立替金と預り金の違い|給料の仕訳と源泉所得税・社会保険料

立替金と預り金の違い、給料・源泉所得税・社会保険料の仕訳と書かれた「簿記3級」の記事のアイキャッチ画像(動画解説つき)

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給料の仕訳で、差し引いた源泉所得税や社会保険料をどの科目にするか迷っていませんか。立替金と預り金の違いは、お金が「あとで戻ってくる」か「あとで渡す」かです。従業員の代わりに払ったお金は立替金(資産)、給料から差し引いて預かったお金は預り金(負債)になります。この記事では、立替えから給料の支払い、納付までを1か月の流れで仕訳し、社会保険料の会社負担分が法定福利費になる理由も整理します。

目次

立替金と預り金の違いは?お金が戻ってくるか、渡すか

立替金は、本来は相手が払うべきお金を、会社が一時的に代わりに払ったときの科目です。あとで返してもらう権利なので資産です。預り金は、相手のお金を会社が一時的に預かったときの科目です。あとで本人や国・自治体などに渡す義務なので負債です。

比べる点立替金預り金
分類資産負債
生まれる場面相手が払うべきお金を、会社が代わりに払った相手のお金を、会社が一時的に預かった
消える場面相手から返してもらった(給料から差し引いて回収することも多い)本人や国・自治体などに渡した(納付した)
給料まわりの例従業員の個人負担分の立替え、給料の前貸し源泉所得税、住民税、社会保険料の従業員負担分

給料まわりでは、立替金も預り金も「給料から差し引く」形で登場するため、混同しやすくなります。差し引く理由が「立て替えた分を返してもらう」なら立替金、「本人の代わりに納めるために預かる」なら預り金です。

判定表|似た5つの科目を質問で区別する

立替金・預り金は、仮払金・仮受金・貸付金とも混同しやすい科目です。次の3つの質問に順に答えると、どの科目かが決まります。

科目質問1 お金の向き質問2 内容と金額は確定しているか質問3 返済期日や利息を決めて貸したか
立替金払った確定している決めていない(一時的な立替え)
貸付金払った確定している決めた
仮払金払った未確定―
預り金受け取った・差し引いた確定している―
仮受金受け取った未確定―

従業員への立替えは「従業員立替金」、従業員への貸付けは「従業員貸付金」を使うのが基本です。内容や金額が決まっていない仮払金・仮受金は、仮払金・仮受金の仕訳で扱っています。

1か月の流れで仕訳する①|給料日前の立替えと前貸し

ここからは、ある会社の1か月の給料まわりの取引を順に仕訳します。

想定ケース(解説のための設定です。実在の人物ではありません)

ある会社の6月の取引です。6月5日に従業員の個人負担の保険料を立て替え、15日に給料の一部を前貸しし、25日に給料を支払いました。源泉所得税と社会保険料の金額は問題文で与えられる前提の数字で、実際の税額・保険料額の計算とは関係ありません。

例1:6月5日 従業員が個人で負担すべき保険料12,000円を、会社が現金で立て替えて支払った(単位:円)

借方貸方
従業員立替金12,000現金12,000

例2:6月15日 従業員に給料の前貸しとして30,000円を現金で渡した(単位:円)

借方貸方
従業員立替金30,000現金30,000

どちらも、会社が先にお金を出し、あとで従業員から返してもらう取引なので従業員立替金(資産)です。ここまでで従業員立替金は12,000+30,000=42,000円になりました。この42,000円は、給料日に給料から差し引いて回収します。

なお、返済期日や利息を決めてお金を貸した場合は、立替金ではなく従業員貸付金(資産)です。利息を受け取ったときは受取利息で処理します。「一時的に代わりに払った」のか「お金を貸した」のかで区別します。

1か月の流れで仕訳する②|給料は総額で計上し、差引額を科目に分ける

給料日の仕訳は、給与明細の項目を1つずつ科目に置き換えると組み立てやすくなります。

明細の項目金額(円)仕訳での扱い
給料の総額(額面)600,000借方:給料(費用)
源泉所得税18,000貸方:所得税預り金(負債の増加)
社会保険料(従業員負担分)84,000貸方:社会保険料預り金(負債の増加)
立替え・前貸し分の回収42,000貸方:従業員立替金(資産の減少)
差引支給額(手取り)456,000貸方:普通預金

