総合原価計算のボックス図|平均法と先入先出法の解き方

総合原価計算のボックス図、平均法と先入先出法を同じ設例で比較と書かれた「簿記2級」の記事のアイキャッチ画像(動画解説つき)

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総合原価計算のボックス図を、どこから埋めればいいのか迷っていませんか。手順は、①数量を入れる、②加工費だけ進捗度を掛けて換算量にする、③月末仕掛品を先に計算し、完成品は差引きで出す、の3段です。平均法と先入先出法の違いは、月末仕掛品の単価に月初の原価を混ぜるかどうかだけです。この記事では同じ設例を両方の方法で解き、材料の追加投入まで検算つきで確認します。

目次

総合原価計算とは?個別原価計算との違い

総合原価計算とは、同じ製品を大量に作る工場で、1か月分の製造原価をまとめて集計し、完成品と月末仕掛品に配分する方法です。月末には作りかけの製品(仕掛品)が残るので、当月の原価を「できあがった分」と「作りかけの分」に分ける作業が中心になります。

比べる点個別原価計算総合原価計算
生産の形受注生産(注文ごとに仕様が違う)見込生産(同じ製品をくり返し作る)
原価を集める単位製造指図書(注文)ごと原価計算期間(通常1か月)ごと
計算の中心製造間接費の配賦完成品と月末仕掛品への配分
問題文の目印「指図書No.101」など「月初仕掛品」「加工進捗度」など
向いている製品の例船・注文住宅・特注の機械食品・化学製品・日用品

総合原価計算では、原価を直接材料費と加工費の2つに分けて計算します。加工費とは、直接労務費や製造間接費など、材料を加工するためにかかる原価のことです。材料は工程の始点でまとめて投入されることが多いのに対し、加工費は作業が進むにつれて少しずつ発生します。発生のしかたが違うので、配分に使う数量も別々に作ります。

ポイント

総合原価計算でやることは「配分」だけです。直接材料費は個数で、加工費は完成品換算量で、完成品と月末仕掛品に分けます。

工業簿記全体の中での位置づけは簿記2級の工業簿記とはで、材料から製品までの原価の流れは勘定連絡図の書き方で整理しています。

完成品換算量とボックス図の描き方

完成品換算量とは、作りかけの製品を「完成品なら何個分の加工が済んだか」に読み替えた数量です。月末仕掛品500個の加工進捗度が60%なら、加工費の計算では500個×60%=300個分として扱います。

原価月末仕掛品の数え方理由
直接材料費(始点で投入)個数のまま(500個)始点で全部入っているので、作りかけでも1個分の材料を持っている
加工費個数×進捗度(300個)加工は作業の進み具合に応じて発生する

▶ 動画で確認する(3:25〜 完成品換算量で作りかけを読み替える)

ボックス図は5つの手順で埋める

  1. 箱を直接材料費用と加工費用の2つ描き、左上に月初仕掛品、左下に当月投入、右上に完成品、右下に月末仕掛品を置く
  2. 直接材料費の箱に個数を入れる
  3. 加工費の箱に換算量を入れる(月初と月末は個数×進捗度、完成品は個数のまま)
  4. 加工費の当月投入を差引きで出す(完成品+月末−月初)
  5. 左側に金額を入れ、月末仕掛品を先に計算し、完成品は差引きで出す

ここからは1つの設例を最後まで解きます。数字はすべて編集部が作成したものです。

設例

当工場は製品Aを見込生産している。次の資料から、月末仕掛品原価と完成品総合原価を求めなさい。材料はすべて工程の始点で投入している。

月初仕掛品:200個(加工進捗度50%)直接材料費72,000円・加工費73,000円
当月投入:1,300個 直接材料費390,000円・加工費720,000円
完成品:1,000個
月末仕掛品:500個(加工進捗度60%)

