シュラッター図は、製造間接費の配賦差異を「予算差異」と「操業度差異」に分けるための図です。実際操業度の縦線の上に予定配賦額・予算許容額・実際発生額の3つを並べ、隣どうしを引けば2つの差異が出ます。予算差異=予算許容額−実際発生額、操業度差異=固定費率×(実際操業度−基準操業度)で、マイナスなら不利差異です。
この記事では図の描き方と、図を描かずに解ける3行の計算表を、固定予算のケースまで含めて確認します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記2級 #47・8:44)
8:44【簿記2級】シュラッター図の書き方|予算差異と操業度差異を3行で出す変動費と固定費、公式法変動予算 / 予算許容額を計算する▶ YouTubeで見るシュラッター図とは?配賦差異を2つに分ける図
製造間接費は、あらかじめ決めた予定配賦率で製品に配賦します。予定配賦率は年間の製造間接費予算額を年間の基準操業度で割って求め、配賦額はその率に実際の操業度を掛けて計算します。率は予定、量は実際です。
予定配賦率 = 年間の製造間接費予算額 ÷ 年間の基準操業度
予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際操業度
製造間接費配賦差異 = 予定配賦額 - 実際発生額
配賦差異には、性質の違う2つの原因が混ざっています。1つは、実際の操業度に見合った予算より多く(少なく)使ったこと。もう1つは、操業度が基準に届かず、固定費を製品に配りきれなかった(基準を超えて多く配った)ことです。前者が予算差異、後者が操業度差異で、シュラッター図はこの2つを分けて見るための図です。
ここからは次の設例で説明します。数字はすべて編集部が作成したものです。
| 項目 | 設例の資料(公式法変動予算) |
|---|---|
| 年間の製造間接費予算 | 12,000,000円(変動費4,800,000円、固定費7,200,000円) |
| 年間の基準操業度 | 12,000時間(月間1,000時間) |
| 当月の実際操業度 | 950時間 |
| 当月の実際発生額 | 985,000円 |
予定配賦率は12,000,000÷12,000時間=1,000円です。当月の予定配賦額は1,000円×950時間=950,000円です。配賦差異は950,000−985,000=−35,000円で、不利差異になります。
製造間接費の予定配賦(1,000円×950時間・単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 950,000 | 製造間接費 | 950,000 |
シュラッター図の書き方|先に数字、次に線と点
いきなり図を描き始めると、どの線に何の傾きを使うのかで手が止まります。先に4つの数字を出してから描くと、図は数字を置くだけの作業になります。
書く前に出す4つの数字
| 数字 | 求め方 | 設例 |
|---|---|---|
| 変動費率 | 年間の変動費予算÷年間の基準操業度 | 4,800,000÷12,000=400円 |
| 固定費率 | 年間の固定費予算÷年間の基準操業度 | 7,200,000÷12,000=600円 |
| 予算許容額 | 変動費率×実際操業度+月間の固定費予算額 | 400×950+600,000=980,000円 |
| 予定配賦額 | 予定配賦率×実際操業度 | 1,000×950=950,000円 |
予算許容額とは、実際の操業度で見たときに「使ってよかった」製造間接費の予算額です。変動費は操業度に比例して増減するので率×実際操業度で計算し、固定費は操業度に関係なく一定なので予算額をそのまま足します。月間の固定費予算額は7,200,000÷12=600,000円です。
描く手順は5つ
- 横軸に操業度、縦軸に金額をとり、実際操業度(950時間)と基準操業度(1,000時間)の位置に縦線を引きます。
- 予算線を引きます。縦軸の固定費予算額(600,000円)の高さから、変動費率(400円)の傾きで右上がりに引く線です。
- 配賦線を引きます。原点から予定配賦率(1,000円)の傾きで引く線で、基準操業度の縦線の上で予算線と交わります(高さは月間予算1,000,000円)。
- 実際操業度の縦線の上に3つの点を打ちます。配賦線との交点(予定配賦額950,000円)、予算線との交点(予算許容額980,000円)、実際発生額985,000円の点です。
- 点と点の間に差異の名前を書きます。予定配賦額と予算許容額の間が操業度差異、予算許容額と実際発生額の間が予算差異です。