差引支給額 = 給料の総額 − 源泉所得税 − 社会保険料(従業員負担分) − 立替金の回収額

例3:6月25日 給料総額600,000円から、源泉所得税18,000円、社会保険料の従業員負担分84,000円、従業員立替金42,000円を差し引き、残額を普通預金から振り込んだ(単位:円)

借方貸方
給料600,000所得税預り金18,000
社会保険料預り金84,000
従業員立替金42,000
普通預金456,000

借方の給料は、差し引く前の総額600,000円です。手取りの456,000円ではありません。会社が支払う給料は600,000円で、その一部を会社が預かったり、立替えの回収にあてたりしている、と考えます。貸方は18,000+84,000+42,000+456,000=600,000円で、借方と一致します。

ポイント

給料日の仕訳では、立替金の回収も預り金の発生も貸方に並びます。向きは同じでも、立替金は「会社が先に出したお金が戻る」、預り金は「従業員のお金を会社が預かる」という別の意味です。

3級の問題では、源泉所得税や社会保険料の金額は問題文で与えられます。使う科目も、問題文の勘定科目に「所得税預り金」「社会保険料預り金」があればそれを、「預り金」しかなければ預り金を使います。住民税を差し引く場合も、同じく預り金(住民税預り金)です。

預り金を納付したとき|社会保険料だけ法定福利費が出てくるのはなぜ?

預かったお金は、後日、会社がまとめて納付します。源泉所得税は従業員の税金を預かっていただけなので、納付すれば預り金が減るだけです。

例4:翌月、例3の源泉所得税18,000円を普通預金から納付した(単位:円)

借方貸方
所得税預り金18,000普通預金18,000

社会保険料は事情が違います。従業員が負担する分に加えて、会社が負担する分もあわせて納付するからです。従業員負担分は給料から預かったお金なので預り金を減らし、会社負担分は会社自身の費用として法定福利費で処理します。

例5:翌月、社会保険料168,000円(従業員負担分84,000円、会社負担分84,000円)を普通預金から納付した(単位:円)

借方貸方
社会保険料預り金84,000普通預金168,000
法定福利費84,000

会社負担分の金額は、問題文で与えられます(この設例では従業員負担分と同額としています)。預り金は「預かった分だけ」しか減らせません。納付額168,000円のうち、預かっていた84,000円を超える部分が会社の費用です。

納付するもの誰が負担するお金か借方の科目
源泉所得税従業員(会社は預かっているだけ)所得税預り金
社会保険料の従業員負担分従業員(給料から預かった分)社会保険料預り金
社会保険料の会社負担分会社法定福利費(費用)

源泉所得税は、法人税や固定資産税のような会社自身の税金とは別物です。会社の費用にはなりません。会社が負担する税金の仕訳は税金の仕訳(租税公課・法人税等・消費税)で整理しています。会計ソフトで給与を記帳する場面でも、総額と預り金に分ける考え方は同じです。簿記の知識が入力のどこで効くかは会計ソフトに簿記の知識は必要かを整理した記事を参考にしてください。

よくある間違い|手取り額で給料を書いてしまう理由

  1. 給料を手取り額で計上する:口座から出ていく金額に目が行くのが原因です。給料は差し引く前の総額で計上し、差し引いた分は預り金・立替金に分けます。
  2. 源泉所得税の納付を会社の税金の科目にする:「税金を払った=会社の費用」と考えるのが原因です。源泉所得税は従業員の税金を預かって納めるものなので、所得税預り金を減らします。
  3. 社会保険料の納付額を1つの科目で処理する:全額を預り金にすると、預かった額より多く減らすことになります。全額を法定福利費にすると、預り金が残ったままになります。従業員負担分と会社負担分に分けます。
  4. 立替えの回収を預り金にする:給料日にどちらも貸方に出てくるので、同じものに見えるのが原因です。会社が先に払っていた分の回収なら従業員立替金の減少です。

どの間違いも、「そのお金は誰のものか」を確かめると防げます。給料日の仕訳を書いたら、借方の給料が総額になっているか、貸方の合計が総額と一致するかを最後に検算しましょう。

練習問題|給料と納付の仕訳を解く

練習問題1

次の場面で使う勘定科目を答えなさい。
ア 従業員が個人で負担すべき携帯電話料金を、会社が現金で立て替えた。
イ 給料の支払時に、従業員の住民税を差し引いた。
ウ 従業員に、返済期日と利息を定めて50,000円を貸し付けた。
エ 社会保険料を納付した(会社負担分の借方科目)。
オ 給料から差し引いていた源泉所得税を納付した(借方科目)。