手順2・3で数量の箱を作ると、次のようになります。左右の合計が一致していれば、数量の読み取りは合っています。

直接材料費の箱(左)個数直接材料費の箱(右)個数
月初仕掛品200個完成品1,000個
当月投入1,300個月末仕掛品500個
合計1,500個合計1,500個
加工費の箱(左)換算量加工費の箱(右)換算量
月初仕掛品100個(200個×50%)完成品1,000個
当月投入1,200個(差引き)月末仕掛品300個(500個×60%)
合計1,300個合計1,300個

加工費の当月投入1,200個は、問題文のどこにも書かれていません。完成品1,000個+月末300個−月初100個で、差し引いて求めます。手が止まりやすいのはこの1か所です。

▶ 動画で確認する(6:16〜 仕掛品ボックス図は数量から始める)

平均法と先入先出法を同じ設例で解く

数量の箱ができたら、金額を入れて月末仕掛品原価を計算します。2つの方法で違うのは、月末仕掛品に掛ける単価の作り方だけです。

平均法|月初と当月を混ぜて1つの単価にする

平均法は、月初仕掛品原価と当月製造費用を合計し、完成品と月末仕掛品の数量の合計で割って平均単価を出す方法です。

平均法の単価 =(月初仕掛品原価+当月製造費用)÷(完成品+月末仕掛品)

平均法直接材料費加工費
月初+当月72,000+390,000=462,000円73,000+720,000=793,000円
分母1,000+500=1,500個1,000+300=1,300個
単価308円610円
月末仕掛品500個×308円=154,000円300個×610円=183,000円
完成品462,000−154,000=308,000円793,000−183,000=610,000円

月末仕掛品原価は154,000+183,000=337,000円です。完成品総合原価は、総額1,255,000円(月初145,000円+当月1,110,000円)から差し引いて918,000円です。完成品単位原価は918円になります。

▶ 動画で確認する(2:01〜 平均法 ── 混ぜて平均単価を出す)

先入先出法|月末仕掛品は当月投入分だけで評価する

先入先出法は、月初仕掛品から先に完成させたと考える方法です。月末に残っているのは当月に投入した分なので、単価は当月製造費用だけで作ります。月初仕掛品原価は単価の計算に入れず、全額を完成品に回します。

先入先出法直接材料費加工費
当月製造費用390,000円720,000円
分母(当月投入)1,300個1,200個
単価300円600円
月末仕掛品500個×300円=150,000円300個×600円=180,000円
完成品462,000−150,000=312,000円793,000−180,000=613,000円

月末仕掛品原価は330,000円、完成品総合原価は1,255,000−330,000=925,000円(単位原価925円)です。内訳でも検算できます。当月の作業で完成品に入った分は、直接材料費が800個(1,000−200)×300円=240,000円です。加工費は900個(1,000−100)×600円=540,000円です。これに月初分145,000円を足すと925,000円で一致します。

2級で使う先入先出法は、正確には修正先入先出法です。月初仕掛品が完成した分と、当月に着手して完成した分を分けずに、完成品の単位原価を1つにまとめて出します。2つを分けて計算する純粋先入先出法は、日本商工会議所の出題区分表では1級の範囲です。

▶ 動画で確認する(3:41〜 先入先出法 ── 月末は当月投入分だけ)

2つを並べる|差が出るのは月初の単価が違うから

項目平均法先入先出法
直接材料費の単価308円300円
加工費の単価610円600円
月末仕掛品原価337,000円330,000円
完成品総合原価918,000円925,000円
月初仕掛品原価の行き先完成品と月末に分かれる全額が完成品へ

月初仕掛品の単価は、直接材料費が72,000÷200個=360円、加工費が73,000÷100個=730円です。当月の300円・600円より高いので、平均法では高い月初の原価が月末仕掛品にも混ざります。その結果、月末が7,000円大きく、完成品が7,000円小さくなりました。月初の単価が当月より低ければ、差の向きは逆になります。

先に古いものから払い出す考え方は、3級の商品有高帳の先入先出法と同じです。月初仕掛品がない月は、どちらの方法でも答えは同じになります。完成品原価は製品勘定へ振り替えます。

