電子記録債権・債務の仕訳|3級は発生と決済、譲渡は2級

電子記録債権・債務の仕訳、3級は発生と決済、譲渡は2級と書かれた「簿記3級」の記事のアイキャッチ画像(動画解説つき)

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電子記録債権の仕訳で、発生記録のときに売上を書くのか、債権者と債務者でどの科目を使うのかと迷っていませんか。電子記録債権は、売掛金が電子の記録に形を変えたものです。

3級で問われるのは、発生記録で売掛金・買掛金を電子記録債権・電子記録債務に振り替え、支払期日の決済で消すところまでです。譲渡と割引は、出題区分表では2級の論点です。この記事では両側の仕訳を並べた表と手形との違い、2027年度の改定を確認し、最後に2級の予習として譲渡の仕訳も紹介します。

目次

電子記録債権とは?売掛金が電子の記録に形を変えたもの

電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿に発生記録をすることで生じる金銭債権です。代表的なものに「でんさい」があります。簿記では、売掛金などが形を変えたものとして、資産の勘定「電子記録債権」で処理します。

支払う側から見ると、同じ記録が支払いの義務になります。こちらは負債の勘定「電子記録債務」です。

発生記録から決済までの流れ

  1. 商品を掛けで売買する(売り手に売掛金、買い手に買掛金が生じる)
  2. 取引銀行を通じて、記録機関に発生記録を請求する
  3. 記録原簿に記録され、売掛金・買掛金が電子記録債権・電子記録債務に置き換わる
  4. 支払期日に買い手の口座から売り手の口座へ払い込まれ、債権・債務が消える

発生記録は、買い手(債務者)が請求する方法と、売り手(債権者)が買い手の承諾を得て請求する方法があります。どちらが請求しても、両社の仕訳は同じです。請求した側が債権者になるわけではない点に注意してください。

勘定科目分類使う会社使う場面
電子記録債権資産代金を受け取る側(債権者)発生記録・決済(3級)
電子記録債務負債代金を支払う側(債務者)発生記録・決済(3級)
電子記録債権売却損費用割り引いた側割引(2級)

出題区分表では、電子記録債権・電子記録債務の発生と決済が3級、譲渡と割引が2級の範囲です。この割り当ては、2026年度版と2027年度版の区分表で変わりません。

ポイント

発生記録は、売上や仕入の取引ではありません。売掛金・買掛金が別の形に変わるだけです。

実務では、紙の手形に代わる支払手段として使われています。2027年度の改定項目説明書でも、電子記録債務の支払いに当座預金口座を金融機関から求められることがある、と触れられています。

発生と決済の仕訳|債権者側と債務者側を並べて覚える

設例(数字は編集部が作成)

当社は、得意先C社に商品330,000円を掛けで販売した。

(1) 5月25日、C社の請求により、この売掛金について電子記録債権の発生記録が行われた。

(2) 7月31日(支払期日)、C社の当座預金口座から当社の当座預金口座へ330,000円が払い込まれた。

場面当社(債権者・売り手)C社(債務者・買い手)
掛けの売買売掛金 330,000/売上 330,000仕入 330,000/買掛金 330,000
(1) 発生記録電子記録債権 330,000/売掛金 330,000買掛金 330,000/電子記録債務 330,000
(2) 決済当座預金 330,000/電子記録債権 330,000電子記録債務 330,000/当座預金 330,000

表を縦に読むと、当社側は売掛金→電子記録債権→当座預金と、債権が形を変えながら預金になります。C社側は買掛金→電子記録債務→支払いと、同じ流れを反対側から見ています。

(1) 当社:発生記録(単位:円)

借方貸方
電子記録債権330,000売掛金330,000

(1) C社:発生記録(単位:円)

借方貸方
買掛金330,000電子記録債務330,000

(2) 当社:支払期日の決済(単位:円)

借方貸方
当座預金330,000電子記録債権330,000

(2) C社:支払期日の決済(単位:円)

借方貸方
電子記録債務330,000当座預金330,000

決済の口座は当座預金とは限りません。問題文に普通預金とあれば、普通預金を使います。講義#15でも、発生記録で売掛金を振り替え、支払期日に当座預金で決済する流れを扱っています。文字で読んだあと動画で流れを見ると、両側の仕訳が整理しやすくなります。

販売と同時に発生記録をするケース

掛けを経由せず、販売と同時に発生記録をすることもあります。この場合は売掛金がまだないので、売上の相手科目が直接、電子記録債権になります。

例:商品180,000円を販売し、代金について電子記録債権の発生記録を行った(単位:円)

