求できない」、売掛金は「請求できる」、契約負債は「先に受け取った」
- 収益は5ステップで決まる。計算するのは、独立販売価格の比による配分と、果たした分だけの収益計上
- 2つの約束がある契約は、先に渡した分を契約資産にし、全部渡して請求できるようになったら売掛金へ振り替える
- リベートなど返金が見込まれる分(変動対価)は、返金負債にして売上から除く。本人と代理人の区分は1級の論点
- 2027年度適用の勘定科目表(2級)にも、契約資産・契約負債・返金負債が並んでいる
次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から、収益認識の前後の回(経過勘定と役務収益、外貨建取引)を続けて見ておきましょう。次に学ぶ外貨建取引と為替予約の仕訳も、日付ごとに仕訳を区切る考え方は同じです。2027年度からの出題区分表の変更は、2027年度の出題区分表改定のまとめで確認できます。
動画で学ぶ|収益認識の講義
この記事の講義(簿記2級 #22・9:59)
9:59【簿記2級】収益認識の5ステップと契約資産・契約負債|請求できるかで決まる収益認識基準で何が変わったか / 収益認識の5つのステップ / 一時点で充足か、一定の期間にわたり充足か / 出荷基準・着荷基準・検収基準▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
契約資産と売掛金の違いは何ですか?
代金を無条件に請求できるかどうかです。期日を待つだけなら売掛金、ほかの約束を果たすまで請求できないなら契約資産です。入金されたかどうかでは区別しません。
契約負債と前受金は同じものですか?
顧客との契約で、商品やサービスを渡す前に受け取った代金という点で、同じ役割の科目です。答案では、問題文で指定された科目を使います。
収益認識の5ステップは全部覚える必要がありますか?
順番と中身は押さえておき、計算はステップ4(配分)と5(収益の計上)を確実にするのが効率的です。ステップ1〜3は、問題文の取引を読んで約束の数と金額を確かめる作業です。
出荷基準・着荷基準・検収基準は、どれを使えばいいですか?
問題文で指示された基準を使います。出荷基準なら商品を出荷した日、着荷基準なら顧客に届いた日、検収基準なら顧客が検収した日に収益を計上します。
本人と代理人の区分(代理人取引)は2級で出ますか?
出題区分表では1級の論点です(2026年度・2027年度とも)。2級では、契約資産・契約負債、複数の履行義務、変動対価(返金負債)を優先して押さえてください。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
「日商簿記」は日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定試験の名称です。本サイトは同会議所が認定・公認する教材ではありません。
内容の誤りにお気づきの際は お問い合わせフォーム からお知らせください。運営者情報・監修体制 もあわせてご覧ください。

