出張旅費を概算で渡したときや、内容のわからない入金があったとき、どの科目で記帳するか迷っていませんか。仮払金・仮受金は、内容や金額がまだ確定していないお金を一時的に置いておく科目です。確定したら、正しい科目へ振り替えて残高をゼロに戻します。この記事では、出張旅費の精算(余り・不足)と入金の内容判明を検算つきで仕訳します。同じ単元で出てくる受取商品券と差入保証金(敷金)も、まとめて整理します。
この記事の内容を動画で解説しています(簿記3級 #21・9:26)
9:26【簿記3級 #21】仮払金・仮受金・受取商品券・差入保証金の仕訳金額や内容が未確定なら 仮払金・仮受金で一旦受ける / 確定したら正しい科目へ振り替える▶ YouTubeで見る仮払金・仮受金とは?「未確定」のお金の一時的な置き場
仮払金は、お金を支払ったものの、何に使うのか(内容)やいくらになるのか(金額)がまだ確定していないときに使う資産の科目です。仮受金は、お金を受け取ったものの、何のお金なのかがまだわからないときに使う負債の科目です。
| 比べる点 | 仮払金 | 仮受金 |
|---|---|---|
| 分類 | 資産 | 負債 |
| 使う場面 | 支払ったが、内容または金額が未確定 | 受け取ったが、内容が不明 |
| 典型的な例 | 出張旅費の概算払い | 出張中の従業員からの内容不明の送金 |
| 確定したら | 旅費交通費など正しい科目へ振り替える | 売掛金・前受金など正しい科目へ振り替える |
どちらも「とりあえずの置き場」です。決算書に長く残しておく科目ではないので、内容がわかった時点で必ず振り替えます。
判定表|仮払金・仮受金か、ほかの科目か
「仮」を使うかどうかは、内容と金額が確定しているかで決まります。同じ単元で出てくる科目と並べると、次のようになります。
| 場面 | 内容と金額は確定しているか | 使う科目 |
|---|---|---|
| 出張前に旅費の概算額を渡した | 未確定(いくら使うかわからない) | 仮払金 |
| 内容のわからない入金があった | 未確定(何のお金かわからない) | 仮受金 |
| 従業員が負担すべき費用を立て替えた | 確定 | 従業員立替金 |
| 商品の注文で手付金を支払った | 確定 | 前払金 |
| 自治体が発行した商品券で代金を受け取った | 確定 | 受取商品券 |
| 店舗を借りるときに敷金を支払った | 確定(退去時に返ってくる) | 差入保証金 |
立替金・預り金との違いは立替金と預り金の違い、前払金・前受金との違いは前払金と前払費用の違いで詳しく扱っています。
仮払金の仕訳|出張旅費の概算払いと精算(余り・不足)
出張前に旅費の概算額を渡す時点では、実際にいくら使うかわかりません。そこで仮払金で記帳し、出張から戻って精算したときに旅費交通費へ振り替えます。数字はすべて編集部が作成したものです。
例1:従業員の出張にあたり、旅費の概算額50,000円を現金で渡した(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仮払金 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
精算の結果は、お金が余るか足りないかの2通りです。
例2(余った場合):従業員が戻り、旅費交通費43,000円の報告を受け、残額7,000円を現金で受け取った(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 43,000 | 仮払金 | 50,000 |
| 現金 | 7,000 | ||
例3(不足した場合):旅費交通費は56,000円で、不足額6,000円を現金で従業員に支払った(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 56,000 | 仮払金 | 50,000 |
| 現金 | 6,000 | ||
| 精算の結果 | 仮払金 | 旅費交通費 | 差額の処理 |
|---|---|---|---|
| 余った(43,000円使用) | 50,000円を全額減らす | 43,000円 | 残額7,000円を受け取る |
| 不足した(56,000円使用) | 50,000円を全額減らす | 56,000円 | 不足額6,000円を支払う |
どちらの場合も、仮払金は渡した50,000円を全額減らし、旅費交通費は実際に使った金額で計上します。差額は現金の受取り・支払いです。例2は43,000+7,000=50,000円、例3は50,000+6,000=56,000円で貸借が一致します。不足額をその場で払わず後日支払う場合は、現金の代わりに未払金を使います。
ICカードへのチャージも仮払金を使う場面の1つ
交通系ICカードに入金(チャージ)した時点では、何にいくら使うかがまだ決まっていません。問題文に「チャージ時に仮払金で処理している」とあれば、チャージ時は仮払金、使ったときに旅費交通費などへ振り替えます。
例4:ICカードに現金10,000円をチャージした(チャージ時に仮払金で処理している)(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仮払金 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
例5:例4のICカードで電車代3,200円を支払った(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 3,200 | 仮払金 | 3,200 |