借方貸方
電子記録債権180,000売上180,000

売上を書くのは、商品を販売したときの1回だけです。先に掛けで売っていたなら売上は計上済みなので、発生記録では売掛金を振り替えます。

よくある間違い4つと、その理由

  1. 発生記録の貸方に売上を書く:「債権が発生した=売上が立った」と連想するためです。売上は掛けで販売したときに計上済みで、発生記録は売掛金の形を変えるだけです。
  2. 債権者と債務者の科目を逆にする:「発生記録を請求した側が債権者」と思い込むためです。代金を受け取る側が電子記録債権、支払う側が電子記録債務で、請求したのがどちらかは関係ありません。
  3. 決済のときに売掛金を減らす:発生記録の時点で、売掛金がすでに電子記録債権に置き換わっていることを忘れるためです。決済で減らすのは電子記録債権です。
  4. 貸倒引当金の設定対象から外す:売掛金とは別の科目なので、対象外だと考えてしまうためです。決算で貸倒引当金を設定するときは、問題文の指示に従って電子記録債権の残高も含めます。

貸倒引当金の設定は貸倒引当金の仕訳で、売掛金と似た科目の区別は売掛金と未収入金・買掛金と未払金の違いで整理しています。

手形とどう違う?2027年度の改定で3級はこう変わる

比べる点約束手形電子記録債権
記録の形紙の証券記録機関の電子記録
受け取る側の勘定受取手形(資産)電子記録債権(資産)
支払う側の勘定支払手形(負債)電子記録債務(負債)
一部の金額だけの譲渡(譲渡は2級)できないできる
2027年度からの3級出題区分表から削除範囲に残り、売掛金・買掛金と同じ範疇に整理

2027年度(2027年4月以降)の試験から適用される出題区分表は、紙の手形・小切手の廃止(政府方針)などを理由に改定されました。3級では「手形」と「債権の譲渡」の項目が削除され、電子記録債権・電子記録債務は売掛金や買掛金と同じ範疇に整理されます。

「債権の譲渡」の項目にあったクレジット売掛金は、「売掛金および買掛金ならびに電子記録債権等」の項目へ移ります。電子記録債権の譲渡・割引は、改定の前後とも2級の範囲です。

一方、2026年度(2027年3月まで)の試験は現行の出題区分表で行われます。第174回(2026年11月15日)・第175回(2027年2月28日)の統一試験を受ける人は、手形の仕訳も範囲です。手形と電子記録債権は勘定科目が違うだけで仕訳の形がそろっているので、並べて覚えると効率的です。

取引手形の場合電子記録債権の場合
売掛金の回収(受け取る側)受取手形/売掛金電子記録債権/売掛金
買掛金の支払い(支払う側)買掛金/支払手形買掛金/電子記録債務
期日の入金(受け取る側)当座預金/受取手形当座預金/電子記録債権
期日の支払い(支払う側)支払手形/当座預金電子記録債務/当座預金

2級では、2027年度から手形関係の勘定科目がすべて削除され、売掛債権の譲渡(ファクタリング)が加わります。改定の全体像は2027年度の出題区分表改定のまとめで、原文は日本商工会議所の出題区分表のページで確認できます。

練習問題|債権者と債務者の仕訳を書き分ける

練習問題1

仕入先E社に対する買掛金86,000円について、E社から電子記録債権の発生記録の請求があり、当社はこれを承諾した。当社の仕訳を答えなさい。

練習問題1の解答と解説を見る

練習問題1の仕訳(単位:円)

借方貸方
買掛金86,000電子記録債務86,000

請求したのが債権者のE社でも、当社は代金を支払う側なので電子記録債務です。買掛金が電子記録債務に置き換わります。

練習問題2

得意先F社に商品240,000円を販売し、代金のうち90,000円は現金で受け取り、残額については電子記録債権の発生記録を行った。仕訳を答えなさい。

練習問題2の解答と解説を見る

練習問題2の仕訳(単位:円)

借方貸方
現金90,000売上240,000
電子記録債権150,000

販売と同時の発生記録なので、売上の相手科目が直接、電子記録債権になります。残額は240,000−90,000=150,000円です。借方90,000+150,000=240,000円が、貸方240,000円と一致します。

練習問題3

G社は、H社に対する売掛金175,000円について、H社の承諾を得て電子記録債権の発生記録を請求した。支払期日に、H社の当座預金口座からG社の普通預金口座へ175,000円が払い込まれた。G社とH社それぞれの、発生記録時と決済時の仕訳を答えなさい。

練習問題3の解答と解説を見る

G社:発生記録時(単位:円)

借方貸方
電子記録債権175,000売掛金175,000

G社:決済時(単位:円)

借方貸方
普通預金175,000電子記録債権175,000

H社:発生記録時(単位:円)

借方貸方
買掛金175,000電子記録債務175,000

H社:決済時(単位:円)