テキストによっては、下に変動費、上に固定費を長方形と対角線で描く形もあります。見た目は違っても、実際操業度の縦線の上で3つの点を読むことは同じです。
操業度差異が固定費だけで決まる理由
予定配賦額と予算許容額は、どちらも変動費の部分を「変動費率×実際操業度」で含んでいます。2つを引くと変動費の部分は消え、固定費の部分だけが残ります。操業度差異=固定費率×実際操業度−固定費予算額=固定費率×(実際操業度−基準操業度)です。操業度が基準に届かなかった分だけ、固定費を製品に配りきれなかったという意味です。
3行の計算表で予算差異・操業度差異を出す
図が描けたら、試験の下書きでは次の3行の表に置き換えると速く解けます。行の順番は、仕掛品へ送った額、予算、実際の順で固定します。
| 行 | 金額(円) | 隣の行との差(円) |
|---|---|---|
| 1行目:予定配賦額 | 950,000 | 1行目−2行目=−30,000(操業度差異) |
| 2行目:予算許容額 | 980,000 | 2行目−3行目=−5,000(予算差異) |
| 3行目:実際発生額 | 985,000 | 1行目−3行目=−35,000(配賦差異の合計) |
操業度差異は600円×(950−1,000)=−30,000円と直接計算しても一致します。2つの差異の合計−5,000+(−30,000)=−35,000円が配賦差異の合計と一致すれば、計算は合っています。
予算差異 = 予算許容額 - 実際発生額
操業度差異 = 固定費率 ×(実際操業度 - 基準操業度)
有利・不利は「上の行−下の行」の符号で決める
3行の表では、上の行が予定側、下の行が実際側になるように並べています。だから上の行から下の行を引いて、プラスなら有利差異、マイナスなら不利差異です。材料消費価格差異や賃率差異の「予定−実際」と同じ向きです。
| 差異 | マイナス(不利)の意味 | プラス(有利)の意味 |
|---|---|---|
| 予算差異 | 実際の操業度で許される予算より多く使った | 予算より少なく済んだ |
| 操業度差異 | 操業度が基準に届かず、固定費を配りきれなかった | 操業度が基準を超え、固定費を予定より多く配った |
図の上での点の上下で判定しようとすると、描き方によって位置関係が入れ替わるため迷います。判定は、位置ではなく引き算の符号で行ってください。
実際操業度が基準操業度を上回るとき
同じ予算で、翌月の実際操業度が1,080時間、実際発生額が1,050,000円だったとします。操業度が基準を超えると、操業度差異は有利差異になります。
| 行 | 計算(円) | 隣の行との差(円) |
|---|---|---|
| 1行目:予定配賦額 | 1,000×1,080=1,080,000 | 1行目−2行目=+48,000(操業度差異・有利) |
| 2行目:予算許容額 | 400×1,080+600,000=1,032,000 | 2行目−3行目=−18,000(予算差異・不利) |
| 3行目:実際発生額 | 1,050,000 | 1行目−3行目=+30,000(配賦差異の合計・有利) |
操業度差異は600円×(1,080−1,000)=+48,000円です。配賦差異の合計は有利でも、内訳を見ると予算は18,000円使いすぎています。差異を2つに分ける意味は、こうした中身の違いを見えるようにすることにあります。
差異の仕訳と会計年度末の処理
950時間の月に戻ります。製造間接費勘定には、借方に実際発生額985,000円、貸方に予定配賦額950,000円が入り、差額35,000円が残ります。月末にこれを差異勘定へ振り替えます。
月末:配賦差異の振替(不利差異35,000円・単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 製造間接費配賦差異 | 35,000 | 製造間接費 | 35,000 |
問題文で予算差異・操業度差異の勘定に分けて振り替えるよう指示されたときは、次の形になります。
月末:予算差異と操業度差異に分けて振り替える場合(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 予算差異 | 5,000 | 製造間接費 | 35,000 |
| 操業度差異 | 30,000 | ||
差異勘定の残高は年度末まで繰り越し、会計年度末に原則として売上原価へ振り替えます。借方残高(不利差異)なら「売上原価/製造間接費配賦差異」、貸方残高(有利差異)なら逆向きです。差異が原価の流れのどこに出るかは、勘定連絡図の書き方で全体を確認できます。
固定予算だと何が変わる?