チャージ時の処理方法は問題文で指示されるので、その指示に従います。例5のあと、仮払金は10,000−3,200=6,800円が残ります。
仮受金の仕訳|内容不明の入金と、判明したときの振替
内容のわからない入金は、とりあえず仮受金で受け入れます。内容がわかったら仮受金を全額減らし、判明した内容ごとの科目に振り替えます。
例6:出張中の従業員から普通預金に120,000円の振込みがあったが、内容は不明である(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 120,000 | 仮受金 | 120,000 |
例7:従業員が戻り、例6の120,000円は、得意先の売掛金の回収90,000円と、商品の注文の手付金30,000円だとわかった(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仮受金 | 120,000 | 売掛金 | 90,000 |
| 前受金 | 30,000 | ||
貸方は90,000+30,000=120,000円で、仮受金の全額と一致します。手付金は商品を渡すまで売上にならないので前受金です。1つの入金に2つの内容が混ざっていても、内容ごとに科目を分ければ解けます。
受取商品券の仕訳|他店や自治体の商品券で受け取ったとき
自治体や百貨店などが発行した商品券で代金を受け取ったときは、受取商品券(資産)で処理します。後日、発行元に買い取ってもらう(精算する)と、代金が入金されます。発行元に精算して初めてお金として入ってくるものなので、現金とは分けて記帳します。
例8:商品45,000円を販売し、代金のうち30,000円は自治体が発行した商品券で、残りは現金で受け取った(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 受取商品券 | 30,000 | 売上 | 45,000 |
| 現金 | 15,000 | ||
例9:例8の商品券30,000円を発行元に精算し、代金が普通預金に入金された(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 30,000 | 受取商品券 | 30,000 |
売上は商品の代金45,000円の総額です。借方は30,000+15,000=45,000円で一致します。商品券の額面が代金より大きく、おつりを現金で渡した場合は、受取商品券を額面で計上します。おつりは現金の減少です(練習問題3で確認します)。
差入保証金の仕訳|敷金の差入れと退去時の精算
店舗や事務所を借りるときに支払う敷金は、退去時に返ってくるお金なので、費用ではなく差入保証金(資産)で処理します。同時に支払う家賃は支払家賃、不動産会社への仲介手数料は支払手数料です。1回の支払いに3つの科目が混ざるので、1つずつ分けて考えます。
例10:店舗を借りる契約を結び、1か月分の家賃150,000円、敷金300,000円、仲介手数料150,000円を普通預金から支払った(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 支払家賃 | 150,000 | 普通預金 | 600,000 |
| 差入保証金 | 300,000 | ||
| 支払手数料 | 150,000 | ||
例11:店舗を退去し、例10の敷金300,000円から原状回復のための修繕費80,000円が差し引かれ、残額が普通預金に返金された(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 220,000 | 差入保証金 | 300,000 |
| 修繕費 | 80,000 | ||
例10は150,000+300,000+150,000=600,000円です。例11では差入保証金を全額減らし、戻ってきた220,000円との差額80,000円を修繕費にします。敷金から差し引かれても、会社が負担した費用であることに変わりはありません。
2027年度の改定でリースの会計処理が変わるのは、2級の論点です。3級では、不動産の賃借は支払家賃・支払地代で処理する賃貸借処理のままとされています。改定の全体像は2027年度の出題区分表改定のまとめで確認できます。
よくある間違い|「仮」の付く別の科目と、現金との区別
- 仮払消費税・仮払法人税等を仮払金とまとめる:名前に「仮払」が付くのが原因です。仮払消費税は仕入れなどの際に支払った消費税、仮払法人税等は法人税等の中間納付分を表す別の科目です。仕訳は税金の仕訳で扱っています。
- 精算時に、使った金額だけ仮払金を減らす:「使った分が消える」と考えるのが原因です。仮払金は渡した全額を減らし、差額を現金などで調整します。
- 内容不明の入金を売上にする:「入金=売上」と考えるのが原因です。内容がわかるまでは仮受金で、判明したら売掛金・前受金などに振り替えます。
- 他店や自治体の商品券を現金にする:お金と同じように使えると感じるのが原因です。受取商品券として現金と分けます。簿記上の現金に含まれるものは現金過不足の仕訳の記事で確認できます。
- 敷金を支払家賃や支払手数料にまとめる:1回の支払いを1つの科目で書こうとするのが原因です。返ってくるお金は差入保証金に分けます。
練習問題4問|精算・振替・商品券・敷金
練習問題1