借方貸方
電子記録債務175,000当座預金175,000

G社は代金を受け取る側なので電子記録債権、H社は支払う側なので電子記録債務です。決済の口座は会社ごとに違うので、問題文の口座名をそのまま使います。

2級の予習(参考)|譲渡と割引の仕訳

ここからは2級の範囲です。出題区分表では、電子記録債権の譲渡・割引は2026年度版・2027年度版とも2級の論点です。講義#15でも譲渡に触れていますが、3級で優先するのは発生と決済なので、3級を受ける人は参考として読んでください。

電子記録債権は、支払期日を待たずにほかの会社へ譲り渡すことができます(譲渡記録)。一部の金額だけを分けて譲渡できるのも、紙の手形にはない特徴です。

参考設例(2級)

当社は、得意先から受け取った電子記録債権250,000円を保有している。仕入先D社への買掛金120,000円を支払うため、このうち120,000円をD社に譲渡記録した。

参考(2級)当社:買掛金の支払いに充てる譲渡(単位:円)

借方貸方
買掛金120,000電子記録債権120,000

参考(2級)D社:譲渡を受けた側(単位:円)

借方貸方
電子記録債権120,000売掛金120,000

当社の電子記録債権は250,000−120,000=130,000円が残り、支払期日に預金へ入金されます。D社は、売掛金が電子記録債権に置き換わります。

割引と電子記録債権売却損

電子記録債権を金融機関などに譲渡して、支払期日より前にお金に換えることを割引といいます。受け取る金額は額面より少なくなり、差額は電子記録債権売却損(費用)で処理します。2027年度適用の2級の勘定科目表にも、電子記録債権売却損が挙がっています。

参考(2級):電子記録債権200,000円を取引銀行で割り引き、割引料3,000円を差し引かれた残額が当座預金に入金された(単位:円)

借方貸方
当座預金197,000電子記録債権200,000
電子記録債権売却損3,000

譲渡・割引とファクタリングは、2級の手形・電子記録債権の割引と裏書の仕訳で詳しく解説しています。3級の段階では、発生と決済の仕訳を確実にしてから進めば十分です。

まとめ

  • 電子記録債権は売掛金などが電子の記録に形を変えた資産、電子記録債務は買掛金などが形を変えた負債
  • 発生記録は売掛金・買掛金の振替で、売上・仕入は動かない(販売と同時なら売上の相手が電子記録債権)
  • 支払期日の決済で、受け取る側は預金の増加、支払う側は預金の減少
  • 譲渡と割引(電子記録債権売却損)は、出題区分表では2026年度・2027年度とも2級の論点。3級では発生と決済を優先する
  • 2027年度から3級の手形は削除。電子記録債権・債務は売掛金・買掛金と同じ範疇に整理される

次の一歩として、簿記3級の無料講義 全50本の一覧から講義#15を見て、発生から決済までの流れを動画で確認しておきましょう。決済に使う預金の論点は当座借越の仕訳でまとめています。2級へ進む人は、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から割引やファクタリングを扱う講義に進めます。

動画で学ぶ|電子記録債権・電子記録債務の講義

よくある質問

電子記録債権と売掛金の違いは何ですか?

どちらも代金を受け取る権利ですが、電子記録債権は記録機関の記録原簿に記録された債権です。支払期日に口座間で決済され、一部の金額だけを分けて譲渡することもできます(譲渡は2級で学びます)。簿記では、発生記録をしたときに売掛金から電子記録債権へ振り替えます。

発生記録の請求は、債権者と債務者のどちらがしますか?

どちらからでも請求できます。債権者が請求する場合は、債務者の承諾が必要です。どちらが請求しても、受け取る側は電子記録債権、支払う側は電子記録債務で、仕訳は変わりません。

2027年度以降も、3級で電子記録債権は出題されますか?

3級の範囲に残ります。電子記録債権・電子記録債務は、2027年度適用の出題区分表では売掛金・買掛金と同じ範疇に整理されます。削除されるのは「手形」と「債権の譲渡」の項目で、電子記録債権の譲渡・割引は改定の前後とも2級の範囲です。

電子記録債権の譲渡は3級の範囲ですか?

3級の範囲ではありません。出題区分表では、電子記録債権の譲渡・割引は2026年度版・2027年度版とも2級の論点で、割引で生じる電子記録債権売却損も2級で学びます。3級では、発生記録と決済の仕訳を優先しましょう。

執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士

情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)

記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。

「日商簿記」は日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定試験の名称です。本サイトは同会議所が認定・公認する教材ではありません。

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この記事を書いた人

ぼきの森学校の編集部です。日商簿記(初級・3級・2級)と原価計算初級の講義動画・解説記事・仕訳トレーニングを制作しています。記事は公認会計士・税理士が監修し、日本商工会議所の出題区分表や公表資料などの一次情報を確認したうえで公開しています。内容の誤りはお問い合わせフォームからお知らせください。

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