完成品の振替(先入先出法の場合/単位:円)

借方貸方
製品925,000仕掛品925,000

材料の追加投入はどう扱う?投入点で判定する

材料は始点で投入されるとは限りません。工程の途中や終点で別の材料を加える問題では、月末仕掛品がその投入点を通過したかどうかで配分のしかたが決まります。

投入のしかた月末仕掛品(進捗度60%)の数え方配分の基準
始点で投入個数のまま数量の比
途中の50%の点で投入通過済み→個数のまま数量の比
途中の80%の点で投入未通過→0個全額を完成品へ
終点で投入未通過→0個全額を完成品へ
工程を通じて平均的に投入個数×進捗度加工費と同じ換算量

数字で確かめます。月初仕掛品なし、当月投入1,000個、完成品800個、月末仕掛品200個(進捗度60%)の工程で、4種類の材料を使ったとします。

材料(当月消費額)分母月末仕掛品完成品
A 始点(300,000円)800+200=1,000個200個×300円=60,000円240,000円
B 50%の点(90,000円)800+200=1,000個200個×90円=18,000円72,000円
C 終点(64,000円)800個0円64,000円
D 平均的(46,000円)800+120=920個120個×50円=6,000円40,000円

材料Cは終点で入れるので、月末仕掛品にはまだ入っていません。当月に消費したのは完成品800個の分だけなので、64,000円は全額が完成品原価です。材料Bの投入点が50%ではなく70%なら、月末仕掛品(60%)は未通過になり、材料Cと同じ扱いに変わります。

▶ 動画で確認する(4:08〜 材料の投入時点で扱いが変わる)

よくある間違いと、なぜ間違えるのか

  1. 始点投入の直接材料費にも進捗度を掛ける:「作りかけなら材料も途中まで」と感じるのが原因です。材料が始点で全部入っていれば、月末仕掛品も1個分の材料を持っています。進捗度を掛けるのは加工費だけです。
  2. 平均法の加工費の分母を個数で作る:直接材料費と同じ感覚で「完成品+月末の個数」を使ってしまいます。加工費の分母は換算量の合計(設例では1,300個)です。
  3. 先入先出法で月初仕掛品原価を単価に混ぜる:平均法の手順と混同するのが原因です。先入先出法の単価は当月製造費用÷当月投入量で、月初の金額は分子にも分母にも入りません。
  4. 先入先出法の加工費の分母から月初の換算量を引き忘れる:月初仕掛品は前月に加工が一部済んでいます。当月投入は「完成品+月末−月初」なので、月初の換算量(設例では100個)を必ず引きます。
  5. 完成品原価を「単価×完成品数量」で出す:先入先出法では月初仕掛品原価が抜け落ちます。完成品は「総額−月末仕掛品原価」の差引きで求めます。

仕損や減損が出てくる問題は、分母の作り方がもう一段変わります。基本の型が固まったら仕損と減損の違いと度外視法に進んでください。

練習問題で確認する

練習問題1

月初仕掛品300個(加工進捗度40%)、完成品1,600個、月末仕掛品400個(加工進捗度75%)。材料は始点で投入している。(1) 先入先出法で、直接材料費と加工費の当月投入量はそれぞれ何個分か。(2) 平均法で加工費の単価を計算するときの分母は何個分か。

練習問題1の解答と解説を見る

(1) 直接材料費は1,600+400−300=1,700個、加工費は1,600+300−120=1,780個です。月初の換算量は300個×40%=120個、月末は400個×75%=300個です。(2) 平均法の加工費の分母は、完成品1,600個+月末の換算量300個=1,900個です。月初の換算量は引きません。

練習問題2

月初仕掛品100個(加工進捗度40%)直接材料費26,000円・加工費17,000円。当月投入1,000個 直接材料費250,000円・加工費432,000円。完成品900個、月末仕掛品200個(加工進捗度50%)。材料は始点で投入している。先入先出法で、月末仕掛品原価と完成品総合原価を求めなさい。