従業員の出張にあたり、旅費の概算額40,000円を現金で渡していた。本日、従業員が戻り、旅費交通費46,500円の報告を受けた。不足額は後日支払うことにした。精算時の仕訳を答えなさい。
練習問題1の解答と解説を見る
練習問題1の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 46,500 | 仮払金 | 40,000 |
| 未払金 | 6,500 | ||
仮払金は渡した40,000円を全額減らします。不足額46,500−40,000=6,500円は後日支払うので未払金です。貸方は40,000+6,500=46,500円で一致します。
練習問題2
先日、普通預金に入金された内容不明の85,000円を仮受金で処理していた。本日、このうち60,000円は得意先の売掛金の回収、残りは取引先に貸していた貸付金の返済であることがわかった。仕訳を答えなさい。
練習問題2の解答と解説を見る
練習問題2の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仮受金 | 85,000 | 売掛金 | 60,000 |
| 貸付金 | 25,000 | ||
貸付金の返済額は85,000−60,000=25,000円です。仮受金を全額減らし、内容ごとに売掛金と貸付金を減らします。
練習問題3
商品8,000円を販売し、代金として自治体が発行した商品券10,000円を受け取り、おつり2,000円を現金で渡した。仕訳を答えなさい。
練習問題3の解答と解説を見る
練習問題3の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 受取商品券 | 10,000 | 売上 | 8,000 |
| 現金 | 2,000 | ||
受取商品券は額面の10,000円で計上し、売上は商品の代金8,000円です。差額2,000円は現金で渡したので現金の減少です。貸方は8,000+2,000=10,000円です。
練習問題4
事務所を退去し、差し入れていた敷金240,000円のうち、原状回復費用95,000円を差し引いた残額が普通預金に振り込まれた。仕訳を答えなさい。
練習問題4の解答と解説を見る
練習問題4の仕訳(単位:円)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 145,000 | 差入保証金 | 240,000 |
| 修繕費 | 95,000 | ||
返金額は240,000−95,000=145,000円です。差入保証金を全額減らし、差し引かれた95,000円を修繕費にします。借方は145,000+95,000=240,000円です。
まとめ
- 仮払金・仮受金は、内容や金額が未確定のお金の一時的な置き場。確定したら正しい科目へ振り替える
- 出張の精算は、仮払金を全額減らし、実際の旅費交通費との差額を現金(後日払いなら未払金)で調整する
- 内容不明の入金は仮受金。判明したら売掛金・前受金など内容ごとの科目に振り替える
- 他店や自治体の商品券は受取商品券。現金とは分けて記帳し、精算して入金されたら減らす
- 敷金は返ってくるお金なので差入保証金。退去時に差し引かれた原状回復費は修繕費
次の一歩として、簿記3級の無料講義 全50本の一覧で、仮払金・仮受金の講義と立替金・預り金の講義を続けて見ておくと、「仮」と「立替・預り」の区別がまとめて固まります。似た科目をもう一度確認したいときは、この記事の判定表に戻ってきてください。
動画で学ぶ|仮払金・仮受金・受取商品券・差入保証金の講義
この記事の講義(簿記3級 #21・9:26)
9:26【簿記3級 #21】仮払金・仮受金・受取商品券・差入保証金の仕訳金額や内容が未確定なら 仮払金・仮受金で一旦受ける / 確定したら正しい科目へ振り替える / 商品券で受け取ったら 受取商品券(資産) / 敷金・保証金は 差入保証金(資産)▶ YouTubeで見るよくある質問
仮払金と仮受金の違いは何ですか?
仮払金は、支払ったが内容や金額が未確定のときに使う資産の科目です。仮受金は、受け取ったが内容が不明のときに使う負債の科目です。どちらも、内容が確定したら正しい科目へ振り替えます。
仮払金と立替金はどう違いますか?
内容と金額が確定しているかどうかで分かれます。仮払金は出張旅費の概算払いのように未確定の支払いで、確定したら費用などに振り替えます。立替金は、相手が払うべき確定した金額を代わりに払ったもので、あとで返してもらいます。
出張旅費の精算では、仮払金をいくら減らしますか?
渡した概算額の全額を減らします。旅費交通費は実際に使った金額で計上し、余りは現金の受取り、不足は現金の支払い(後日払いなら未払金)で調整します。
受取商品券は現金として扱えますか?
扱いません。他店や自治体が発行した商品券は、発行元に精算して初めてお金になるので、受取商品券(資産)として現金と分けて記帳します。
敷金は費用になりますか?
差し入れた時点では費用ではなく、差入保証金(資産)です。退去時に原状回復費用などが差し引かれたときは、その金額を修繕費などの費用にし、差入保証金は全額を減らします。
執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士
情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)
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