固定予算は、操業度がどれだけ変わっても予算額を変えない方法です。予算許容額はいつも月間の予算額そのものになり、図の予算線は水平な線になります。
同じ設例を固定予算(月間予算1,000,000円、基準操業度1,000時間、予定配賦率1,000円)で分けると、次のようになります。
| 項目 | 公式法変動予算 | 固定予算 |
|---|---|---|
| 予算許容額 | 400×950+600,000=980,000 | 1,000,000(一定) |
| 予算差異 | 980,000−985,000=−5,000(不利) | 1,000,000−985,000=+15,000(有利) |
| 操業度差異 | 600×(950−1,000)=−30,000(不利) | 1,000×(950−1,000)=−50,000(不利) |
| 配賦差異の合計 | −35,000 | −35,000 |
合計は同じでも、内訳が大きく変わります。固定予算は操業度が下がっても予算を減らさないので、予算差異が有利に出やすく、その分だけ操業度差異が大きくなります。固定予算の操業度差異に掛けるのは、固定費率ではなく予定配賦率です。
標準原価計算の3分法へ|縦線が1本増える
標準原価計算の製造間接費差異も、同じ図で分析します。違いは、実際の生産量に対して本来かかるべき作業時間(標準操業度)の縦線が1本増えることです。このとき配賦差異は、予算差異・能率差異・操業度差異の3つに分かれます(3分法)。
設例に「標準操業度920時間」を足すと、次の4行になります。標準原価計算では予定配賦率を標準配賦率と呼びます。
| 行 | 金額(円) | 隣の行との差(円) |
|---|---|---|
| 標準配賦率×標準操業度 | 1,000×920=920,000 | −30,000(能率差異) |
| 標準配賦率×実際操業度 | 1,000×950=950,000 | −30,000(操業度差異) |
| 予算許容額 | 400×950+600,000=980,000 | −5,000(予算差異) |
| 実際発生額 | 985,000 | 合計−65,000 |
能率差異は1,000×(920−950)=−30,000円で、作業に時間がかかりすぎた分です。3つの合計−65,000円は、標準配賦額920,000円−実際発生額985,000円と一致します。能率差異を変動費だけで計算するよう指示される問題もあり、その場合は区切り方が変わります。詳しくは標準原価計算の差異分析で扱います。
よくある間違い|固定費に率を掛けてしまう理由
- 予算許容額の固定費を「固定費率×実際操業度」で計算する:予定配賦額と同じ「率×実際操業度」の形で覚えてしまうのが原因です。固定費は操業度で変わらないので、予算額をそのまま足します。
- 公式法変動予算の操業度差異に予定配賦率を掛ける:固定予算の式と混同しているためです。公式法変動予算では、変動費の部分が打ち消し合うので固定費率だけを掛けます。
- 年間の数字と月間の数字を混ぜる:予算は年間、実績は月間で与えられる問題があるためです。固定費予算額と基準操業度は12で割り、月間にそろえてから計算します。
- 予定配賦額に基準操業度を掛ける:「予定」という言葉を量にもかけてしまうためです。予定なのは率だけで、掛ける量は実際操業度です。
- 有利・不利を図の点の上下で決める:描き方で上下が入れ替わるのに、位置で覚えているためです。3行の表で上の行−下の行を計算し、符号で判定します。
変動費と固定費の分け方は、直接原価計算やCVP分析でも使う考え方です。先の論点まで見通したい人は直接原価計算とCVP分析の記事も参考にしてください。
練習問題|基準を上回る月と固定予算
練習問題1
公式法変動予算を採用している。年間の製造間接費予算は変動費3,600,000円・固定費6,000,000円、年間の基準操業度は4,800時間(月間400時間)。当月の実際操業度は420時間、実際発生額は838,000円だった。予算差異・操業度差異・配賦差異の合計を求め、有利・不利を判定し、月末に配賦差異を振り替える仕訳を答えなさい。
練習問題1の解答と解説を見る
変動費率は3,600,000÷4,800=750円、固定費率は6,000,000÷4,800=1,250円、予定配賦率は2,000円です。月間の固定費予算額は6,000,000÷12=500,000円です。予定配賦額は2,000×420=840,000円、予算許容額は750×420+500,000=815,000円です。