練習問題2の解答と解説を見る

月末仕掛品原価は95,000円、完成品総合原価は630,000円です。直接材料費の単価は250,000÷1,000個=250円。加工費の当月投入は900+100−40=960個なので、単価は432,000÷960個=450円です。

月末は200個×250円+100個×450円=50,000+45,000=95,000円。総額は26,000+17,000+250,000+432,000=725,000円です。完成品は725,000−95,000=630,000円で、単位原価は700円です。

練習問題3

月初仕掛品なし、当月投入1,000個、完成品800個、月末仕掛品200個(加工進捗度30%)。工程の50%の点で投入する材料Xの当月消費額は72,000円だった。材料Xのうち、月末仕掛品に配分される金額はいくらか。

練習問題3の解答と解説を見る

0円です。月末仕掛品の進捗度は30%で、50%の投入点をまだ通過していないため、材料Xは入っていません。72,000円は全額が完成品800個の原価になり、1個あたり90円です。進捗度の数字を投入点と比べるだけで判定できます。

まとめ

  • 総合原価計算は見込生産向けで、1か月の原価を完成品と月末仕掛品に配分する
  • ボックス図は数量→換算量→金額の順に埋める。加工費の当月投入は差引きで出す
  • 進捗度を掛けるのは加工費だけ。始点投入の直接材料費は個数のまま
  • 平均法は月初と当月を混ぜた単価、先入先出法は当月分だけの単価で月末を評価する
  • 追加材料は「月末仕掛品が投入点を通過したか」で判定し、完成品は必ず差引きで求める

次の一歩として、簿記2級の無料講義 全66本の一覧から総合原価計算の前後編を続けて見ると、ボックス図を描く手の動きが身につきます。月末仕掛品を標準原価で評価する形は標準原価計算の差異分析で扱っています。工業簿記を学ぶ時期の目安は簿記2級の独学スケジュールを参考にしてください。

動画で学ぶ|総合原価計算の講義

よくある質問

総合原価計算と個別原価計算の違いは何ですか?

原価を集める単位が違います。総合原価計算は同じ製品を大量に作る見込生産向けで、1か月の原価を完成品と月末仕掛品に配分します。個別原価計算は注文ごとに仕様が違う受注生産向けで、製造指図書ごとに原価を集めます。

平均法と先入先出法はどちらで解けばいいですか?

問題文で指定された方法で解きます。同じ資料でも方法によって月末仕掛品原価と完成品原価が変わるので、資料を読む前に方法の指示に印をつけておくと安心です。

完成品換算量とは何ですか?

仕掛品の加工の進み具合を、完成品の個数に読み替えた数量です。個数×加工進捗度で求め、加工費の配分に使います。直接材料費を始点で投入している場合は、換算せず個数のまま使います。

月初仕掛品がないとき、平均法と先入先出法で答えは変わりますか?

変わりません。2つの方法の違いは月初仕掛品原価を単価に混ぜるかどうかだけなので、月初仕掛品がなければ計算は同じになります。月初の資料がない問題は、方法の指定にかかわらず同じ手順で解けます。

執筆:ぼきの森学校 編集部 監修:公認会計士・税理士

情報確認日:2026年9月24日(試験要項・合格率は 日本商工会議所の公式サイト、改定内容は 出題区分表のページ でご確認ください)

記事中の設例・金額・想定ケースは解説のために作成したもので、実在の会社・人物・取引とは関係ありません。

「日商簿記」は日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定試験の名称です。本サイトは同会議所が認定・公認する教材ではありません。

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この記事を書いた人

ぼきの森学校の編集部です。日商簿記(初級・3級・2級)と原価計算初級の講義動画・解説記事・仕訳トレーニングを制作しています。記事は公認会計士・税理士が監修し、日本商工会議所の出題区分表や公表資料などの一次情報を確認したうえで公開しています。内容の誤りはお問い合わせフォームからお知らせください。

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