練習問題1の解答と解説を見る

ア 従業員立替金、イ 住民税預り金(問題文の科目が預り金なら預り金)、ウ 従業員貸付金、エ 法定福利費、オ 所得税預り金です。

アとウはどちらも会社がお金を出していますが、返済期日や利息を決めて貸したウは貸付金です。オは会社の税金ではないので、費用の科目は使いません。

練習問題2

給料総額380,000円から次の金額を差し引き、残額を普通預金から支払った。仕訳を答えなさい。
・源泉所得税 11,000円
・社会保険料の従業員負担分 49,000円
・先月立て替えていた従業員の個人負担の保険料 6,000円

練習問題2の解答と解説を見る

練習問題2の仕訳(単位:円)

借方貸方
給料380,000所得税預り金11,000
社会保険料預り金49,000
従業員立替金6,000
普通預金314,000

手取りは380,000−11,000−49,000−6,000=314,000円です。貸方は11,000+49,000+6,000+314,000=380,000円で、借方の給料総額と一致します。

練習問題3

社会保険料98,000円を普通預金から納付した。このうち従業員負担分は、給料の支払時に預かっていた49,000円である。残りは会社負担分である。仕訳を答えなさい。

練習問題3の解答と解説を見る

練習問題3の仕訳(単位:円)

借方貸方
社会保険料預り金49,000普通預金98,000
法定福利費49,000

会社負担分は98,000−49,000=49,000円です。預り金は預かっていた49,000円だけを減らし、残りを法定福利費にします。借方は49,000+49,000=98,000円です。

まとめ

  • 立替金は「あとで戻ってくる」資産、預り金は「あとで渡す」負債
  • 給料は差し引く前の総額で計上する。源泉所得税・社会保険料は預り金、立替えの回収は従業員立替金の減少
  • 源泉所得税の納付は所得税預り金を減らすだけで、会社の費用にはならない
  • 社会保険料の納付は、従業員負担分が社会保険料預り金、会社負担分が法定福利費
  • 税額や保険料の金額は問題文で与えられる。貸方合計が給料総額と一致するかで検算する

次の一歩として、簿記3級の無料講義 全50本の一覧で、立替金・預り金の講義と仮払金・仮受金の講義を続けて見ておくと、似た科目の区別がまとめて固まります。第1問の形式で仕訳の練習を重ねたい人は、簿記3級の仕訳問題20問も活用してください。

動画で学ぶ|立替金・預り金と給料の支払いの講義

よくある質問

立替金と預り金の違いは何ですか?

立替金は、相手が払うべきお金を会社が代わりに払ったときの資産で、あとで返してもらいます。預り金は、相手のお金を会社が一時的に預かったときの負債で、あとで本人や国などに渡します。

給料の仕訳は総額と手取りのどちらで書きますか?

総額で書きます。借方の給料は差し引く前の金額です。源泉所得税や社会保険料は預り金、立替えの回収は従業員立替金として貸方に分けます。残りの手取りが、普通預金などから支払う金額です。

源泉所得税を納付したときの借方は何ですか?

所得税預り金です(問題文の科目が預り金なら預り金)。源泉所得税は従業員の税金を会社が預かって納めるものなので、会社の費用にはなりません。

社会保険料の会社負担分は、なぜ法定福利費になるのですか?

会社自身が負担するお金で、従業員から預かったものではないからです。従業員負担分は給料から預かった分なので社会保険料預り金を減らし、会社負担分は費用の法定福利費で処理します。

源泉所得税の税率や社会保険料率を覚える必要はありますか?

3級の問題では税額や保険料の金額が問題文で与えられるので、率を覚えて計算する必要はありません。実務で計算や判断が必要なときは、最新の公的な情報を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士

情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)

記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。

税金に関する記述は簿記の試験学習のための一般的な説明です。実際の税務上の取扱いは個別の事情により異なるため、税務署または税理士にご確認ください。

「日商簿記」は日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定試験の名称です。本サイトは同会議所が認定・公認する教材ではありません。

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この記事を書いた人

ぼきの森学校の編集部です。日商簿記(初級・3級・2級)と原価計算初級の講義動画・解説記事・仕訳トレーニングを制作しています。記事は公認会計士・税理士が監修し、日本商工会議所の出題区分表や公表資料などの一次情報を確認したうえで公開しています。内容の誤りはお問い合わせフォームからお知らせください。

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