予算差異は815,000−838,000=−23,000円で不利差異です。操業度差異は1,250×(420−400)=+25,000円で有利差異です。合計は840,000−838,000=+2,000円の有利差異で、−23,000+25,000と一致します。有利差異なので、製造間接費勘定では貸方の予定配賦額が2,000円多く、差異は貸方に出ます。
練習問題1の配賦差異の振替(有利差異・単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 製造間接費 | 2,000 | 製造間接費配賦差異 | 2,000 |
練習問題2
固定予算を採用している。月間の製造間接費予算は720,000円、月間の基準操業度は600時間。当月の実際操業度は570時間、実際発生額は701,000円だった。予算差異と操業度差異を求め、有利・不利を判定しなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
予定配賦率は720,000÷600=1,200円、予定配賦額は1,200×570=684,000円です。固定予算なので予算許容額は720,000円のままです。予算差異は720,000−701,000=+19,000円で有利差異です。操業度差異は1,200×(570−600)=−36,000円で不利差異です。合計は684,000−701,000=−17,000円の不利差異で、+19,000−36,000と一致します。固定予算では操業度差異に予定配賦率を掛ける点に注意してください。
練習問題3
公式法変動予算で、実際操業度が基準操業度を下回った月がある。この月の操業度差異が有利差異になることはあるか。理由とともに答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
有利差異にはなりません。操業度差異は固定費率×(実際操業度−基準操業度)で、固定費率はプラス、かっこの中は実際が基準を下回るのでマイナスです。したがって操業度差異は必ずマイナスの不利差異になります。一方、予算差異は実際にいくら使ったかで決まるので、同じ月でも有利・不利のどちらにもなり得ます。
まとめ
- シュラッター図は、製造間接費の配賦差異を予算差異と操業度差異に分ける図
- 書く前に変動費率・固定費率・予算許容額・予定配賦額の4つを出す。予算許容額の固定費は予算額のまま
- 予定配賦額・予算許容額・実際発生額を3行に並べ、上の行−下の行で差異を出す。プラスは有利、マイナスは不利
- 操業度差異は、公式法変動予算なら固定費率、固定予算なら予定配賦率×(実際操業度−基準操業度)
- 標準原価計算では標準操業度の線が加わり、能率差異を含む3分法になる
次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から、製造間接費の予定配賦と部門別計算の講義を続けて見ると理解がつながります。部門ごとに予定配賦率を使う場合も、差異の分け方は同じです。続きは部門別原価計算の解き方で扱います。材料や賃金の差異と符号の向きをそろえたい人は、材料消費価格差異と賃率差異の求め方もあわせて確認してください。
動画で学ぶ|シュラッター図と製造間接費差異の講義
この記事の講義(簿記2級 #47・8:44)
8:44【簿記2級】シュラッター図の書き方|予算差異と操業度差異を3行で出す変動費と固定費、公式法変動予算 / 予算許容額を計算する / 3つの金額を縦に並べる / 操業度差異は固定費の回収不足▶ YouTubeで見るあわせて見たい動画
よくある質問
予算差異と操業度差異は、どちらが固定費の話ですか?
操業度差異です。操業度が基準操業度からずれたために、固定費を配りきれなかった(多く配った)金額を表します。公式法変動予算では、固定費率×(実際操業度−基準操業度)で求めます。予算差異は、変動費と固定費の両方を含む使いすぎ・節約の金額です。
予算許容額とは何ですか?
実際の操業度に見合った製造間接費の予算額です。公式法変動予算では、変動費率×実際操業度+固定費予算額で求めます。固定予算では、操業度に関係なく予算額そのものです。
シュラッター図を描かずに解くことはできますか?
できます。予定配賦額・予算許容額・実際発生額を上から3行に並べ、隣どうしを引けば予算差異と操業度差異が出ます。ただし図の意味がわかっていると、固定予算や標準原価計算の3分法に進んだときに応用が利きます。
基準操業度とは何ですか?
予定配賦率を決めるときの分母になる、あらかじめ見込んだ操業度(作業時間など)です。年間の基準操業度が与えられたときは、月間の計算では12で割ってそろえます。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。
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